44.静観
夢主名前設定
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暫くして夢主の呼吸が落ち着いて、斎藤はそっと濡れた頬を指先で拭ってやった。
これを機に確かめておきたい。
「神谷を知っているんだな」
密かに覚悟を決めて関わりを問う。
「はい、最初は総司さんの大家さんに頼まれて荷物を届けに……それから暫く経ってお会いする機会があって……」
「神谷越路郎と一緒にいたのは俺も見ている」
「そうでしたね……あれから、娘さんの薫さんとお話する機会があって、仲良くなれたんです」
神谷の娘か。
頼むと言われて頷いた約束は忘れない。
夢主は心配性で世話好きだ。話せば喜んで神谷の娘を見守るだろう。
しかし、約束したのは俺だ。責任もって目をやらねばなるまい。
それに最近になって上層部から下りてきた気になる情報がある。いくつかは神谷にも関わる話だ。
夢主が周りをうろつけば巻き添えを食う。
秘密を守りながら任務を遂行し、妻を守って戦友の娘にも目を光らせる。
いくら腕が優れようが、体は一つしかない。
状況が複雑になればなる程、全てを己の手で完全にとはいかなくなる。
……俺にもお前にも辛いが一つ断たねばならん……
斎藤は意を決すると、大きな掌で己を見上げる夢主の髪を一撫でした。
「神谷には暫く近付くな」
「ど……どうしてですか」
酷な忠告だ。
それでも斎藤は意思を曲げず、夢主を守る為の行動を貫いた。
感情的に昂る妻が落ち着くのを待っている。
「薫さんと仲良くなれたんですよ、それに落ち込んでるのに、お父さんが戻らなくて淋しいに決まっています、そばに居てあげたいです!」
無言の斎藤。
こんな時、言葉を発して欲しい。
夢主は斎藤の寝巻をきつく掴んだ。
「どうして……」
「俺の任務の為だ」
「それって……薫さんが危険な目に合うってことですか」
「しっかり目は光らせている。大きな任務が絡んでいるんだ、頼むから余計な事はしてくれるな」
「一さん……」
今までとは意味合いが違う、デカい任務を背負っている。
妻とは言え詳細は告げられない。言えないが、俺に関わる事件なら知っているはずだ。
関わるなとは、告げる側にも覚悟を要する忠告だった。
夢主を傷付けているかもしれない。
目の前の悲しい顔を見つめながら、どうにか治まってくれと小さな頭に手を置いた。
宥めるように優しく触れながら、口から出る言葉は厳しかった。
「それに親が戻らぬ娘に会えるのか、夫が戻ったお前が」
「それは……」
「向こうの気持ちも考えてやるんだな」
「薫さんの……気持ち……」
「互いに傷付くぞ」
「……お互いに……」
それから言葉を失ってしまった夢主。
無言のまま就寝の時を迎えた。
これを機に確かめておきたい。
「神谷を知っているんだな」
密かに覚悟を決めて関わりを問う。
「はい、最初は総司さんの大家さんに頼まれて荷物を届けに……それから暫く経ってお会いする機会があって……」
「神谷越路郎と一緒にいたのは俺も見ている」
「そうでしたね……あれから、娘さんの薫さんとお話する機会があって、仲良くなれたんです」
神谷の娘か。
頼むと言われて頷いた約束は忘れない。
夢主は心配性で世話好きだ。話せば喜んで神谷の娘を見守るだろう。
しかし、約束したのは俺だ。責任もって目をやらねばなるまい。
それに最近になって上層部から下りてきた気になる情報がある。いくつかは神谷にも関わる話だ。
夢主が周りをうろつけば巻き添えを食う。
秘密を守りながら任務を遂行し、妻を守って戦友の娘にも目を光らせる。
いくら腕が優れようが、体は一つしかない。
状況が複雑になればなる程、全てを己の手で完全にとはいかなくなる。
……俺にもお前にも辛いが一つ断たねばならん……
斎藤は意を決すると、大きな掌で己を見上げる夢主の髪を一撫でした。
「神谷には暫く近付くな」
「ど……どうしてですか」
酷な忠告だ。
それでも斎藤は意思を曲げず、夢主を守る為の行動を貫いた。
感情的に昂る妻が落ち着くのを待っている。
「薫さんと仲良くなれたんですよ、それに落ち込んでるのに、お父さんが戻らなくて淋しいに決まっています、そばに居てあげたいです!」
無言の斎藤。
こんな時、言葉を発して欲しい。
夢主は斎藤の寝巻をきつく掴んだ。
「どうして……」
「俺の任務の為だ」
「それって……薫さんが危険な目に合うってことですか」
「しっかり目は光らせている。大きな任務が絡んでいるんだ、頼むから余計な事はしてくれるな」
「一さん……」
今までとは意味合いが違う、デカい任務を背負っている。
妻とは言え詳細は告げられない。言えないが、俺に関わる事件なら知っているはずだ。
関わるなとは、告げる側にも覚悟を要する忠告だった。
夢主を傷付けているかもしれない。
目の前の悲しい顔を見つめながら、どうにか治まってくれと小さな頭に手を置いた。
宥めるように優しく触れながら、口から出る言葉は厳しかった。
「それに親が戻らぬ娘に会えるのか、夫が戻ったお前が」
「それは……」
「向こうの気持ちも考えてやるんだな」
「薫さんの……気持ち……」
「互いに傷付くぞ」
「……お互いに……」
それから言葉を失ってしまった夢主。
無言のまま就寝の時を迎えた。