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「確かに春画じゃねぇが。こいつぁ……幕府モンか」
「あっ」
「今、しまったって顔したな、もう遅いぜ。こいつぁ誰だ、鬼みてぇな顔してんな」
「鬼じゃありません!鬼なのはっ」
土方さんですと言いかけて口をつぐんだ。
後悔に後悔を重ねるが、引くに引けなくなってしまった。
隠しかけた絵を見せてくれと、左之助が掴んで手にしてしまった。
「鬼は誰だってぇんだ」
「いえ、その……この人は違います。鬼じゃないんです」
「ほぉ~どれどれ、新選組……山口二郎?山口さんねぇ」
「っ……」
まだ面識のない二人。
夢主は緊張で体を強張らせた。
絵に書かれた名が斎藤一でないのが救いだ。深く聞かれてはボロが出てしまう。
どぎまぎしながら絵を取り戻した。
「新選組が好きなのかぃ」
「……ご存知なんですか」
「そりゃあまぁ、幕末の有名人ぐれぇは知ってるさ」
「有名なんですか……」
「おま、知らねぇで買ったのか」
「そういうわけでは」
どうか余計な質問をしないで……
夢主は心で念じながら、左之助を見上げた。
新選組に悪意は無いようだ。明治政府を嫌っているから幕府側の人間には好意的なのか。
京で活躍して江戸に名が届いていたのだから、錦絵を持っていてもおかしくないのかもしれない。
「ふぅん、山口さんねぇ、随分とおっかねぇ顔してんな」
おっかなくないですから……
言い返したいのを我慢して小さく頷いた。
「……厄除けです。怖い顔がいいんですよ」
「ふぅん成る程ねぇ。煙草もその紙からだったな、嬢ちゃん吸いそうにねぇもんな。所でよぉ、もう帰るんだろ。飯でもどうだ」
「えっ」
「えって、もうすぐ夕飯だろう」
「今日はちょっと……ごめんなさい」
「そうかい。じゃあまた今度な、気を付けて帰れよ。元気そうで安心したぜ」
「ありがとうございます。左之助さんもお気を付けて」
お前こそと笑いながら左之助は大きく手を振り、背中の悪一文字を見せて歩いて行った。
元気が戻ったのは夫の斎藤一がそばにいてくれるから。今はとても言えない。
今夜は応えられないけれど、感じた左之助の優しさ。夢主は小さくなった悪の文字に頭を下げた。
「あっ」
「今、しまったって顔したな、もう遅いぜ。こいつぁ誰だ、鬼みてぇな顔してんな」
「鬼じゃありません!鬼なのはっ」
土方さんですと言いかけて口をつぐんだ。
後悔に後悔を重ねるが、引くに引けなくなってしまった。
隠しかけた絵を見せてくれと、左之助が掴んで手にしてしまった。
「鬼は誰だってぇんだ」
「いえ、その……この人は違います。鬼じゃないんです」
「ほぉ~どれどれ、新選組……山口二郎?山口さんねぇ」
「っ……」
まだ面識のない二人。
夢主は緊張で体を強張らせた。
絵に書かれた名が斎藤一でないのが救いだ。深く聞かれてはボロが出てしまう。
どぎまぎしながら絵を取り戻した。
「新選組が好きなのかぃ」
「……ご存知なんですか」
「そりゃあまぁ、幕末の有名人ぐれぇは知ってるさ」
「有名なんですか……」
「おま、知らねぇで買ったのか」
「そういうわけでは」
どうか余計な質問をしないで……
夢主は心で念じながら、左之助を見上げた。
新選組に悪意は無いようだ。明治政府を嫌っているから幕府側の人間には好意的なのか。
京で活躍して江戸に名が届いていたのだから、錦絵を持っていてもおかしくないのかもしれない。
「ふぅん、山口さんねぇ、随分とおっかねぇ顔してんな」
おっかなくないですから……
言い返したいのを我慢して小さく頷いた。
「……厄除けです。怖い顔がいいんですよ」
「ふぅん成る程ねぇ。煙草もその紙からだったな、嬢ちゃん吸いそうにねぇもんな。所でよぉ、もう帰るんだろ。飯でもどうだ」
「えっ」
「えって、もうすぐ夕飯だろう」
「今日はちょっと……ごめんなさい」
「そうかい。じゃあまた今度な、気を付けて帰れよ。元気そうで安心したぜ」
「ありがとうございます。左之助さんもお気を付けて」
お前こそと笑いながら左之助は大きく手を振り、背中の悪一文字を見せて歩いて行った。
元気が戻ったのは夫の斎藤一がそばにいてくれるから。今はとても言えない。
今夜は応えられないけれど、感じた左之助の優しさ。夢主は小さくなった悪の文字に頭を下げた。