52.訊ね石
夢主名前設定
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「さぁ、もう帰りましょう。だいたいどうして一人でこんな時間、こんな場所へ」
「ごめんなさい……」
「ははっ、そんなに落ち込まなくても。今のは斎藤さんの言葉を代弁したんですよ、行かなきゃいけないけど、きっと言いたかったでしょうから」
「はぃ……」
「僕の言葉でもありますけどね。本当にどうしてですか」
「蛍を探しに……」
「蛍、ですか。少し早い気がしますが」
「それでも探してみようかなって、でも蛍を探す途中で悲しい気持ちになっちゃって……川を眺めてたらあの人が」
刃衛に出会ったのは全くの偶然だ。
人のいない川辺に立つ者が目立っただけ。仕事とやらの前、肩慣らしに人を斬ろうと考えたのかもしれない。
だとすれば危機的な状況だったのか。
夢主は震えそうになる体を自らの手で包み込んだ。
「そうでしたか……それにしても蛍で悲しい気持ちとは少し変わっていますね、何かあったんですか」
「それが色々と……蛍は別れの季節なんです」
「別れの」
「はい。だから蛍は見たいんですけど、よくよく考えたら寂しいなって」
「成程、夢主ちゃんらしいと言いますか。その別れとは一体、まさか死別ではありませんよね」
夢主が落ち込むほどの別れ、沖田は身近な者を思い浮かべて青ざめた。
「大丈夫です。死別では……ただ、仲の良い女の子がいるんですけど、その子が大切な方とお別れを……困難を乗り越えて絆は深まるんです。だから悲しいばかりじゃないんです。でも……」
剣心と薫はやがて結ばれる。
だが、その陰で命を落とす者も数多い。
「京都で騒動が起きるんです。一さんもそこへ……私はとても行けません……」
「夢主ちゃん……そっか、何か大変なことが起きるんですね」
夢主が無言で頷くと、短い沈黙が訪れた。
何を考え込んでいるのか沖田も目を伏せて口を堅く閉ざしている。
それでも口を開けば明るい声が飛び出した。
「大丈夫、斎藤さんがいない間は僕がそばにいますよ!斎藤さんだって不死身ですから心配無用でしょう。先の戦争でもそうだったでしょ」
「総司さん……そうですよね、ありがとうございます。本当に……ありがとうございます」
斎藤の帰還を信じてくれること、そばにいてくれること。
夢主は感謝の気持ちで瞳を潤ませていた。
本当は騒乱が起きずに誰も死なずに済めばいいのかもしれない。
「誰かを救うことが……誰かを追い詰める……」
「夢主ちゃん?」
「いいえ、あの、また一さんに見つかって怒られる前に帰ります」
「あははっ、それがいいですね。さぁ提灯に火を入れますか」
「総司さんが先導してくださるなら灯りは無くても……月も明るいですし」
「では僕にお任せください」
沖田は頼もしい笑顔で夢主の前に歩み出た。
夜空から二人を照らす月を見上げれば斎藤の姿が思い浮かぶ。
また離れてしまう日々が続いても、この美しい月があれば心を強くして待っていられるはず。
「お願いします」
夢主は確かな笑顔で沖田に応えた。
「ごめんなさい……」
「ははっ、そんなに落ち込まなくても。今のは斎藤さんの言葉を代弁したんですよ、行かなきゃいけないけど、きっと言いたかったでしょうから」
「はぃ……」
「僕の言葉でもありますけどね。本当にどうしてですか」
「蛍を探しに……」
「蛍、ですか。少し早い気がしますが」
「それでも探してみようかなって、でも蛍を探す途中で悲しい気持ちになっちゃって……川を眺めてたらあの人が」
刃衛に出会ったのは全くの偶然だ。
人のいない川辺に立つ者が目立っただけ。仕事とやらの前、肩慣らしに人を斬ろうと考えたのかもしれない。
だとすれば危機的な状況だったのか。
夢主は震えそうになる体を自らの手で包み込んだ。
「そうでしたか……それにしても蛍で悲しい気持ちとは少し変わっていますね、何かあったんですか」
「それが色々と……蛍は別れの季節なんです」
「別れの」
「はい。だから蛍は見たいんですけど、よくよく考えたら寂しいなって」
「成程、夢主ちゃんらしいと言いますか。その別れとは一体、まさか死別ではありませんよね」
夢主が落ち込むほどの別れ、沖田は身近な者を思い浮かべて青ざめた。
「大丈夫です。死別では……ただ、仲の良い女の子がいるんですけど、その子が大切な方とお別れを……困難を乗り越えて絆は深まるんです。だから悲しいばかりじゃないんです。でも……」
剣心と薫はやがて結ばれる。
だが、その陰で命を落とす者も数多い。
「京都で騒動が起きるんです。一さんもそこへ……私はとても行けません……」
「夢主ちゃん……そっか、何か大変なことが起きるんですね」
夢主が無言で頷くと、短い沈黙が訪れた。
何を考え込んでいるのか沖田も目を伏せて口を堅く閉ざしている。
それでも口を開けば明るい声が飛び出した。
「大丈夫、斎藤さんがいない間は僕がそばにいますよ!斎藤さんだって不死身ですから心配無用でしょう。先の戦争でもそうだったでしょ」
「総司さん……そうですよね、ありがとうございます。本当に……ありがとうございます」
斎藤の帰還を信じてくれること、そばにいてくれること。
夢主は感謝の気持ちで瞳を潤ませていた。
本当は騒乱が起きずに誰も死なずに済めばいいのかもしれない。
「誰かを救うことが……誰かを追い詰める……」
「夢主ちゃん?」
「いいえ、あの、また一さんに見つかって怒られる前に帰ります」
「あははっ、それがいいですね。さぁ提灯に火を入れますか」
「総司さんが先導してくださるなら灯りは無くても……月も明るいですし」
「では僕にお任せください」
沖田は頼もしい笑顔で夢主の前に歩み出た。
夜空から二人を照らす月を見上げれば斎藤の姿が思い浮かぶ。
また離れてしまう日々が続いても、この美しい月があれば心を強くして待っていられるはず。
「お願いします」
夢主は確かな笑顔で沖田に応えた。