50.一繋がりの
夢主名前設定
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それから朝の散歩を終え沖田と別れた夢主は赤べこへ向かった。
戸をくぐると「うーんと」と唸る妙がいる。
夢主に気付いて上げた顔は少し困って見える。手には筆があり、何かを書き留めているようだ。
「あら、おはよう夢主ちゃん」
「おはようございます、何を書いてるんですか」
「覚え書きよ、実はお代を払わずに行っちゃったお客はんがいてね、それでちょっと覚え書きを」
「無銭飲食……」
「まぁ初めての人やったし何かのお導きかもしれへんから警察には届けないんやけど」
商売人たるもの縁を大事にして一見の無銭飲食も場合によっては見過ごす時がある。
妙もそんな商売人魂を大切にし、次はお金を払いに来てくれると信じて警察に届けなかったのだ。
客の風貌を思い出しながら筆をゆっくり動かす妙。夢主が紙を覗いて食い逃げ犯の姿を思い浮かべると、ある人物が浮かんだ。
長身、体格好し、若者、大きな声、逆立った黒髪、背中に悪の文字。
「もしかして赤い鉢巻きをしてませんでしたか」
「してはったわ!黒々した髪でつんつん頭の」
「左之助さんです……」
溜め息みたいに名前を口にした。
記憶の中で左之助は何度も無銭飲食を繰り返していた。今回も悪気はないが代金を払わずに去ってしまったのだろう。
「さのすけさん……夢主ちゃん知ってるん」
「はぃ、何度か会ったことが……あの、左之助さんのお代は私が払います」
食事を奢ってもらった事があるのだから、ここで返すと思えば良い。
財布を出そうとするが、妙は厳しい顔つきで首を振った。
「あかんよぉ、そんなことしたら!また来るかもしれへんし本人に払うてもらうわ、夢主ちゃんが払うことないわよ」
「でも、妙さんにもその方にもお世話になっているんです」
「それとこれとは別、お金のことはきっちりしなあかん!」
「妙さん……」
「商売人やさかい、お金のことはきっちりするわよ。ええの、その人とウチも何かの縁があるかもしれへんし今回は水に流すわ。ただし忘れへんようシッカリ書いて残すから」
人情溢れる対応と商売人としての賢さを備えている、さすがと唸るしかない。
確かに二人に縁はあるかもしれないが、左之助は無銭飲食を繰り返す。
それを思うと、他人ではあるが身内の不祥事のように申し訳ない、結果を知っているが故の割り切れない気分だ。
「な、夢主ちゃんはこのこと忘れて今日も笑顔でよろしくね」
「はい……わかりました、今日も頑張ります!」
もやもやするが妙に訴えてもきりが無い。
お金を払わない左之助も悪いのだ。今度会ったらそれとなく伝えれば良い。
夢主は気持ちを切り替えて赤べこの制服に身を包んだ。
戸をくぐると「うーんと」と唸る妙がいる。
夢主に気付いて上げた顔は少し困って見える。手には筆があり、何かを書き留めているようだ。
「あら、おはよう夢主ちゃん」
「おはようございます、何を書いてるんですか」
「覚え書きよ、実はお代を払わずに行っちゃったお客はんがいてね、それでちょっと覚え書きを」
「無銭飲食……」
「まぁ初めての人やったし何かのお導きかもしれへんから警察には届けないんやけど」
商売人たるもの縁を大事にして一見の無銭飲食も場合によっては見過ごす時がある。
妙もそんな商売人魂を大切にし、次はお金を払いに来てくれると信じて警察に届けなかったのだ。
客の風貌を思い出しながら筆をゆっくり動かす妙。夢主が紙を覗いて食い逃げ犯の姿を思い浮かべると、ある人物が浮かんだ。
長身、体格好し、若者、大きな声、逆立った黒髪、背中に悪の文字。
「もしかして赤い鉢巻きをしてませんでしたか」
「してはったわ!黒々した髪でつんつん頭の」
「左之助さんです……」
溜め息みたいに名前を口にした。
記憶の中で左之助は何度も無銭飲食を繰り返していた。今回も悪気はないが代金を払わずに去ってしまったのだろう。
「さのすけさん……夢主ちゃん知ってるん」
「はぃ、何度か会ったことが……あの、左之助さんのお代は私が払います」
食事を奢ってもらった事があるのだから、ここで返すと思えば良い。
財布を出そうとするが、妙は厳しい顔つきで首を振った。
「あかんよぉ、そんなことしたら!また来るかもしれへんし本人に払うてもらうわ、夢主ちゃんが払うことないわよ」
「でも、妙さんにもその方にもお世話になっているんです」
「それとこれとは別、お金のことはきっちりしなあかん!」
「妙さん……」
「商売人やさかい、お金のことはきっちりするわよ。ええの、その人とウチも何かの縁があるかもしれへんし今回は水に流すわ。ただし忘れへんようシッカリ書いて残すから」
人情溢れる対応と商売人としての賢さを備えている、さすがと唸るしかない。
確かに二人に縁はあるかもしれないが、左之助は無銭飲食を繰り返す。
それを思うと、他人ではあるが身内の不祥事のように申し訳ない、結果を知っているが故の割り切れない気分だ。
「な、夢主ちゃんはこのこと忘れて今日も笑顔でよろしくね」
「はい……わかりました、今日も頑張ります!」
もやもやするが妙に訴えてもきりが無い。
お金を払わない左之助も悪いのだ。今度会ったらそれとなく伝えれば良い。
夢主は気持ちを切り替えて赤べこの制服に身を包んだ。