4.上野の山
夢主名前設定
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「あれっ、夢主ちゃん……その瓶は……昨日のと違いますね」
「おはようございます、総司さん」
「おはよう……」
ぼうっとした顔でとぼとぼと勝手に屋敷に入って来た夢主の姿に、沖田は首を傾げた。
昨夜の落ち込みの続きとは思えないが、また何か起きたのか。
「んんっ?どうなっているのかなぁ……全く厄介な夫婦だなぁ、ははっ」
二人のいざこざなのか。座敷に腰を下ろした夢主に、沖田はとりあえず熱いお茶を届けた。
そこで事情を訊ね、出てきた言葉に大きな声で問い返した。
「永倉さんに会ったの!それで、永倉さんは今どこにっ!」
「それが……聞いてません。ただ……北海道へ行かれるそうです」
「北海道へ……弔いの旅、ですか」
「いいえ、松前に帰られるそうです。……そこで婿養子に入るそうですよ。このご時世、悪いお話ではありませんよね……」
「そうだったんですか……永倉さんが婿養子……」
沖田も何か考え込むように腕を組み、暫く沈黙が続いた。
「確かに永倉さんが婿養子とは想像つきませんが、侍の時代が終わったのならば僕達が食べて行くのはなかなかに厳しいですからね。僕は永倉さんの選んだ道はいいと思いますよ、あの人の生きる道ですし」
「総司さん……」
「あはははっ、その反応だと永倉さん、随分と自分の身の上を気にしていたんですね!会いに来ればいいのに。僕がそんな不安吹き飛ばしてあげますよ、あはははっ」
笑いながら沖田は刀を握る振りを見せた。
道場で本気で打ち合えば不安も後ろめたさも消えて無くなると言いたいのだろう。
「そうですね、その総司さんの言葉と笑顔を永倉さんに伝えてあげたいです」
「そうですよ、僕はいつだって笑っていますからね!それに祝言にだって顔を出してくれればいいのにね」
「あっ、その祝言なんですけど、本当に何もかもお任せしちゃっていいんでしょうか。色々と入用なんじゃないかと……」
「ふふっ、そういう話は僕と斎藤さんでしておきますから、夢主ちゃんは気にしないで。それに斎藤さんや夢主ちゃんをお祝いしたいって人、意外といるんですよ」
「そうなんですか……心当たりがありませんが……」
「ふふん、そうなんです。詳しくは内緒です」
「内緒……」
「うん。しかしそれでお祝いのお酒かぁ。昨日のお酒はどうしたんですか」
「昨日のは……さっき一さんと上野の山へ行って来たんです」
「上野の山へ」
「はい。桜を見に行ったんですけど、一さんは彰義隊のみなさんを弔いたかったみたいで……」
「そうか、それでお酒を……」
「総司さん?」
「いえ、何でもありませんよ。でも良かったですね、桜は綺麗でしたか」
「はい!まだまだお花が残ってて、散る桜も綺麗で、道の上にも花びらがたくさん……本当に素敵でした」
「そう、良かったじゃない。斎藤さんはそのまま仕事かぁ」
「そうなんです。花見客の中に喧嘩を始めちゃった人がいて……そのまま行っちゃいました」
淋しげに笑う夢主に、沖田はなるほどと合点が行った。
斎藤と思うように時間が取れず、別れた後で思わぬ人物に出会い、更に遠い別れを告げられた。
だからあれほど淋しげにやって来たのだ。
「なるほどねぇ」
「総司さん?」
「ううん、なんでもないよ。この後、お昼一緒に食べていきなよ。まだ早いから暫くのんびりするといいですよ」
「ありがとうございます。お昼、私お作りしようと思ったんですけど、お勝手使ってもいいですか?」
「もちろん大歓迎ですけど、昼の分ならもう事足りますよ。朝まとめて作っちゃいましたから」
「総司さん凄いですね、一人で何でも出来ちゃう……本当に意外です」
「あはははっ!それはどうも!」
夢主に生活の術を教えたのは自分なのに、そんなに頼りなく見えるのかと、沖田は後頭を掻いて大きく笑った。
昼を意識した二人の鼻に、美味しい匂いが届いた。
「おはようございます、総司さん」
「おはよう……」
ぼうっとした顔でとぼとぼと勝手に屋敷に入って来た夢主の姿に、沖田は首を傾げた。
昨夜の落ち込みの続きとは思えないが、また何か起きたのか。
「んんっ?どうなっているのかなぁ……全く厄介な夫婦だなぁ、ははっ」
二人のいざこざなのか。座敷に腰を下ろした夢主に、沖田はとりあえず熱いお茶を届けた。
そこで事情を訊ね、出てきた言葉に大きな声で問い返した。
「永倉さんに会ったの!それで、永倉さんは今どこにっ!」
「それが……聞いてません。ただ……北海道へ行かれるそうです」
「北海道へ……弔いの旅、ですか」
「いいえ、松前に帰られるそうです。……そこで婿養子に入るそうですよ。このご時世、悪いお話ではありませんよね……」
「そうだったんですか……永倉さんが婿養子……」
沖田も何か考え込むように腕を組み、暫く沈黙が続いた。
「確かに永倉さんが婿養子とは想像つきませんが、侍の時代が終わったのならば僕達が食べて行くのはなかなかに厳しいですからね。僕は永倉さんの選んだ道はいいと思いますよ、あの人の生きる道ですし」
「総司さん……」
「あはははっ、その反応だと永倉さん、随分と自分の身の上を気にしていたんですね!会いに来ればいいのに。僕がそんな不安吹き飛ばしてあげますよ、あはははっ」
笑いながら沖田は刀を握る振りを見せた。
道場で本気で打ち合えば不安も後ろめたさも消えて無くなると言いたいのだろう。
「そうですね、その総司さんの言葉と笑顔を永倉さんに伝えてあげたいです」
「そうですよ、僕はいつだって笑っていますからね!それに祝言にだって顔を出してくれればいいのにね」
「あっ、その祝言なんですけど、本当に何もかもお任せしちゃっていいんでしょうか。色々と入用なんじゃないかと……」
「ふふっ、そういう話は僕と斎藤さんでしておきますから、夢主ちゃんは気にしないで。それに斎藤さんや夢主ちゃんをお祝いしたいって人、意外といるんですよ」
「そうなんですか……心当たりがありませんが……」
「ふふん、そうなんです。詳しくは内緒です」
「内緒……」
「うん。しかしそれでお祝いのお酒かぁ。昨日のお酒はどうしたんですか」
「昨日のは……さっき一さんと上野の山へ行って来たんです」
「上野の山へ」
「はい。桜を見に行ったんですけど、一さんは彰義隊のみなさんを弔いたかったみたいで……」
「そうか、それでお酒を……」
「総司さん?」
「いえ、何でもありませんよ。でも良かったですね、桜は綺麗でしたか」
「はい!まだまだお花が残ってて、散る桜も綺麗で、道の上にも花びらがたくさん……本当に素敵でした」
「そう、良かったじゃない。斎藤さんはそのまま仕事かぁ」
「そうなんです。花見客の中に喧嘩を始めちゃった人がいて……そのまま行っちゃいました」
淋しげに笑う夢主に、沖田はなるほどと合点が行った。
斎藤と思うように時間が取れず、別れた後で思わぬ人物に出会い、更に遠い別れを告げられた。
だからあれほど淋しげにやって来たのだ。
「なるほどねぇ」
「総司さん?」
「ううん、なんでもないよ。この後、お昼一緒に食べていきなよ。まだ早いから暫くのんびりするといいですよ」
「ありがとうございます。お昼、私お作りしようと思ったんですけど、お勝手使ってもいいですか?」
「もちろん大歓迎ですけど、昼の分ならもう事足りますよ。朝まとめて作っちゃいましたから」
「総司さん凄いですね、一人で何でも出来ちゃう……本当に意外です」
「あはははっ!それはどうも!」
夢主に生活の術を教えたのは自分なのに、そんなに頼りなく見えるのかと、沖田は後頭を掻いて大きく笑った。
昼を意識した二人の鼻に、美味しい匂いが届いた。