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好きなようにと勧められてもちびちび呑む夢主だが、顔はどんどん色づいていく。
すぐに顔だけでなく肌までも染まっていくだろう。
瞳は既に濡れて揺れている。
「その姿も久しぶりに見る気がするな」
「そうですか……って、えと……その姿って、どんなすがたですか……」
「その、まったりした言葉と濡れた瞳、それから火照った肌と……唇も濡れているな。まだ聞きたいか」
夢主は顔をますます赤らめて首を振った。
「安心しろ、今夜は何もせん」
「なにも……ほんとうですか……一さんがなにもしないなんて……」
「あぁ、本当だ。俺は色情狂か、俺だって穏やかに過ごしたい夜はあるさ」
「そぅですか……」
今夜はどうしてかそんな気分だ。
あまりに純真な夢主を見ていると、ただ慈しみたい気分になる。手を伸ばして包んでやりたくはあるが、それ以上は……今宵は……。
だが触れてしまえば存外抱きたくなるのかもしれない。
「ククッ」
「はじめ……さん?」
「何でもない。さぁ次を入れてやる」
空になった猪口に徳利を傾ける。
夢主は言われるがままに酒を貰い、緩んだ笑顔で小首を傾げた。
礼のつもりだ。だいぶ酔いが回ったか、目元も口元も締まりなく幸せそうに笑っている。
半開きの濡れた口に猪口を寄せ、貰ったばかりの酒を一気に流し込んだ。
「あ……はじめさん、わたしはどちらでもいいれすよ……」
「何がだ」
「だから、はじめさん、だいてくださるの……すきれす……」
「っ、阿呆ぅ、煽るな!」
折角静かな夜をと考えたんだ、心を掻き乱すなと、斎藤が珍しく色のない顔に血の色を浮かべた。
「今夜はこれだけだ」
「っん……ふぁ……ぁ、わかり……ました」
決めたことは変えんと意地を張ってか、口吸い一つだと唇を重ねる。
斎藤は夢主の口を貪るように吸い、離すと口元に移った酒の雫を拳で拭った。
「少し口に入ったな」
口内が僅かに熱い。
斎藤は穏やかな夜を選ぶか激しい欲を選ぶか心密かに迷うが、気付けば目の前でくたりと体を崩す夢主がいた。
「こいつ」
選ぶ権利は己には無かったようだ。
心地よい寝息を響かせ始めた夢主。そっと布団に移してやり、小さな額に唇を落とした。
朝までそばにいてやれる、それだけで良しか……
昼間は見られない肩肘張った男の優しい眼差しが見える。
部屋は月明かりが眩しいくらいだ。
「もう暫くこうしているさ」
誰に聞かせるでもなく呟いて、斎藤は愛しい者を見つめた。
すぐに顔だけでなく肌までも染まっていくだろう。
瞳は既に濡れて揺れている。
「その姿も久しぶりに見る気がするな」
「そうですか……って、えと……その姿って、どんなすがたですか……」
「その、まったりした言葉と濡れた瞳、それから火照った肌と……唇も濡れているな。まだ聞きたいか」
夢主は顔をますます赤らめて首を振った。
「安心しろ、今夜は何もせん」
「なにも……ほんとうですか……一さんがなにもしないなんて……」
「あぁ、本当だ。俺は色情狂か、俺だって穏やかに過ごしたい夜はあるさ」
「そぅですか……」
今夜はどうしてかそんな気分だ。
あまりに純真な夢主を見ていると、ただ慈しみたい気分になる。手を伸ばして包んでやりたくはあるが、それ以上は……今宵は……。
だが触れてしまえば存外抱きたくなるのかもしれない。
「ククッ」
「はじめ……さん?」
「何でもない。さぁ次を入れてやる」
空になった猪口に徳利を傾ける。
夢主は言われるがままに酒を貰い、緩んだ笑顔で小首を傾げた。
礼のつもりだ。だいぶ酔いが回ったか、目元も口元も締まりなく幸せそうに笑っている。
半開きの濡れた口に猪口を寄せ、貰ったばかりの酒を一気に流し込んだ。
「あ……はじめさん、わたしはどちらでもいいれすよ……」
「何がだ」
「だから、はじめさん、だいてくださるの……すきれす……」
「っ、阿呆ぅ、煽るな!」
折角静かな夜をと考えたんだ、心を掻き乱すなと、斎藤が珍しく色のない顔に血の色を浮かべた。
「今夜はこれだけだ」
「っん……ふぁ……ぁ、わかり……ました」
決めたことは変えんと意地を張ってか、口吸い一つだと唇を重ねる。
斎藤は夢主の口を貪るように吸い、離すと口元に移った酒の雫を拳で拭った。
「少し口に入ったな」
口内が僅かに熱い。
斎藤は穏やかな夜を選ぶか激しい欲を選ぶか心密かに迷うが、気付けば目の前でくたりと体を崩す夢主がいた。
「こいつ」
選ぶ権利は己には無かったようだ。
心地よい寝息を響かせ始めた夢主。そっと布団に移してやり、小さな額に唇を落とした。
朝までそばにいてやれる、それだけで良しか……
昼間は見られない肩肘張った男の優しい眼差しが見える。
部屋は月明かりが眩しいくらいだ。
「もう暫くこうしているさ」
誰に聞かせるでもなく呟いて、斎藤は愛しい者を見つめた。