51.お前の中に映るもの
夢主名前設定
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「あぁ吃驚したぜ!しっかし、お前笑い過ぎだろ」
「ふふふっごめんなさい」
「まぁ夢主が笑っていられるんならいいけどよ、そういやぁよ、前の約束なんだが」
「約束?」
「あぁ。悪ぃな、奢ってやるって言ったのに出来なくなっちまった。喧嘩屋を廃業しちまったから金がねぇんだ」
「喧嘩屋を・・・そうなんですか・・・左之助さんが納得して決めた事なら私、応援しますよ。えぇと・・・お代は今日だけなら私が払います、前に奢っていただいたお返しですから」
妙が左之助に向けていた『お金払うて』の視線が『払ぅたらあかん!』に変わり夢主に向けられた。
京の女子らしい品ある顔が、無言で激しく首を振っている。
「気にすんな、今日の飯代ぐらいは残ってるさ」
「良かった・・・」
左之助の一言で夢主に続き妙もほぅっと息を吐いた。
「未亡人に払わせる訳にはいかねぇからな」
「えっ、未亡人」
「おぉっと悪ぃ、つい口にしちまった。旦那のことだよ、いい加減忘れちまったらどうだ。十年経ってよ、俺もある想いに区切りをつけたんだ」
「ある想い・・・」
「あぁ。だからお前もスッキリさっぱり忘れちまいな!最初は辛いだろうが淋しさは俺がキッチリ埋めてやるぜ」
「左之助さん?」
「じゃぁな!また来るぜ」
「あぁっ、待って・・・」
言うだけ言って立ち上がった左之助、止める間もなく当たり前のように店を出て行ってしまった。
「またや・・・また払わんといってしもうた・・・あの人これで何回目やろか、さすがに笑ぅてられへんわ・・・」
店の奥で妙はぽかんと呆れ顔だが、それでも左之助の後は追わなかった。
夢主と左之助、二人の会話に妙が入る間もなく二人だけのもので終わってしまった。
左之助が区切りをつけたある想いは赤報隊と相楽隊長への想いだろう。
もう一つ、未亡人の意味が分らず夢主は一日首を傾げていた。
夜になりようやく合点がいったのは、左之助が誤解していると気付いてから。
事実と誤解がどう入れ替わったのか分からないが、左之助は夢主が帰らぬ夫を待っていると認識している。
斎藤の存在を告げないうちに、とんでもない誤解が生まれていた。
「大変・・・」
緋村の過去を調べるほど行動力がある左之助だ。
話を聞けば夫の存在を確かめ、斎藤の仕事や顔を知り兼ねない。
「どう説明すれば・・・」
下手に動けばまずい事態を招きそうだ。
いずれ確実に伝わるのだから今は黙って見守り、斎藤と左之助が出会うまで誤解を解かない方が良いかもしれない。
心が決まると、左之助の得意げな顔が思い浮かんだ。
淋しさを埋めてやると言ってくれた爽やかな顔。
暫く真実を黙っていなければならず、左之助に申し訳ないと眉根が下がる。
それでも浮かんだ顔はあまりに楽しそうに笑っている。
夢主は静かな部屋にふふっと笑い声を響かせた。
「ふふふっごめんなさい」
「まぁ夢主が笑っていられるんならいいけどよ、そういやぁよ、前の約束なんだが」
「約束?」
「あぁ。悪ぃな、奢ってやるって言ったのに出来なくなっちまった。喧嘩屋を廃業しちまったから金がねぇんだ」
「喧嘩屋を・・・そうなんですか・・・左之助さんが納得して決めた事なら私、応援しますよ。えぇと・・・お代は今日だけなら私が払います、前に奢っていただいたお返しですから」
妙が左之助に向けていた『お金払うて』の視線が『払ぅたらあかん!』に変わり夢主に向けられた。
京の女子らしい品ある顔が、無言で激しく首を振っている。
「気にすんな、今日の飯代ぐらいは残ってるさ」
「良かった・・・」
左之助の一言で夢主に続き妙もほぅっと息を吐いた。
「未亡人に払わせる訳にはいかねぇからな」
「えっ、未亡人」
「おぉっと悪ぃ、つい口にしちまった。旦那のことだよ、いい加減忘れちまったらどうだ。十年経ってよ、俺もある想いに区切りをつけたんだ」
「ある想い・・・」
「あぁ。だからお前もスッキリさっぱり忘れちまいな!最初は辛いだろうが淋しさは俺がキッチリ埋めてやるぜ」
「左之助さん?」
「じゃぁな!また来るぜ」
「あぁっ、待って・・・」
言うだけ言って立ち上がった左之助、止める間もなく当たり前のように店を出て行ってしまった。
「またや・・・また払わんといってしもうた・・・あの人これで何回目やろか、さすがに笑ぅてられへんわ・・・」
店の奥で妙はぽかんと呆れ顔だが、それでも左之助の後は追わなかった。
夢主と左之助、二人の会話に妙が入る間もなく二人だけのもので終わってしまった。
左之助が区切りをつけたある想いは赤報隊と相楽隊長への想いだろう。
もう一つ、未亡人の意味が分らず夢主は一日首を傾げていた。
夜になりようやく合点がいったのは、左之助が誤解していると気付いてから。
事実と誤解がどう入れ替わったのか分からないが、左之助は夢主が帰らぬ夫を待っていると認識している。
斎藤の存在を告げないうちに、とんでもない誤解が生まれていた。
「大変・・・」
緋村の過去を調べるほど行動力がある左之助だ。
話を聞けば夫の存在を確かめ、斎藤の仕事や顔を知り兼ねない。
「どう説明すれば・・・」
下手に動けばまずい事態を招きそうだ。
いずれ確実に伝わるのだから今は黙って見守り、斎藤と左之助が出会うまで誤解を解かない方が良いかもしれない。
心が決まると、左之助の得意げな顔が思い浮かんだ。
淋しさを埋めてやると言ってくれた爽やかな顔。
暫く真実を黙っていなければならず、左之助に申し訳ないと眉根が下がる。
それでも浮かんだ顔はあまりに楽しそうに笑っている。
夢主は静かな部屋にふふっと笑い声を響かせた。