43.錦絵
夢主名前設定
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翌晩、斎藤は自分の発言が実現された現場を目撃した。
帰り道に覗いた沖田の部屋に土方の錦絵が貼られていた。随分やる事が早い。
沖田は夜はほとんど月明かりだけで過ごす為、薄明かりの中で土方が凄んで見える。
兵は拙速を尊ぶとはこのことなるべし、土方に言われた気がして、夢主は武士ではないと苦笑いで視線を返した。
「よく貼る気になれたな」
「あ、気付きましたか、土方さんの絵。夢主ちゃんがくれたんですよ」
道場に貼ってはどうかと譲られたが、人の出入りがある場所は避け、居室に飾った。
外から覗くと、壁に貼られた土方が部屋の中を見回しているようだ。
「あんまり似てませんけどいいですよね、悪い物が逃げて行く気がします」
「逆に引き寄せなきゃいいがな、類は友を呼ぶってやつだ。鬼が引き寄せられ兼ねん」
「あははっ、言いますねぇ!夢枕に土方さんが立っても知りませんよ」
「そいつは御免だな」
ま、悪くはないが。
壁の土方に睨まれた気がして、斎藤はククッと笑った。
「そういえば斎藤さん、結局緋村さん……抜刀斎はいたんですか、薩摩の地に」
「いや、見なかった。噂はあったらしいが本当にいたのかどうか、少なくとも戦の渦中にはいなかった」
「そうでしたか。あの人はどこで何をしているのやら」
「さぁな、見当もつかん。さっさと見つけて現実に引きずり出してやる。お前も見かけたら教えろよ」
「えぇ、気が向きましたら」
「ちっ使えんな」
東京へ戻った今も緋村抜刀斎の捜索は念頭に置いている。他の任務の傍ら、捜索は続けていた。
各地に放たれた密偵から情報が集まるが、緋村抜刀斎が関東に入ったと聞かされた。近いうちに姿を捉えられるかもしれない。
世の中は相変わらず混乱しているというのに、全国を逃げ回っていた人斬り。
人を斬らぬと言わせるものか。抜刀斎、必ず現実に目を向けさせてやる。
斎藤は再会の時を待ち望んでいた。
「それはそうとご存知ですか、最近ある私兵団が吉原で顔を利かせているんですよ」
「私兵団だと」
「私兵団と言いますか軍属と言いますか、どこかの大網元のご子息が作った兵団みたいで、西南戦争で手柄を上げて随分と羽振りがいいみたいです」
「それがどうかしたか」
「いえ、あまり行儀が良くないみたいで、そのうち斎藤さんの手を煩わせる存在になるかもしれないと思いまして。僕も先日妓楼を追い出されちゃいましてね」
「フッ、ざまぁないな」
「笑わないでくださいよ、全妓楼制覇だとそれは凄い騒ぎでした。煩くて風流に浸るなんてとっても……嫌になって帰ってきちゃったんです」
「ほぉ。ま、記憶には留めておくさ」
吉原に一団を送り込んだ大網元の倅とは一ヶ瀬鮫男。
後に華焔を巻き込んで志々雄と一騒動起こす人物だと二人は知りもしない。
ましてや吉原に志々雄がいたことも、志々雄が沖田の姿を見つけたことも全く気付いていなかった。
帰り道に覗いた沖田の部屋に土方の錦絵が貼られていた。随分やる事が早い。
沖田は夜はほとんど月明かりだけで過ごす為、薄明かりの中で土方が凄んで見える。
兵は拙速を尊ぶとはこのことなるべし、土方に言われた気がして、夢主は武士ではないと苦笑いで視線を返した。
「よく貼る気になれたな」
「あ、気付きましたか、土方さんの絵。夢主ちゃんがくれたんですよ」
道場に貼ってはどうかと譲られたが、人の出入りがある場所は避け、居室に飾った。
外から覗くと、壁に貼られた土方が部屋の中を見回しているようだ。
「あんまり似てませんけどいいですよね、悪い物が逃げて行く気がします」
「逆に引き寄せなきゃいいがな、類は友を呼ぶってやつだ。鬼が引き寄せられ兼ねん」
「あははっ、言いますねぇ!夢枕に土方さんが立っても知りませんよ」
「そいつは御免だな」
ま、悪くはないが。
壁の土方に睨まれた気がして、斎藤はククッと笑った。
「そういえば斎藤さん、結局緋村さん……抜刀斎はいたんですか、薩摩の地に」
「いや、見なかった。噂はあったらしいが本当にいたのかどうか、少なくとも戦の渦中にはいなかった」
「そうでしたか。あの人はどこで何をしているのやら」
「さぁな、見当もつかん。さっさと見つけて現実に引きずり出してやる。お前も見かけたら教えろよ」
「えぇ、気が向きましたら」
「ちっ使えんな」
東京へ戻った今も緋村抜刀斎の捜索は念頭に置いている。他の任務の傍ら、捜索は続けていた。
各地に放たれた密偵から情報が集まるが、緋村抜刀斎が関東に入ったと聞かされた。近いうちに姿を捉えられるかもしれない。
世の中は相変わらず混乱しているというのに、全国を逃げ回っていた人斬り。
人を斬らぬと言わせるものか。抜刀斎、必ず現実に目を向けさせてやる。
斎藤は再会の時を待ち望んでいた。
「それはそうとご存知ですか、最近ある私兵団が吉原で顔を利かせているんですよ」
「私兵団だと」
「私兵団と言いますか軍属と言いますか、どこかの大網元のご子息が作った兵団みたいで、西南戦争で手柄を上げて随分と羽振りがいいみたいです」
「それがどうかしたか」
「いえ、あまり行儀が良くないみたいで、そのうち斎藤さんの手を煩わせる存在になるかもしれないと思いまして。僕も先日妓楼を追い出されちゃいましてね」
「フッ、ざまぁないな」
「笑わないでくださいよ、全妓楼制覇だとそれは凄い騒ぎでした。煩くて風流に浸るなんてとっても……嫌になって帰ってきちゃったんです」
「ほぉ。ま、記憶には留めておくさ」
吉原に一団を送り込んだ大網元の倅とは一ヶ瀬鮫男。
後に華焔を巻き込んで志々雄と一騒動起こす人物だと二人は知りもしない。
ましてや吉原に志々雄がいたことも、志々雄が沖田の姿を見つけたことも全く気付いていなかった。