1.コトハジメ
夢主名前設定
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「嬉しいです!でも私、膳を片付けたら寝間へ行きますね」
「何故だ」
「だって……総司さんと募る話もあるでしょう……男同士、新選組の者同士……」
夢主の言葉に斎藤はぴくりと眉を動かした。
「お前に話したい事も山ほどあるんだがな」
「私は一さんとこれから……一緒に過ごす時間はたくさん」
夢主は気恥ずかしそうに上目で斎藤を見ながら、膳を手元に引き寄せた。
目を落とすと、綺麗に食べ終えて空になった皿が並んでいる。全て食べてもらえた嬉しさで夢主は空の皿に笑い掛けていた。
「そういう事で、では私は」
「フン、そうか。しかし淋しくないか」
「ふふっ、淋しくなんかありません」
「強がるな、床までついて行ってやる。どこだ」
膳を手に立ち上がると、斎藤も軽やかに腰を上げた。
「あのっ……」
「阿呆ぅ、人様の家で変な事が出来るかよ、安心しろ、ここでは何もしないさ」
「はい……」
赤い顔で慌てて二人の男の顔をちらちらと交互に見る夢主を、斎藤は諭しながらニヤリと眺めた。
次に会う時は覚悟しておけよ……そんな言葉を律儀に覚え、緊張する夢主を愛おしく感じ、斎藤は込み上げる笑いを噛み殺した。
苦笑いで見送る沖田の視線を受けながら部屋を出て膳を片付け、寝間へ向かった。
途中、斎藤はあちこちに目だけを向けて屋敷内を確かめているようだった。身に染み付いた習性だろうか。
夢主が布団を広げ始めると、斎藤は開きっぱなしの障子の間で腕を組み、見守った。
「もう大丈夫です、ありがとうございました一さん。では総司さんとごゆっくり……」
「あぁ」
夢主が首を傾げて伝えると、斎藤はふわりと似つかわしくない微笑みを見せた。
「ぁっ……」
「どうした」
「いえ……一さんのそんな顔、初めて見るので……」
「俺だってたまにはするさ、人の子だ」
「ふふっ」
「嬉しいんだよ」
斎藤はおもむろに夢主の手を取って自らの首に触れさせた。
「ぁ……」
明らかに速いと感じる脈、ニヤリと澄ましたいつもと変わらない顔からは想像もできない鼓動だ。
「お前を見ていると嬉しくてな」
「一さん……」
「初めてだ、お前がその目をしてくれるのは」
「えっ?」
「俺の全てを受け入れてくれる……女として、俺を男として全て認める、許して受け入れてもいい……そんな目だ」
「あのっ……そんな、自分じゃ分からないです……」
真っ直ぐ見つめられて受ける言葉に、夢主は顔を伏せて目を泳がせた。
耳まで紅潮しきった顔は、触れればきっと高まった体温を感じただろう。
「フッ、そうだろう。昔は触れる度に瞳に哀しい色が見えたもんだ。俺が嫌ではないが、それ以上触れないで欲しいと、淋しそうな瞳をしていた」
「淋しそうな……」
「あぁ」
そんな瞳を思い出したのか、斎藤が刹那に淋しげな色を瞳に浮かべた。
外で輝く夕日が、斎藤の瞳をほんのり橙色に揺らしている。
「もちろん理由は分かっていたが、無理を強いているようで俺も辛かった。触れても、触れなくても、お前は時々淋しそうに俺を見つめていた」
「私……わかりません……ごめんなさい」
強いていた……それは私……。
心で呟やいて俯く夢主の手を、斎藤は手を添えたまま自らの首から離し、夢主の頬に移した。
大きな手が夢主の手を覆い、小さな手を縁取るように夢主の頬に触れている。
「フン、自分では分からんだろう。気にするな。男にしか分からん女の目だ。だが今は……俺の全てを受け入れてくれる、許しの目だ」
嬉しいぞ……声を潜めて唇だけで告げると、斎藤はそっと近付いた。
「一さん……ぁ」
気付けば斎藤の唇が夢主の唇と重なっていた。
ここでは出来ない、そう語っていたが夢主の顔を見るうちに堪えられなくなったのか、斎藤は目を閉じてひたすらに夢主の唇を味わっていた。
「んっ……まっ……まって……」
夢主は敷いたばかりの布団に横たえられ、覆いかぶさる斎藤の影で視界を塞がれた。
これ以上深くいざなわれては力が入らなくなってしまう。
込み上げる衝動に身を委ねてしまわないよう、夢主は強く斎藤の体を押し返した。
「一っ、さんっ……」
「っ……すまん、ここではまずかったな」
ニッと笑って体を離し、じっくり夢主の困り顔を眺めてから斎藤は立ち上がった。
「何故だ」
「だって……総司さんと募る話もあるでしょう……男同士、新選組の者同士……」
夢主の言葉に斎藤はぴくりと眉を動かした。
「お前に話したい事も山ほどあるんだがな」
「私は一さんとこれから……一緒に過ごす時間はたくさん」
夢主は気恥ずかしそうに上目で斎藤を見ながら、膳を手元に引き寄せた。
目を落とすと、綺麗に食べ終えて空になった皿が並んでいる。全て食べてもらえた嬉しさで夢主は空の皿に笑い掛けていた。
「そういう事で、では私は」
「フン、そうか。しかし淋しくないか」
「ふふっ、淋しくなんかありません」
「強がるな、床までついて行ってやる。どこだ」
膳を手に立ち上がると、斎藤も軽やかに腰を上げた。
「あのっ……」
「阿呆ぅ、人様の家で変な事が出来るかよ、安心しろ、ここでは何もしないさ」
「はい……」
赤い顔で慌てて二人の男の顔をちらちらと交互に見る夢主を、斎藤は諭しながらニヤリと眺めた。
次に会う時は覚悟しておけよ……そんな言葉を律儀に覚え、緊張する夢主を愛おしく感じ、斎藤は込み上げる笑いを噛み殺した。
苦笑いで見送る沖田の視線を受けながら部屋を出て膳を片付け、寝間へ向かった。
途中、斎藤はあちこちに目だけを向けて屋敷内を確かめているようだった。身に染み付いた習性だろうか。
夢主が布団を広げ始めると、斎藤は開きっぱなしの障子の間で腕を組み、見守った。
「もう大丈夫です、ありがとうございました一さん。では総司さんとごゆっくり……」
「あぁ」
夢主が首を傾げて伝えると、斎藤はふわりと似つかわしくない微笑みを見せた。
「ぁっ……」
「どうした」
「いえ……一さんのそんな顔、初めて見るので……」
「俺だってたまにはするさ、人の子だ」
「ふふっ」
「嬉しいんだよ」
斎藤はおもむろに夢主の手を取って自らの首に触れさせた。
「ぁ……」
明らかに速いと感じる脈、ニヤリと澄ましたいつもと変わらない顔からは想像もできない鼓動だ。
「お前を見ていると嬉しくてな」
「一さん……」
「初めてだ、お前がその目をしてくれるのは」
「えっ?」
「俺の全てを受け入れてくれる……女として、俺を男として全て認める、許して受け入れてもいい……そんな目だ」
「あのっ……そんな、自分じゃ分からないです……」
真っ直ぐ見つめられて受ける言葉に、夢主は顔を伏せて目を泳がせた。
耳まで紅潮しきった顔は、触れればきっと高まった体温を感じただろう。
「フッ、そうだろう。昔は触れる度に瞳に哀しい色が見えたもんだ。俺が嫌ではないが、それ以上触れないで欲しいと、淋しそうな瞳をしていた」
「淋しそうな……」
「あぁ」
そんな瞳を思い出したのか、斎藤が刹那に淋しげな色を瞳に浮かべた。
外で輝く夕日が、斎藤の瞳をほんのり橙色に揺らしている。
「もちろん理由は分かっていたが、無理を強いているようで俺も辛かった。触れても、触れなくても、お前は時々淋しそうに俺を見つめていた」
「私……わかりません……ごめんなさい」
強いていた……それは私……。
心で呟やいて俯く夢主の手を、斎藤は手を添えたまま自らの首から離し、夢主の頬に移した。
大きな手が夢主の手を覆い、小さな手を縁取るように夢主の頬に触れている。
「フン、自分では分からんだろう。気にするな。男にしか分からん女の目だ。だが今は……俺の全てを受け入れてくれる、許しの目だ」
嬉しいぞ……声を潜めて唇だけで告げると、斎藤はそっと近付いた。
「一さん……ぁ」
気付けば斎藤の唇が夢主の唇と重なっていた。
ここでは出来ない、そう語っていたが夢主の顔を見るうちに堪えられなくなったのか、斎藤は目を閉じてひたすらに夢主の唇を味わっていた。
「んっ……まっ……まって……」
夢主は敷いたばかりの布団に横たえられ、覆いかぶさる斎藤の影で視界を塞がれた。
これ以上深くいざなわれては力が入らなくなってしまう。
込み上げる衝動に身を委ねてしまわないよう、夢主は強く斎藤の体を押し返した。
「一っ、さんっ……」
「っ……すまん、ここではまずかったな」
ニッと笑って体を離し、じっくり夢主の困り顔を眺めてから斎藤は立ち上がった。