40.相楽左之助
夢主名前設定
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席に着くと左之助は適当に酒と飯を注文した。
まだ晩飯には早い時間。
店は空いており、止める間もなく酒の注文が通る。夢主は店主に聞こえないよう小声で訴えた。
「あの私、お酒は飲めないんです」
「そうなのかっ!先に言ってくれよ二人分頼んじまったぜ!」
「すみません……舐める程度でしたらいけるんですけど……帰りも不安ですし……」
「帰りは安心しろよ、ちゃんと送ってやるぜ。遅いと家の連中も心配するだろ」
「いぇ……今はその……主人は家を出てて……暫くは戻れないんです」
「おまっ、結婚してんのか!」
「はぃ……」
「なんだよ!それこそ早く言ってくれよ!駄目じゃねぇか、男と酒盛りなんざ」
「だってお礼だって言うから……それに今夜は戻らないんです。明日も、明後日も……」
「どうしたよ、三行半か?」
「違います!!お勤めです!」
「んんっ、警察に捕まってんのか。お前ぇも苦労してんな」
「それも違います……とにかく暫くは戻らないので、今夜も……あっ!だからって男の人にほいほいついて行く訳じゃありませんからね!貴方は信頼出来るって感じたから」
誘いを受けたのは相楽左之助が相手だから、そんな話は告げられない。
貴方だからと言われた本人は嬉しそうだ。
「そいつぁ嬉しいねぇ。だが気を付けな嬢ちゃん、人妻だろうと男には気を付けるんだな。綺麗な嫁さん取り合って戦した時代もあるってぇ話だぜ」
「そうなんですか」
「あぁ、あんたは別嬪さんだからよ、気を付けな。ま、俺は例外にして大丈夫だがな」
「ふふっ、面白いですね……えっと……」
一生懸命励ましてくれる姿、温かい声に大きな手。何もかもがそっくりだ。
若かりし頃の原田左之助、そう錯覚してしまう。
「名前か、俺は相楽左之助だ」
「相楽さん……」
「相楽ってのはちょいと照れ臭ぇな。左之助でいいぜ」
「じゃあ……左之助さんで。私は……夢主と申します」
「夢主か、今の時代、苗字もあるだろぅ」
「その……出来ればあまり……」
「そうかい、俺には言えねぇのか。そいつぁ淋しいじゃねぇか」
「えっと……井上、井上夢主と申します」
一さん、総司さん、ごめんなさい。
心で謝り、一番無難な嘘をついた。
いつか明るみに出るであろう嘘だ。けれど今は左之助に藤田の名を告げられない。
「井上夢主、いい名前じゃねぇか!宜しくな、夢主」
苗字要らないじゃない……初対面に近い二人だが下の名前で呼ばれ、少しだけ不満を込めて睨みつけるが、運ばれてきた料理と酒でその不満は気付かれずに消えた。
「わぁ美味しそう!」
「豪華にとはいかねぇがココの飯は美味いぜ、さぁ食ってくれ」
「ありがとうございます!頂きます!」
思えば常に奢ってくれと誰かにたかっていた男に食事を奢られるのは、非常に貴重な体験だ。
夢主はありがたみを噛み締めて食事を味わった。
「酒は、いかねぇのか」
「そうですね……ほんの一口だけなら……あの、酔わせないでくださいね」
「っ酔わせるかよ、俺ぁ卑怯な男じゃねぇぜ!」
些細な一言に異常に反応して、左之助の顔が真っ赤に変わった。
女に対して節度を持っている。下衆な野郎と一緒にするなと怒り、男女の関係を感じてしまった照れで顔を染めたのだ。
「すみません、外であまり呑まないので……不安になって……」
「いやぁその、怒鳴っちまってすまねぇ、悪気はないんだ。ただ信じてくれよ、ちゃんと送り届けて俺は自分の寝床に帰るからよ」
「はぃ……ありがとうございます……」
元気に笑い合っていた二人に気まずい空気が流れてしまった。
夢主も申し訳なさを感じ、くっと酒を口に含んだ。
「美味しいです……左之助さんもどうぞ」
「おぉ、すまねぇな」
酌をされて満更でもない顔をしている。
一気に飲み干し、続けて次の酌を受けた。
「ふふっ、素敵な飲みっぷりですね」
「お前は少し呑んだだけで顔が真っ赤だな」
「真っ赤ですか?」
「あぁ、綺麗に色づいてるぜ」
「恥ずかしいですね、ふふっ」
左之助は手元の銚子を持ち、手酌を始めた。あっという間に空になり、夢主のそばにあった銚子も空にしてしまう。
「お代わりだ!」と追加の酒を頼んでは呑んでいる。
夢主は猪口に残った酒を僅かずつ舐めていた。
まだ晩飯には早い時間。
店は空いており、止める間もなく酒の注文が通る。夢主は店主に聞こえないよう小声で訴えた。
「あの私、お酒は飲めないんです」
「そうなのかっ!先に言ってくれよ二人分頼んじまったぜ!」
「すみません……舐める程度でしたらいけるんですけど……帰りも不安ですし……」
「帰りは安心しろよ、ちゃんと送ってやるぜ。遅いと家の連中も心配するだろ」
「いぇ……今はその……主人は家を出てて……暫くは戻れないんです」
「おまっ、結婚してんのか!」
「はぃ……」
「なんだよ!それこそ早く言ってくれよ!駄目じゃねぇか、男と酒盛りなんざ」
「だってお礼だって言うから……それに今夜は戻らないんです。明日も、明後日も……」
「どうしたよ、三行半か?」
「違います!!お勤めです!」
「んんっ、警察に捕まってんのか。お前ぇも苦労してんな」
「それも違います……とにかく暫くは戻らないので、今夜も……あっ!だからって男の人にほいほいついて行く訳じゃありませんからね!貴方は信頼出来るって感じたから」
誘いを受けたのは相楽左之助が相手だから、そんな話は告げられない。
貴方だからと言われた本人は嬉しそうだ。
「そいつぁ嬉しいねぇ。だが気を付けな嬢ちゃん、人妻だろうと男には気を付けるんだな。綺麗な嫁さん取り合って戦した時代もあるってぇ話だぜ」
「そうなんですか」
「あぁ、あんたは別嬪さんだからよ、気を付けな。ま、俺は例外にして大丈夫だがな」
「ふふっ、面白いですね……えっと……」
一生懸命励ましてくれる姿、温かい声に大きな手。何もかもがそっくりだ。
若かりし頃の原田左之助、そう錯覚してしまう。
「名前か、俺は相楽左之助だ」
「相楽さん……」
「相楽ってのはちょいと照れ臭ぇな。左之助でいいぜ」
「じゃあ……左之助さんで。私は……夢主と申します」
「夢主か、今の時代、苗字もあるだろぅ」
「その……出来ればあまり……」
「そうかい、俺には言えねぇのか。そいつぁ淋しいじゃねぇか」
「えっと……井上、井上夢主と申します」
一さん、総司さん、ごめんなさい。
心で謝り、一番無難な嘘をついた。
いつか明るみに出るであろう嘘だ。けれど今は左之助に藤田の名を告げられない。
「井上夢主、いい名前じゃねぇか!宜しくな、夢主」
苗字要らないじゃない……初対面に近い二人だが下の名前で呼ばれ、少しだけ不満を込めて睨みつけるが、運ばれてきた料理と酒でその不満は気付かれずに消えた。
「わぁ美味しそう!」
「豪華にとはいかねぇがココの飯は美味いぜ、さぁ食ってくれ」
「ありがとうございます!頂きます!」
思えば常に奢ってくれと誰かにたかっていた男に食事を奢られるのは、非常に貴重な体験だ。
夢主はありがたみを噛み締めて食事を味わった。
「酒は、いかねぇのか」
「そうですね……ほんの一口だけなら……あの、酔わせないでくださいね」
「っ酔わせるかよ、俺ぁ卑怯な男じゃねぇぜ!」
些細な一言に異常に反応して、左之助の顔が真っ赤に変わった。
女に対して節度を持っている。下衆な野郎と一緒にするなと怒り、男女の関係を感じてしまった照れで顔を染めたのだ。
「すみません、外であまり呑まないので……不安になって……」
「いやぁその、怒鳴っちまってすまねぇ、悪気はないんだ。ただ信じてくれよ、ちゃんと送り届けて俺は自分の寝床に帰るからよ」
「はぃ……ありがとうございます……」
元気に笑い合っていた二人に気まずい空気が流れてしまった。
夢主も申し訳なさを感じ、くっと酒を口に含んだ。
「美味しいです……左之助さんもどうぞ」
「おぉ、すまねぇな」
酌をされて満更でもない顔をしている。
一気に飲み干し、続けて次の酌を受けた。
「ふふっ、素敵な飲みっぷりですね」
「お前は少し呑んだだけで顔が真っ赤だな」
「真っ赤ですか?」
「あぁ、綺麗に色づいてるぜ」
「恥ずかしいですね、ふふっ」
左之助は手元の銚子を持ち、手酌を始めた。あっという間に空になり、夢主のそばにあった銚子も空にしてしまう。
「お代わりだ!」と追加の酒を頼んでは呑んでいる。
夢主は猪口に残った酒を僅かずつ舐めていた。