52.訊ね石
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衝立に掛けられた寝巻は一度身を包んだ証。
布団に目を戻し、隣に置かれた枕に鼻を近づけた。
「一さんの匂い……ちゃんと帰ってくれたんだ。それなのに私ってば」
どうして気付かないのと自分を責めるが、済んでしまったことは仕方ない。
夢主は同じ失態を繰り返しそうな自分を見越して、夜、文机に手紙を置いた。
読む手間を与えぬよう、ほんの短い手紙を。
深夜、音もなく帰宅した斎藤はいつもと違う場所に置かれた寝巻を手に取った。
文机に置かれた寝巻、その横に一枚の紙。
「蛍はいますか……何だこれは」
小声で読み上げ、眉間に皺を寄せた。
『蛍はいますか』
その下に丸印とバツ印が書かれている。紙の上には庭で拾ったのか円形の小石も置かれていた。
「この石を置けということか」
忙しい夫の手を煩わせないよう、筆を取らずに答えられる方法を考えたのだ。
斎藤はフッと笑って石を手に取った。
「今年も見たいのか、夢主」
蛍の季節が薫と剣心の別れの季節、そんな考えで質問しているとは知らぬ斎藤は夢主の寝顔に小さく笑んだ。
共に蛍を見た夜から随分と時は流れた。あんな二人だけの夜もたまにはいいと思ったものだ。
見つめるうち、眠る姿に触れたくなるが手は止まった。
……起こしてしまうか……
「蛍の季節までに片が付けば良いが。面倒な情報が集まってきてな」
全国の密偵から集まる嫌な情報。不穏な動き。
東京で見える事件の予兆。
斎藤ですら溜め息を吐きたくなる。
悪を斬るのは大歓迎だが、このままではまた任務で東京を離れる日がやって来そうだ。
「次はどこへ向かうやら」
斎藤は石をそっと動かして、寝支度を始めた。
布団に目を戻し、隣に置かれた枕に鼻を近づけた。
「一さんの匂い……ちゃんと帰ってくれたんだ。それなのに私ってば」
どうして気付かないのと自分を責めるが、済んでしまったことは仕方ない。
夢主は同じ失態を繰り返しそうな自分を見越して、夜、文机に手紙を置いた。
読む手間を与えぬよう、ほんの短い手紙を。
深夜、音もなく帰宅した斎藤はいつもと違う場所に置かれた寝巻を手に取った。
文机に置かれた寝巻、その横に一枚の紙。
「蛍はいますか……何だこれは」
小声で読み上げ、眉間に皺を寄せた。
『蛍はいますか』
その下に丸印とバツ印が書かれている。紙の上には庭で拾ったのか円形の小石も置かれていた。
「この石を置けということか」
忙しい夫の手を煩わせないよう、筆を取らずに答えられる方法を考えたのだ。
斎藤はフッと笑って石を手に取った。
「今年も見たいのか、夢主」
蛍の季節が薫と剣心の別れの季節、そんな考えで質問しているとは知らぬ斎藤は夢主の寝顔に小さく笑んだ。
共に蛍を見た夜から随分と時は流れた。あんな二人だけの夜もたまにはいいと思ったものだ。
見つめるうち、眠る姿に触れたくなるが手は止まった。
……起こしてしまうか……
「蛍の季節までに片が付けば良いが。面倒な情報が集まってきてな」
全国の密偵から集まる嫌な情報。不穏な動き。
東京で見える事件の予兆。
斎藤ですら溜め息を吐きたくなる。
悪を斬るのは大歓迎だが、このままではまた任務で東京を離れる日がやって来そうだ。
「次はどこへ向かうやら」
斎藤は石をそっと動かして、寝支度を始めた。