48.小高い社
夢主名前設定
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土手を離れた夢主は帰り道を逸れて静かな社に立ち寄っていた。
少し町から離れた小高い場所にある境内には誰もおらず、お参りを済ませて脇にある程よい石に腰を下ろした。
暮れ行く日の美しさに見惚れている。
だんだん町の朱色が濃くなっていく。
完全に陽が無くなる前に帰らなければ。
そう思うが、あまりに鮮やかな夕映えの空に心惹かれ、目が離せなかった。
上空では鳥たちが黒い影となって飛んでいく。山へでも帰るのか。
「弥彦君、大丈夫かな……」
景色の変化を眺め、静かな歌にでも合わせるように体をゆっくり揺らして時を過ごす夢主は放心状態に近い。
そんな夢主を現実に呼び戻したのは石畳を革の靴が歩く音だった。
硬い音が近づくのは早く、石段を登り鳥居をくぐり、あっという間に目の前へやって来た。
「一さ……あっ」
「大丈夫だ、今は誰もいない」
市中で出会っても夫として話しかけてはならない。
戒めを思い出し口をつぐむが、斎藤は構わないと頷いた。頷くが、驚いたと俄かに目を大きくしている。
「こんな所で何をしている。もうすぐ日が暮れるぞ」
「少し気分転換と……お参りに」
「お参り、何か神頼みしたいほどの望みでもあるのか」
「いいえ、特には。……ただ悪い事が起きませんようにって」
優しい一言に斎藤の表情がふっと和らいだ。
夢主なりに憂いを取り除こうと明るい時代を祈ったのか、もがく代わりに見出した行動を愛おしく思う。
「そうか」
人けのない神社は考え事にうってつけ。眺望が良いここは尚更だ。
境内から町に目を向ければ見える素晴らしい景色、夢主が眺めて心を落ち着けていたことが窺える。
無意識に妻の心理を探る斎藤に対し、夢主はふふっと微笑み大きな鳥居に目を向けた。
その先に見える茜の空は今が一番濃い色だ。
「鳥居越しに夕焼けが見えて、山に帰る鳥達が気持ちよさそうで……」
「鳥が気持ち好さそうか」
「あ……子供っぽいって思いましたか」
「多少」
目が合って思わず苦笑い。二人揃ってどこか気恥ずかしそうで、黄昏時に合う微笑みかもしれない。
互いの姿が夕日に染まる。予期せぬ出会いに驚いた後は、嬉しさではにかんでいた。
少し町から離れた小高い場所にある境内には誰もおらず、お参りを済ませて脇にある程よい石に腰を下ろした。
暮れ行く日の美しさに見惚れている。
だんだん町の朱色が濃くなっていく。
完全に陽が無くなる前に帰らなければ。
そう思うが、あまりに鮮やかな夕映えの空に心惹かれ、目が離せなかった。
上空では鳥たちが黒い影となって飛んでいく。山へでも帰るのか。
「弥彦君、大丈夫かな……」
景色の変化を眺め、静かな歌にでも合わせるように体をゆっくり揺らして時を過ごす夢主は放心状態に近い。
そんな夢主を現実に呼び戻したのは石畳を革の靴が歩く音だった。
硬い音が近づくのは早く、石段を登り鳥居をくぐり、あっという間に目の前へやって来た。
「一さ……あっ」
「大丈夫だ、今は誰もいない」
市中で出会っても夫として話しかけてはならない。
戒めを思い出し口をつぐむが、斎藤は構わないと頷いた。頷くが、驚いたと俄かに目を大きくしている。
「こんな所で何をしている。もうすぐ日が暮れるぞ」
「少し気分転換と……お参りに」
「お参り、何か神頼みしたいほどの望みでもあるのか」
「いいえ、特には。……ただ悪い事が起きませんようにって」
優しい一言に斎藤の表情がふっと和らいだ。
夢主なりに憂いを取り除こうと明るい時代を祈ったのか、もがく代わりに見出した行動を愛おしく思う。
「そうか」
人けのない神社は考え事にうってつけ。眺望が良いここは尚更だ。
境内から町に目を向ければ見える素晴らしい景色、夢主が眺めて心を落ち着けていたことが窺える。
無意識に妻の心理を探る斎藤に対し、夢主はふふっと微笑み大きな鳥居に目を向けた。
その先に見える茜の空は今が一番濃い色だ。
「鳥居越しに夕焼けが見えて、山に帰る鳥達が気持ちよさそうで……」
「鳥が気持ち好さそうか」
「あ……子供っぽいって思いましたか」
「多少」
目が合って思わず苦笑い。二人揃ってどこか気恥ずかしそうで、黄昏時に合う微笑みかもしれない。
互いの姿が夕日に染まる。予期せぬ出会いに驚いた後は、嬉しさではにかんでいた。