40.相楽左之助
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「とにかく、お前の大事な男によく似てるってのはぁ分かったぜ。会いたけりゃいつでも会ってやるからよ、もう泣くんじゃねぇよ」
「左之助さん……」
「な、分かったな」
「はぃ……ありがとうございます……」
ちょっと気性が荒くて喧嘩っ早いけど情け深い人。実際に言葉を交わし想像以上のしっかり者だと感じた。
少しひねくれているのは辛い思いをした分。熱くて優しい男、それが左之助なのだ。
……なんかお兄さんみたい……お兄さんぽいところも……似てるな……
「左之助さんはずっとこの町にいるんですか」
「俺かぁ、そうだな……戊辰戦争が終わってからはこの町にいるなぁ」
左之助は自分の中で時が止まったあの日を短く思い出した。
戊辰戦争、まだまだガキだった自分は皆に命を救われた。
その皆は汚名を着せられ処刑されてしまった。悲しみと怒りは決して忘れない。
「いつか見返してやりてぇもんだ」
「左之助さん?」
「いやぁ、なんでもねぇぜ。勘当も同然の身だからよ、気楽な毎日さ」
「ご家族いらっしゃるんですか……」
「もう縁はねぇさ」
「そうですか……」
赤報隊へ入隊すると家を飛び出し、幼い妹を泣かせた。
親父は怒っているだろう。母は悲しみに暮れているのか……左之助は小さく頭を振った。
今更どの面下げて帰れるってんだ。自分がいた隊は賊軍扱い、戻っても迷惑を掛けるだけだ。
「嬢ちゃんよぉ、明治政府をどう思う」
「えっ……」
笑っていた目が凄んだ目に変わっている。
深い闇を抱える、黒い目だ。怖い顔で空になった銚子を大きく振っている。
どれだけ振っても中味は出てこないというのに、異様な光景だ。
「明治……政府ですか……」
「あんたの帰ってこない旦那さんてのは、もしかして新政府軍とやらじゃねぇだろうな」
「いえ……その頃は……追われる身でした。いわゆる賊軍って呼ばれた立場で……」
嘘ではない。
今は明治政府の犬と罵る者もいるかもしれない、そんな立場にいるがあの頃は違った。
今も政府の為ではなく、人々を守る己の正義の為に動いている。
でも、左之助に伝えても今はきっと分かってもらえない。緋村剣心と出会い、目が覚めるまでは。
全ては打ち明けられない。
夢主は俯いてしまった。
「お前も随分辛い思いしてんだな……安心しろ、あんな腐り切った政府なんざ今に転覆するぜ」
「そんな、また争いが起きるのは嫌です。悪政で人々が困るのも……嫌ですけど……」
「……そうかい」
若い彼が怒りに身を任せたくなるのも仕方がない。けれど事件を起こして欲しくはない。
これ以上世の中が乱れるのは御免、左之助を刺激しない本音だけを繋げた。
「大きな声では言えませんが、明治政府が表沙汰にせず酷い事をしてきたのは知っています。利用して捨てる……味方を裏切る……沢山行われたって……」
「その通りだ!」
「あのっ……」
「すまねぇ、熱くなっちまった」
左之助が突然激高し机を叩いた。
怯える夢主を見てすぐ我に返るが、彼の中には確かに怒りが潜んでいた。
「酒も尽きたしよ、送るぜ。悪かったな……礼のつもりが怖がらせちまって」
「いえ……あの、お話できて嬉しかったです」
素直に自分との時間を喜ぶ姿に、左之助の緊張も消えていった。
そうかいと笑って勘定を置き、二人は店を出た。
外は日が暮れかけている。
女一人で歩くには向かない時間。
二人は約束通り帰り道を共にした。
「左之助さん……」
「な、分かったな」
「はぃ……ありがとうございます……」
ちょっと気性が荒くて喧嘩っ早いけど情け深い人。実際に言葉を交わし想像以上のしっかり者だと感じた。
少しひねくれているのは辛い思いをした分。熱くて優しい男、それが左之助なのだ。
……なんかお兄さんみたい……お兄さんぽいところも……似てるな……
「左之助さんはずっとこの町にいるんですか」
「俺かぁ、そうだな……戊辰戦争が終わってからはこの町にいるなぁ」
左之助は自分の中で時が止まったあの日を短く思い出した。
戊辰戦争、まだまだガキだった自分は皆に命を救われた。
その皆は汚名を着せられ処刑されてしまった。悲しみと怒りは決して忘れない。
「いつか見返してやりてぇもんだ」
「左之助さん?」
「いやぁ、なんでもねぇぜ。勘当も同然の身だからよ、気楽な毎日さ」
「ご家族いらっしゃるんですか……」
「もう縁はねぇさ」
「そうですか……」
赤報隊へ入隊すると家を飛び出し、幼い妹を泣かせた。
親父は怒っているだろう。母は悲しみに暮れているのか……左之助は小さく頭を振った。
今更どの面下げて帰れるってんだ。自分がいた隊は賊軍扱い、戻っても迷惑を掛けるだけだ。
「嬢ちゃんよぉ、明治政府をどう思う」
「えっ……」
笑っていた目が凄んだ目に変わっている。
深い闇を抱える、黒い目だ。怖い顔で空になった銚子を大きく振っている。
どれだけ振っても中味は出てこないというのに、異様な光景だ。
「明治……政府ですか……」
「あんたの帰ってこない旦那さんてのは、もしかして新政府軍とやらじゃねぇだろうな」
「いえ……その頃は……追われる身でした。いわゆる賊軍って呼ばれた立場で……」
嘘ではない。
今は明治政府の犬と罵る者もいるかもしれない、そんな立場にいるがあの頃は違った。
今も政府の為ではなく、人々を守る己の正義の為に動いている。
でも、左之助に伝えても今はきっと分かってもらえない。緋村剣心と出会い、目が覚めるまでは。
全ては打ち明けられない。
夢主は俯いてしまった。
「お前も随分辛い思いしてんだな……安心しろ、あんな腐り切った政府なんざ今に転覆するぜ」
「そんな、また争いが起きるのは嫌です。悪政で人々が困るのも……嫌ですけど……」
「……そうかい」
若い彼が怒りに身を任せたくなるのも仕方がない。けれど事件を起こして欲しくはない。
これ以上世の中が乱れるのは御免、左之助を刺激しない本音だけを繋げた。
「大きな声では言えませんが、明治政府が表沙汰にせず酷い事をしてきたのは知っています。利用して捨てる……味方を裏切る……沢山行われたって……」
「その通りだ!」
「あのっ……」
「すまねぇ、熱くなっちまった」
左之助が突然激高し机を叩いた。
怯える夢主を見てすぐ我に返るが、彼の中には確かに怒りが潜んでいた。
「酒も尽きたしよ、送るぜ。悪かったな……礼のつもりが怖がらせちまって」
「いえ……あの、お話できて嬉しかったです」
素直に自分との時間を喜ぶ姿に、左之助の緊張も消えていった。
そうかいと笑って勘定を置き、二人は店を出た。
外は日が暮れかけている。
女一人で歩くには向かない時間。
二人は約束通り帰り道を共にした。