51.お前の中に映るもの
夢主名前設定
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翌日、何も変わらぬ毎日を望んで夢主が赤べこへ出向くと、包帯だらけの左之助が現れて店の皆を驚かせた。
二度の食い逃げをしている客が現れ、支払いを迫りたい妙すら言葉を失った。
「だ、大丈夫ですかお客はん、とにかく座ってください、傷に触りますから」
「気にしないでくれ、丈夫だけが取り柄なんでな」
そう言って入口近くの席に着いた左之助、
「一番安い飯を頼むぜ、なんせ食い扶持が無くなっちまったからな」
正直な一言で妙の顔を凍り付かせた。
食い扶持を失ったのならツケの払いはどうなる、今回の食事代は持っているのか。しかし全身怪我をしている客に冷たい仕打ちは出来ない。
仕方なしに妙は焼き魚定食を用意した。
一番安いのは麦飯だが怪我を早く治すには体力が必要、そう判断した妙の優しさだった。お代はもちろん麦飯の額を告げるつもりだ。
夢主が料理を届けると、左之助が目を白黒させた。
「お、おまっ、なんでここに」
「ここで働かせてもらっているんです。ずっと前からですよ、左之助さん……凄い怪我ですね」
「驚いたぜ、俺は何度かこの店には来てるぜ」
初めてじゃないのに今まで会わなかった驚きを述べると、
「一度も支払いしてくれてへんけどな」
奥から店主の声が響き、左之助は何もないのに咳き込んだ。
「ごほっ、ぐはっ、まっ、怪我はちょっとあってな、まぁ大丈夫だ」
「ふふっ、ご飯食べられますか、無理なさらないでくださいね」
「平気だ、ありがたく頂くぜ」
苦笑いで妙を一瞥してから左之助は箸を持って手を合わせ、一気にご飯を掻き込んだ。
夢主が席を離れるや否や食事を終えてしまい、妙も呆れている。
商売人の情けで怪我人の客に茶のお代わりもきちんと届けられた。
「ゆっくり食べてもいいのに……ふふっ、お茶のお代わりどうぞ」
「おおっ気が利くな、ありがとよ。っ、あっちぃっ!」
食事同様に熱い茶を一気に流しこもうとして熱さに慌てる左之助がおかしくて、夢主はくすくすと肩を揺らした。
湯呑を落としそうになり、掴み直して見せた笑顔が懐かしさを誘う。
参ったなとはにかんだ笑いが、忘れかけていた原田の微笑みを思い起こさせた。
元々原田に似ている左之助がより似て見える表情。
目尻に涙を浮かべて笑う夢主を見た左之助は嬉しそうだ。
二度の食い逃げをしている客が現れ、支払いを迫りたい妙すら言葉を失った。
「だ、大丈夫ですかお客はん、とにかく座ってください、傷に触りますから」
「気にしないでくれ、丈夫だけが取り柄なんでな」
そう言って入口近くの席に着いた左之助、
「一番安い飯を頼むぜ、なんせ食い扶持が無くなっちまったからな」
正直な一言で妙の顔を凍り付かせた。
食い扶持を失ったのならツケの払いはどうなる、今回の食事代は持っているのか。しかし全身怪我をしている客に冷たい仕打ちは出来ない。
仕方なしに妙は焼き魚定食を用意した。
一番安いのは麦飯だが怪我を早く治すには体力が必要、そう判断した妙の優しさだった。お代はもちろん麦飯の額を告げるつもりだ。
夢主が料理を届けると、左之助が目を白黒させた。
「お、おまっ、なんでここに」
「ここで働かせてもらっているんです。ずっと前からですよ、左之助さん……凄い怪我ですね」
「驚いたぜ、俺は何度かこの店には来てるぜ」
初めてじゃないのに今まで会わなかった驚きを述べると、
「一度も支払いしてくれてへんけどな」
奥から店主の声が響き、左之助は何もないのに咳き込んだ。
「ごほっ、ぐはっ、まっ、怪我はちょっとあってな、まぁ大丈夫だ」
「ふふっ、ご飯食べられますか、無理なさらないでくださいね」
「平気だ、ありがたく頂くぜ」
苦笑いで妙を一瞥してから左之助は箸を持って手を合わせ、一気にご飯を掻き込んだ。
夢主が席を離れるや否や食事を終えてしまい、妙も呆れている。
商売人の情けで怪我人の客に茶のお代わりもきちんと届けられた。
「ゆっくり食べてもいいのに……ふふっ、お茶のお代わりどうぞ」
「おおっ気が利くな、ありがとよ。っ、あっちぃっ!」
食事同様に熱い茶を一気に流しこもうとして熱さに慌てる左之助がおかしくて、夢主はくすくすと肩を揺らした。
湯呑を落としそうになり、掴み直して見せた笑顔が懐かしさを誘う。
参ったなとはにかんだ笑いが、忘れかけていた原田の微笑みを思い起こさせた。
元々原田に似ている左之助がより似て見える表情。
目尻に涙を浮かべて笑う夢主を見た左之助は嬉しそうだ。