50.一繋がりの
夢主名前設定
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朝一番、斎藤は警視庁に入り、然るべき部署へ服を返した。
それから資料室へ籠り報告書をまとめる傍ら、部下から神谷道場での騒動の事後報告を受けた。
偽抜刀斎の襲撃、賊は返り討ちに会い一網打尽、主犯の二人が脱獄したが行動は把握している。
「娘が無事なら問題ない」
報告書を置いた斎藤は口元を歪めた。
賊の証言によると、騒動を治めたのは単身痩躯に十字傷の男。
「本物の抜刀斎。ようやく捉えたぞ、緋村抜刀斎」
報告書の続きでは逮捕劇の後日、町でちょっとした騒ぎがあり山縣卿が現場へ駆けつけたらしい。
騒ぎの中心にいたのは神谷の娘と緋村抜刀斎。
山縣が官職へ誘ったが抜刀斎は拒否して責任を放棄した。
ではどうする、幕末の秘密を滅するために政府は奴を殺すのか。それとも別の道を探るのか。
抜刀斎の居場所がこんな形で判明するとは面白い。
まさか神谷道場に居座っているとは。居合わせた町娘、神谷薫の道場に奴は居候しているらしい。
「娘を頼む」……神谷越路郎の言葉が思い返される。
笑ってもいいだろうか。よろしく頼まれた結果がこれだ。
俺は遠くから見守るつもりだが構わんよな、斎藤は遠い越路郎に語りかけた。
数日後、政府から斎藤に下された指示は抜刀斎を監視しろというもの。
「上等だ、貴様の今の力を見極めてやろう。……クク、クククッ」
東京の町で火種になりそうな案件が幾つか上がっている。
偽抜刀斎事件に顔を突っ込んだ性格を考慮すれば、そのいずれかに奴は絡んでくるだろう。
斎藤は知らずのうちに刀に触れていた。
夢主は斎藤が出勤してからいつものように庭掃除に勤しんでいた。
朝、比留間兄弟のことを尋ねたが問題無いから放っておけと告げられた。
薫の身を案じて神谷道場へ向かいたいが、事件が起きたのならば剣心が既に身を置いている証。訪問を思い止まった。
「一さんはきっと様子を見てるんだ……比留間兄弟が逃げたんだから剣心が神谷道場を守ったのは間違いなくて、次に起きるのは確か……」
記憶を辿って幾つかの事件を思い出す。
弥彦とはもう出会っているのだろうか。左之助とはどうだろう。別々に動いていた歯車が噛みあって共に動き出すはずだ。
「総司さんは何か話したのかな」
本来なら比留間兄弟と関わるはずの無かった人物。
箒を置いて隣を覗くと、昨日に引き続き沖田の珍しい怒鳴り声が聞こえた。
また侵入者かと身構えるが、一人で素振りをしているようだ。
「大丈夫ですか、総司さん……」
「夢主ちゃん!ははっ、これは恥ずかしいところをお見せしました」
しまったと苦笑いを見せる沖田。不機嫌に乱れた一人稽古をしていた。
目の前の敵を切り伏せる迫力に近い気合、だが乱れているため荒い太刀筋だ。
「珍しいですね、剣で八つ当たりなんて」
「確かに八つ当たりですね、昨日の汚れが道場の染みになってしまいまして。こんな事で心を乱すようではいけませんね」
そうは思えど腹が立つ。
大家の婆から借り受けて修繕と掃除で蘇らせたこの道場。毎日綺麗に磨き上げて塵一つない空間を保っていた。
それがたった一度の不躾で……怒りを鎮めるための素振りに感情が乗ってしまった。
「気分転換に朝の散歩でも行きませんか、私ちょうど手が空いたところなんです」
「散歩ですか、いいですね」
薄ら白んでいた空気も朝靄が晴れて明るい陽が射している。
機嫌が悪い沖田を宥めて一緒に出掛け、人々が忙しく行き交う通りを眺める茶屋に腰を下ろした。
それから資料室へ籠り報告書をまとめる傍ら、部下から神谷道場での騒動の事後報告を受けた。
偽抜刀斎の襲撃、賊は返り討ちに会い一網打尽、主犯の二人が脱獄したが行動は把握している。
「娘が無事なら問題ない」
報告書を置いた斎藤は口元を歪めた。
賊の証言によると、騒動を治めたのは単身痩躯に十字傷の男。
「本物の抜刀斎。ようやく捉えたぞ、緋村抜刀斎」
報告書の続きでは逮捕劇の後日、町でちょっとした騒ぎがあり山縣卿が現場へ駆けつけたらしい。
騒ぎの中心にいたのは神谷の娘と緋村抜刀斎。
山縣が官職へ誘ったが抜刀斎は拒否して責任を放棄した。
ではどうする、幕末の秘密を滅するために政府は奴を殺すのか。それとも別の道を探るのか。
抜刀斎の居場所がこんな形で判明するとは面白い。
まさか神谷道場に居座っているとは。居合わせた町娘、神谷薫の道場に奴は居候しているらしい。
「娘を頼む」……神谷越路郎の言葉が思い返される。
笑ってもいいだろうか。よろしく頼まれた結果がこれだ。
俺は遠くから見守るつもりだが構わんよな、斎藤は遠い越路郎に語りかけた。
数日後、政府から斎藤に下された指示は抜刀斎を監視しろというもの。
「上等だ、貴様の今の力を見極めてやろう。……クク、クククッ」
東京の町で火種になりそうな案件が幾つか上がっている。
偽抜刀斎事件に顔を突っ込んだ性格を考慮すれば、そのいずれかに奴は絡んでくるだろう。
斎藤は知らずのうちに刀に触れていた。
夢主は斎藤が出勤してからいつものように庭掃除に勤しんでいた。
朝、比留間兄弟のことを尋ねたが問題無いから放っておけと告げられた。
薫の身を案じて神谷道場へ向かいたいが、事件が起きたのならば剣心が既に身を置いている証。訪問を思い止まった。
「一さんはきっと様子を見てるんだ……比留間兄弟が逃げたんだから剣心が神谷道場を守ったのは間違いなくて、次に起きるのは確か……」
記憶を辿って幾つかの事件を思い出す。
弥彦とはもう出会っているのだろうか。左之助とはどうだろう。別々に動いていた歯車が噛みあって共に動き出すはずだ。
「総司さんは何か話したのかな」
本来なら比留間兄弟と関わるはずの無かった人物。
箒を置いて隣を覗くと、昨日に引き続き沖田の珍しい怒鳴り声が聞こえた。
また侵入者かと身構えるが、一人で素振りをしているようだ。
「大丈夫ですか、総司さん……」
「夢主ちゃん!ははっ、これは恥ずかしいところをお見せしました」
しまったと苦笑いを見せる沖田。不機嫌に乱れた一人稽古をしていた。
目の前の敵を切り伏せる迫力に近い気合、だが乱れているため荒い太刀筋だ。
「珍しいですね、剣で八つ当たりなんて」
「確かに八つ当たりですね、昨日の汚れが道場の染みになってしまいまして。こんな事で心を乱すようではいけませんね」
そうは思えど腹が立つ。
大家の婆から借り受けて修繕と掃除で蘇らせたこの道場。毎日綺麗に磨き上げて塵一つない空間を保っていた。
それがたった一度の不躾で……怒りを鎮めるための素振りに感情が乗ってしまった。
「気分転換に朝の散歩でも行きませんか、私ちょうど手が空いたところなんです」
「散歩ですか、いいですね」
薄ら白んでいた空気も朝靄が晴れて明るい陽が射している。
機嫌が悪い沖田を宥めて一緒に出掛け、人々が忙しく行き交う通りを眺める茶屋に腰を下ろした。