54.伝言
夢主名前設定
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「恵さん……」
片付ける手がはたと止まり、手からつると湯呑が滑り落ちて割れた。
てきぱき動いていた夢主が青ざめた顔で呆然と散らばる破片を見ている。
「大丈夫!?夢主ちゃん?」
「ごっ、ごめんなさい、大切なお店の……」
「何言ぅてんの、怪我無かった?割れたもんはまた買ぅたらええの、形あるもんはいつか壊れるんやから。夢主ちゃんに怪我がなければ一番よ」
「すみません、ありがとうございます」
「それにしても急にどないしたん、さっきまで元気やったのに……薫ちゃん怒ってたんが怖かったん」
「違いますっ、急に思い出したことがあって……ごめんなさい、仕事中に考え事だなんて」
「えぇけど……そんな心配なことなん?大丈夫?無理せんと休んでえぇからな」
「ありがとうございます……大丈夫です!」
案じてくれる妙に夢主は健気な笑顔を向けた。
夢主は不意に気付いてしまった。
動揺を悟られないよう、割れた湯呑を集めて一人店の奥へ引っ込む。誰かが怪我をしないよう他の塵と別けなければ。
かちゃんと鳴る陶器の屑音。
「そっ……か、そうだよ……もうすぐ恵さんに会えるんだ」
待ち遠しい再会。恵に会えたら医者と見込んで頼みたいことがある。
だが再会の過程で死を迎える者達がいることを忘れていた。
江戸城御庭番衆の皆、蒼紫を慕い行動を共にする彼ら。
「恵さんに会えるってことは、みんなが……」
死んでしまう。
般若、式尉、火男、癋見。彼らを良く知る気でいたが、考えてみれば実際に出会い、話した記憶はない。
ただ一度、江戸城火災の際に江戸城へ向かう彼らの影を見ただけだ。蒼紫に抱えられて町の上を飛ぶように進んだあの時に。
今はまだ皆が揃って生きられる場所を確保する為、観柳のそばで働いているに過ぎない。
四人の死をきっかけに蒼紫は修羅への道を歩むのか。
「あ……」
夢主は指先に滲む血に気が付いた。
「いつの間に……」
見えぬ場で流れる血と起こる死。夢主は黙って待つしか出来なかった。
片付ける手がはたと止まり、手からつると湯呑が滑り落ちて割れた。
てきぱき動いていた夢主が青ざめた顔で呆然と散らばる破片を見ている。
「大丈夫!?夢主ちゃん?」
「ごっ、ごめんなさい、大切なお店の……」
「何言ぅてんの、怪我無かった?割れたもんはまた買ぅたらええの、形あるもんはいつか壊れるんやから。夢主ちゃんに怪我がなければ一番よ」
「すみません、ありがとうございます」
「それにしても急にどないしたん、さっきまで元気やったのに……薫ちゃん怒ってたんが怖かったん」
「違いますっ、急に思い出したことがあって……ごめんなさい、仕事中に考え事だなんて」
「えぇけど……そんな心配なことなん?大丈夫?無理せんと休んでえぇからな」
「ありがとうございます……大丈夫です!」
案じてくれる妙に夢主は健気な笑顔を向けた。
夢主は不意に気付いてしまった。
動揺を悟られないよう、割れた湯呑を集めて一人店の奥へ引っ込む。誰かが怪我をしないよう他の塵と別けなければ。
かちゃんと鳴る陶器の屑音。
「そっ……か、そうだよ……もうすぐ恵さんに会えるんだ」
待ち遠しい再会。恵に会えたら医者と見込んで頼みたいことがある。
だが再会の過程で死を迎える者達がいることを忘れていた。
江戸城御庭番衆の皆、蒼紫を慕い行動を共にする彼ら。
「恵さんに会えるってことは、みんなが……」
死んでしまう。
般若、式尉、火男、癋見。彼らを良く知る気でいたが、考えてみれば実際に出会い、話した記憶はない。
ただ一度、江戸城火災の際に江戸城へ向かう彼らの影を見ただけだ。蒼紫に抱えられて町の上を飛ぶように進んだあの時に。
今はまだ皆が揃って生きられる場所を確保する為、観柳のそばで働いているに過ぎない。
四人の死をきっかけに蒼紫は修羅への道を歩むのか。
「あ……」
夢主は指先に滲む血に気が付いた。
「いつの間に……」
見えぬ場で流れる血と起こる死。夢主は黙って待つしか出来なかった。