50.一繋がりの
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「とっ、とても忙しい人でほとんど家にいなくて、きっといつかお会いできると思いますから、その、」
「ははっ、大丈夫でござるよ。そんなに慌てるなど余程の事情があると見える。無理強いはせんでござるよ」
「ごめんなさい、緋村さんは心から信頼していますし感謝もしているんですけど、主人は色々と事情がありまして……」
貴方との再会を待ち侘びて殺したがっている男が旦那だとは告げられない。
実際には力量を測るにとどまり共闘に発展するのだが、それも言えまい。
「沖田総司は息災か」
「あ……はい、あの沖田さんの事も……」
「皆には内緒でござるな。承知した。今の名は何と言ったか」
「総司さん、井上総司と名乗っています」
「井上殿でござったな、しかと覚えたでござる」
互いの過去と今を確かめ合う不思議な会話が続く。
剣心は思い出したくないはずだ。近付くことすら避けている京都での過去。何かを言いかけて小さく首を振った。
「緋村さん……薫さんと弥彦君をよろしくお願いします」
「夢主殿……」
「私が言うことではありませんが……二人のこと」
「そのつもりでござるよ。これも何かの縁、迷惑をかけた分と助けてもらった分の恩は返すつもりでござる」
「恩……」
剣心の中での薫に対しての気持ちはまだ固まっていないのか。
夢主は少し残念そうに川面を見つめた。
「夢主殿は何も困っていないでござるか」
「え……」
「拙者、微力ながら人助けの旅をしていたでござる。暫くはこの町に留まりそうだが、またいつ流れるか」
「緋村さん……」
「その前に何か力になれる事があれば拙者いつでも力を貸すでござるよ」
「また……行くつもりなんですか」
「正直、分からない……」
「十年ですよね、全国を流れて十年……もう赦されてもいい頃なんじゃ……」
「十年……早かったでござるな。夢主殿は何も変わらないと見える」
ちらと視線が体の上を動いたが夢主は気付かなかった。
「人を斬ったというのなら総司さんも同じです。今は身を潜めて子供達の為に剣術を振るっているんですよ」
「沖田殿か。ゆっくり話す機会があれば酒でも酌み交わしたいものだ」
今はそれも難しい……夢主の伏せた瞳から言えない事情を察した剣心はころっと表情を変えて続けた。
「まぁそれも今は難しいでござろうな、拙者の心の整理がついたらよろしく頼むでござるよ。夢主殿とは晩酌できるでござろうか」
「旦那様がいらっしゃるので二人きりでとは……神谷道場にお邪魔できる日があれば皆さんで」
「そうだな、それが良いでござろう。夢主殿のご主人は怖いと見える。拙者のせいでお主が怒られるのでは申し訳ござらん」
ははっと軽く笑って剣心は小萩屋での夜を思い出していた。
熱で意識が無かったとは言え、着替えさせる為に肌を見た。
放置すれば濡れた体は更に熱を上げ取り返しのつかない事に、言い訳しても夫の立場として許せないだろう。
いろんな意味で拙者はご主人が怖いでござると密かに頷いた。
「みんな怖いって言いますけど、怖くないんですよ……でも」
戦の場で見せる真剣な姿はある意味怖い姿かもしれない。
神谷道場での宴会を思い描いて夢主は左之助の存在を思い出した。斎藤とも手合わせする日がくる左之助、剣心はその左之助に既に喧嘩を売られているはず。
何も聞かない方がいいだろうか。
「どうしたでござる」
「いいえ、久しぶりに懐かしい話を沢山しました。ありがとうございます」
「あぁ。拙者も昔の話を遠慮なく出来る相手がいて嬉しいでござる。今の者には伝えたくないし、昔の知り合いに会えば政府への勧誘か果し合いの誘いばかりでな」
「ふふっ、緋村さんは人気者ですね」
「嬉しくないでござるよぉ~」
心から参ったと笑う剣心。
その顔からは心を閉ざして流れていた流浪人の仮面はすっかり外れていた。
「ははっ、大丈夫でござるよ。そんなに慌てるなど余程の事情があると見える。無理強いはせんでござるよ」
「ごめんなさい、緋村さんは心から信頼していますし感謝もしているんですけど、主人は色々と事情がありまして……」
貴方との再会を待ち侘びて殺したがっている男が旦那だとは告げられない。
実際には力量を測るにとどまり共闘に発展するのだが、それも言えまい。
「沖田総司は息災か」
「あ……はい、あの沖田さんの事も……」
「皆には内緒でござるな。承知した。今の名は何と言ったか」
「総司さん、井上総司と名乗っています」
「井上殿でござったな、しかと覚えたでござる」
互いの過去と今を確かめ合う不思議な会話が続く。
剣心は思い出したくないはずだ。近付くことすら避けている京都での過去。何かを言いかけて小さく首を振った。
「緋村さん……薫さんと弥彦君をよろしくお願いします」
「夢主殿……」
「私が言うことではありませんが……二人のこと」
「そのつもりでござるよ。これも何かの縁、迷惑をかけた分と助けてもらった分の恩は返すつもりでござる」
「恩……」
剣心の中での薫に対しての気持ちはまだ固まっていないのか。
夢主は少し残念そうに川面を見つめた。
「夢主殿は何も困っていないでござるか」
「え……」
「拙者、微力ながら人助けの旅をしていたでござる。暫くはこの町に留まりそうだが、またいつ流れるか」
「緋村さん……」
「その前に何か力になれる事があれば拙者いつでも力を貸すでござるよ」
「また……行くつもりなんですか」
「正直、分からない……」
「十年ですよね、全国を流れて十年……もう赦されてもいい頃なんじゃ……」
「十年……早かったでござるな。夢主殿は何も変わらないと見える」
ちらと視線が体の上を動いたが夢主は気付かなかった。
「人を斬ったというのなら総司さんも同じです。今は身を潜めて子供達の為に剣術を振るっているんですよ」
「沖田殿か。ゆっくり話す機会があれば酒でも酌み交わしたいものだ」
今はそれも難しい……夢主の伏せた瞳から言えない事情を察した剣心はころっと表情を変えて続けた。
「まぁそれも今は難しいでござろうな、拙者の心の整理がついたらよろしく頼むでござるよ。夢主殿とは晩酌できるでござろうか」
「旦那様がいらっしゃるので二人きりでとは……神谷道場にお邪魔できる日があれば皆さんで」
「そうだな、それが良いでござろう。夢主殿のご主人は怖いと見える。拙者のせいでお主が怒られるのでは申し訳ござらん」
ははっと軽く笑って剣心は小萩屋での夜を思い出していた。
熱で意識が無かったとは言え、着替えさせる為に肌を見た。
放置すれば濡れた体は更に熱を上げ取り返しのつかない事に、言い訳しても夫の立場として許せないだろう。
いろんな意味で拙者はご主人が怖いでござると密かに頷いた。
「みんな怖いって言いますけど、怖くないんですよ……でも」
戦の場で見せる真剣な姿はある意味怖い姿かもしれない。
神谷道場での宴会を思い描いて夢主は左之助の存在を思い出した。斎藤とも手合わせする日がくる左之助、剣心はその左之助に既に喧嘩を売られているはず。
何も聞かない方がいいだろうか。
「どうしたでござる」
「いいえ、久しぶりに懐かしい話を沢山しました。ありがとうございます」
「あぁ。拙者も昔の話を遠慮なく出来る相手がいて嬉しいでござる。今の者には伝えたくないし、昔の知り合いに会えば政府への勧誘か果し合いの誘いばかりでな」
「ふふっ、緋村さんは人気者ですね」
「嬉しくないでござるよぉ~」
心から参ったと笑う剣心。
その顔からは心を閉ざして流れていた流浪人の仮面はすっかり外れていた。