52.訊ね石
夢主名前設定
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「一さん、総司さんも……」
「そこで一緒になってな。立てるか、何かされなかったか」
逃げた刃衛の存在を知っている口調で斎藤は早口に問いただした。
支える手から、夢主の全身の筋肉が硬直し震えそうなほど強張っていたのが伝わってくる。
優しく抱きしめて体をさすってやりたいが、そんな猶予は無い。
その代わり、なかなか言葉が出ない夢主が声を絞り出す間、大きな手で髪を撫でてそのまま頬を包むように触れてやった。
「大丈夫です、怖かったですけど何も……一さんは」
「悪いが俺は奴を追う。沖田君、しっかり送ってくれるんだろうな」
「当然です!早く行ってください!」
「任せたぞ」
「ぁ……」
二人の会話を邪魔せぬよう黙って控えていた沖田が斎藤を追い払うように夢主を引き受けた。
斎藤が行ってしまうのを引き留められるはずもなく、あっという間に姿を消した路地を夢主は呆然と見つめた。
「速いですね、斎藤さん」
「はぃ……」
こんな状況でも見惚れてしまう美しい後ろ姿。
長い手足で駈ける姿に目を奪われてしまった。
「あっ」
いつの間にか斎藤の手に代わり沖田の手に支えられている。
気付いた夢主はすみませんと頭を下げて何とか自分の足で立ち直した。
しかし刃衛の言葉を思い出し、沖田の胸倉に迫る勢いで話し始めた。
「あの!刃衛が、刃衛が言ってたんです!沖田総司が生きているって……どうしよう総司さん!探すって言ってました、総司さんが狙われちゃう!」
動揺から行動が自制できない夢主に対し、沖田は困ったなぁと笑いながらも悪くありませんねと余裕の様子だ。
まぁ落ち着いてと掴みかかりそうな勢いを抑えた。
「そうですか……夢主ちゃんにも言うべきでしたね。実は先日、刃衛に遭遇したんです。本当に偶然、言葉も交わしていませんが確かに奴でした。斎藤さんも知っています」
「一さんが……」
「はい。今夜は予想外の出来事でしたが、ちゃんと行動を把握しているそうですよ。理由があって泳がせていると」
「泳がせて……」
斎藤にとって刃衛が必要な訳、夢主にも幾つかの理由が思い付いた。
「総司さん、大丈夫ですか、もし狙われても……」
「大丈夫ですよ。僕は新選組元幹部、あいつはただの平隊士。実力の差は歴然です。それに斎藤さんや警察も動いているそうです。もちろん僕自身だって負けませんよ」
「もちろん、それは……」
沖田の凄さは目の前で見て、何度も実感している。
強いのは確かだ。だが人斬りを続ける刃衛と道場の師範を務める沖田では実践における差があるのでは。
思っても口になどできない。
「そこで一緒になってな。立てるか、何かされなかったか」
逃げた刃衛の存在を知っている口調で斎藤は早口に問いただした。
支える手から、夢主の全身の筋肉が硬直し震えそうなほど強張っていたのが伝わってくる。
優しく抱きしめて体をさすってやりたいが、そんな猶予は無い。
その代わり、なかなか言葉が出ない夢主が声を絞り出す間、大きな手で髪を撫でてそのまま頬を包むように触れてやった。
「大丈夫です、怖かったですけど何も……一さんは」
「悪いが俺は奴を追う。沖田君、しっかり送ってくれるんだろうな」
「当然です!早く行ってください!」
「任せたぞ」
「ぁ……」
二人の会話を邪魔せぬよう黙って控えていた沖田が斎藤を追い払うように夢主を引き受けた。
斎藤が行ってしまうのを引き留められるはずもなく、あっという間に姿を消した路地を夢主は呆然と見つめた。
「速いですね、斎藤さん」
「はぃ……」
こんな状況でも見惚れてしまう美しい後ろ姿。
長い手足で駈ける姿に目を奪われてしまった。
「あっ」
いつの間にか斎藤の手に代わり沖田の手に支えられている。
気付いた夢主はすみませんと頭を下げて何とか自分の足で立ち直した。
しかし刃衛の言葉を思い出し、沖田の胸倉に迫る勢いで話し始めた。
「あの!刃衛が、刃衛が言ってたんです!沖田総司が生きているって……どうしよう総司さん!探すって言ってました、総司さんが狙われちゃう!」
動揺から行動が自制できない夢主に対し、沖田は困ったなぁと笑いながらも悪くありませんねと余裕の様子だ。
まぁ落ち着いてと掴みかかりそうな勢いを抑えた。
「そうですか……夢主ちゃんにも言うべきでしたね。実は先日、刃衛に遭遇したんです。本当に偶然、言葉も交わしていませんが確かに奴でした。斎藤さんも知っています」
「一さんが……」
「はい。今夜は予想外の出来事でしたが、ちゃんと行動を把握しているそうですよ。理由があって泳がせていると」
「泳がせて……」
斎藤にとって刃衛が必要な訳、夢主にも幾つかの理由が思い付いた。
「総司さん、大丈夫ですか、もし狙われても……」
「大丈夫ですよ。僕は新選組元幹部、あいつはただの平隊士。実力の差は歴然です。それに斎藤さんや警察も動いているそうです。もちろん僕自身だって負けませんよ」
「もちろん、それは……」
沖田の凄さは目の前で見て、何度も実感している。
強いのは確かだ。だが人斬りを続ける刃衛と道場の師範を務める沖田では実践における差があるのでは。
思っても口になどできない。