50.一繋がりの
夢主名前設定
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薫達三人は食事を終えて満足な笑顔で赤べこをあとにした。
終始楽しそうに過ごしていた。弥彦と薫が喧嘩のようにじゃれあう場面も微笑ましかった。
夢主は三人の姿に安心して帰り支度に入った。
三つの異なる足音が聞こえるのは心が躍る。
薫は歩きながら機嫌良く聞き耳を立てていた。
「ふふっ」
しかし店を出て暫く行ったところで足音が一つ消えた。
剣心がはたと足を止めたのだ。
「どうしたの剣心」
「悪いが先に行ってくれないか、拙者寄りたい場所がある」
「だったら一緒に」
「いや、一人で行きたいでござる」
大人の男が一人で行きたがる場所、一瞬で様々な想像を巡らせ不安が沸き起こる。
「大丈夫」と微笑む剣心を信じるしかない。
状況を察した弥彦は子供とは思えぬ気遣いで薫を励ますように誘った。
「行こうぜ、薫。剣心なら大丈夫だ」
「う……うん」
毒の無い笑顔で見送ってくれる剣心を名残惜しそうに振り返りながら薫は去って行った。
弥彦はそんな師範代の女心を目の当たりにして自らに言い聞かせるよう心の中で繰り返した。
……剣心なら大丈夫だ、薫を泣かせたりしないし、万一女と……女と遊ぶトコに行ったって薫には気付かせねぇさ、薫はそういうとこは鈍いしな、剣心の野郎ああ見えて歴戦の男だもんな……
「ちくしょう」
「弥彦?」
「何でもねぇよ、帰ったら稽古つけてくれよ」
「どうしたの急に、いいわよ!何だかムシャクシャするから思いっきり稽古つけてあげる!」
「何だよそれ、八つ当たりじゃねぇか!それでも師範代かよ!」
とにかく薫が笑った。
厳しい稽古だって身になるんだ、まぁいいさと弥彦は元気いっぱいに走り出した。
「さて、拙者も行くでござる。弥彦はなかなかに勘が良いでござるな」
気を利かせて薫を連れ帰ってくれるとは。
男としての気遣いは一人前だなと小さな士の後ろ姿に顔が緩んだ。
剣心が向かったのは先程まで薫達と食事を楽しんだ場所。
赤べこを出た帰り道、夢主は剣心に送られることになった。
「緋村さん、どうして」
「いや、少し話をしたいと……お主の顔に書いてあった気がしてな」
「私の顔に」
確かに一言告げておきたかった。
そのいくつかは既に剣心の口から薫に伝わってしまったが。
何とも言えない顔をする夢主に剣心が吹き出した。
「ふっ、ははっ。夢主殿のせいにしてはいけないな、拙者が話をしたかったんだ。すまない」
「緋村さん……」
「人が少ない場所でも構わないでござるか」
「大丈夫です」
夢主はくすっと笑って頷いた。
いつも翳りのある顔をしている明治を生きる緋村剣心、そんな印象があった。こんな風に笑顔が見られたのは意外だった。
幕末の話はとても繊細。
人のいない河原で二人は腰を下ろした。
水辺で鳴る音は淀む心を洗ってくれる。思い出したくない話題も気持ちを軽くして話せるかもしれない。
終始楽しそうに過ごしていた。弥彦と薫が喧嘩のようにじゃれあう場面も微笑ましかった。
夢主は三人の姿に安心して帰り支度に入った。
三つの異なる足音が聞こえるのは心が躍る。
薫は歩きながら機嫌良く聞き耳を立てていた。
「ふふっ」
しかし店を出て暫く行ったところで足音が一つ消えた。
剣心がはたと足を止めたのだ。
「どうしたの剣心」
「悪いが先に行ってくれないか、拙者寄りたい場所がある」
「だったら一緒に」
「いや、一人で行きたいでござる」
大人の男が一人で行きたがる場所、一瞬で様々な想像を巡らせ不安が沸き起こる。
「大丈夫」と微笑む剣心を信じるしかない。
状況を察した弥彦は子供とは思えぬ気遣いで薫を励ますように誘った。
「行こうぜ、薫。剣心なら大丈夫だ」
「う……うん」
毒の無い笑顔で見送ってくれる剣心を名残惜しそうに振り返りながら薫は去って行った。
弥彦はそんな師範代の女心を目の当たりにして自らに言い聞かせるよう心の中で繰り返した。
……剣心なら大丈夫だ、薫を泣かせたりしないし、万一女と……女と遊ぶトコに行ったって薫には気付かせねぇさ、薫はそういうとこは鈍いしな、剣心の野郎ああ見えて歴戦の男だもんな……
「ちくしょう」
「弥彦?」
「何でもねぇよ、帰ったら稽古つけてくれよ」
「どうしたの急に、いいわよ!何だかムシャクシャするから思いっきり稽古つけてあげる!」
「何だよそれ、八つ当たりじゃねぇか!それでも師範代かよ!」
とにかく薫が笑った。
厳しい稽古だって身になるんだ、まぁいいさと弥彦は元気いっぱいに走り出した。
「さて、拙者も行くでござる。弥彦はなかなかに勘が良いでござるな」
気を利かせて薫を連れ帰ってくれるとは。
男としての気遣いは一人前だなと小さな士の後ろ姿に顔が緩んだ。
剣心が向かったのは先程まで薫達と食事を楽しんだ場所。
赤べこを出た帰り道、夢主は剣心に送られることになった。
「緋村さん、どうして」
「いや、少し話をしたいと……お主の顔に書いてあった気がしてな」
「私の顔に」
確かに一言告げておきたかった。
そのいくつかは既に剣心の口から薫に伝わってしまったが。
何とも言えない顔をする夢主に剣心が吹き出した。
「ふっ、ははっ。夢主殿のせいにしてはいけないな、拙者が話をしたかったんだ。すまない」
「緋村さん……」
「人が少ない場所でも構わないでござるか」
「大丈夫です」
夢主はくすっと笑って頷いた。
いつも翳りのある顔をしている明治を生きる緋村剣心、そんな印象があった。こんな風に笑顔が見られたのは意外だった。
幕末の話はとても繊細。
人のいない河原で二人は腰を下ろした。
水辺で鳴る音は淀む心を洗ってくれる。思い出したくない話題も気持ちを軽くして話せるかもしれない。