52.訊ね石
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
早朝、斎藤は結局夢主を起こしていた。
うなだれる姿を思い浮かべ、この程度の望み叶えてやればいいではないかと思い至ったのだ。
我ながら甘いと思う。寝坊助の家内が日中、寝不足から周囲に迷惑を掛けるかもしれない。だがたまには構わんだろう。
寂しさ募って暴走されるよりマシというもの。
「おい夢主、これで起きなければ俺はもう行くぞ」
何度目の呼び掛けか、夢主はようやく重たい瞼を持ち上げた。
頬に触れる暖かい感触と聞き慣れた声に目は一気に大きくなる。
「一さん!起こしてくれたんですね、嬉しい!」
「あぁ何度呼び掛けたか。今ので起きなければ俺は行っていたな」
「ごめんなさい、ありがとうございます……あ、おはようございます!」
「ククッ、まぁいいさ。声が聞きたかったんだろう、すまなかったな」
「お顔も見たかったです!」
「そうか、ならこれで満足だな。もう行くぞ」
「はい、あぁぁっ、玄関まで行きます!」
反応があり安堵した斎藤だが、お前を起こすのに想定外の時間を要したとばかりにすっくと立ち上がった。
あっという間に玄関で靴を履いている。
「お忙しいのにありがとうございます。一さ……」
「俺も嬉しいさ、その辺の破落戸に絡まれるんじゃあないぞ」
「はぃ、もちろんです!お気をつけて」
そっと唇が触れる朝の口吸い。久しぶりの感触。
斎藤の脳裏に浮かんだ破落戸が左之助だとは夢主には伝わらない。
浮かんだ若造に苛立ち、口吸いが荒ぶる前に斎藤は体を離した。
「本当に気をつけろよ」
「はっ……はい……」
心底心配だ。
出て行かねばならんがお前が心配でならんと言いたげな夫。
「大丈夫ですよ」
今度は夢主から顔を近づけた。
しがみつくように体を引き寄せる。斎藤は苦笑いで従った。
拙くも感じる優しい口づけを受けて満足そうに笑む顔に嫉妬の色は消えていた。
斎藤が行ったあと、部屋に戻って不意に机上に目を落とすと紙に置かれた石はバツ印に乗っていた。
本当は起こす気はなかったのか。
石の結果を聞けば珍しい言い訳が聞けそうな、似合わぬ迷いの表れ。
「ふふっ、一さんたら……」
見つけた夢主は眠そうな顔でくすくすと肩を揺らした。
うなだれる姿を思い浮かべ、この程度の望み叶えてやればいいではないかと思い至ったのだ。
我ながら甘いと思う。寝坊助の家内が日中、寝不足から周囲に迷惑を掛けるかもしれない。だがたまには構わんだろう。
寂しさ募って暴走されるよりマシというもの。
「おい夢主、これで起きなければ俺はもう行くぞ」
何度目の呼び掛けか、夢主はようやく重たい瞼を持ち上げた。
頬に触れる暖かい感触と聞き慣れた声に目は一気に大きくなる。
「一さん!起こしてくれたんですね、嬉しい!」
「あぁ何度呼び掛けたか。今ので起きなければ俺は行っていたな」
「ごめんなさい、ありがとうございます……あ、おはようございます!」
「ククッ、まぁいいさ。声が聞きたかったんだろう、すまなかったな」
「お顔も見たかったです!」
「そうか、ならこれで満足だな。もう行くぞ」
「はい、あぁぁっ、玄関まで行きます!」
反応があり安堵した斎藤だが、お前を起こすのに想定外の時間を要したとばかりにすっくと立ち上がった。
あっという間に玄関で靴を履いている。
「お忙しいのにありがとうございます。一さ……」
「俺も嬉しいさ、その辺の破落戸に絡まれるんじゃあないぞ」
「はぃ、もちろんです!お気をつけて」
そっと唇が触れる朝の口吸い。久しぶりの感触。
斎藤の脳裏に浮かんだ破落戸が左之助だとは夢主には伝わらない。
浮かんだ若造に苛立ち、口吸いが荒ぶる前に斎藤は体を離した。
「本当に気をつけろよ」
「はっ……はい……」
心底心配だ。
出て行かねばならんがお前が心配でならんと言いたげな夫。
「大丈夫ですよ」
今度は夢主から顔を近づけた。
しがみつくように体を引き寄せる。斎藤は苦笑いで従った。
拙くも感じる優しい口づけを受けて満足そうに笑む顔に嫉妬の色は消えていた。
斎藤が行ったあと、部屋に戻って不意に机上に目を落とすと紙に置かれた石はバツ印に乗っていた。
本当は起こす気はなかったのか。
石の結果を聞けば珍しい言い訳が聞けそうな、似合わぬ迷いの表れ。
「ふふっ、一さんたら……」
見つけた夢主は眠そうな顔でくすくすと肩を揺らした。