40.相楽左之助
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西南戦争へ呼び出され斎藤がいない日がやって来て、夢主は毎日のように新聞を買い求めた。
買った新聞を沖田の前で開くのが最近の日課。即時とはいかないが、九州の戦況が新聞を通して知れるのだ。
「無い……今日も一さんの記事はありません」
「毎日毎日、夢主ちゃんも一途ですね。新聞に載らないのはまだ戦場にいないか、無事だという証拠。まぁ新聞に載るほどの活躍が無ければ……」
縁側で新聞に顔を近づけていた夢主が、仕込み刀で素振りする沖田を睨みつけた。
機嫌を損ねたが、それだけの元気があるのは話し相手になってくれる沖田の存在が大きい。
「あははっ、すみません。そんなに斎藤さんが心配ですか。あの人は殺しても死にませんよ」
「総司さん!」
「またまたすみません、冗談ですよ。でもあの人の強さは突出していますでしょう」
「そうだといいんですけど……」
誰よりも斎藤の腕を知る剣客の言葉に、もごもご言い返しながら読み終えた新聞を畳んだ。
折角買った新聞をすぐに燃やしてはもったいない。この後、赤べこにでも持っていこうか。
夢主が立ち上がろうとすると、沖田は素振りを止めた。
「私、赤べこのお手伝いがありますので……」
「僕もこの後用事があるので送りますよ。戸締りしてきますね」
「あ……ありがとうございます。お願いします」
一人で不安を感じる時間が少しでも減るように、小さな心遣いがとても温かい。
沖田に見送られてやって来た赤べこでの忙しい時間は、元気を蓄える時間だ。
妙の笑顔と威勢のいい挨拶。客との楽しいやり取りが耳に届き、夢主も常に笑っていた。
「ほなまたね、今日もありがとう!」
昼の書き入れ時を過ぎて、夢主は店を後にした。
夜は一人の晩ご飯だから早めに帰って支度をしても良いし、外で食べても良い。
斎藤が気に入っている蕎麦屋に一人で行くのも面白いかもしれない。
晩ご飯を考えながら歩くうち、いつもの橋へ辿り着いた。
先に橋を渡る男がいる。
巨大なものを肩に担ぎ、ご機嫌に大きく揺れながら歩いている。
フンフンと鼻歌まで響かせていた。
「あれ、あの後姿……っていうかあの肩の物は……」
肩にあるのは紛れもない、斬馬刀だ。
斬馬刀を荒っぽく包む布が揺れ、隠れていた悪の一文字が見えた。間違いない。夢主は相楽左之助を見つけた。
どんどん橋を渡る左之助だが、ぽとりと小さなものを落とした。財布だ。
本人も大きな斬馬刀に意識が行っているのか、足元の小物に気付かず進んでいく。
「えっ、嘘、気付かないで行っちゃう……」
拾っても警察に届けられない。左之助は警察を嫌っている。夢主は慌てて財布を拾った。
重たい財布、こんなに重いのに気付かないなんて……両手で重みを確かめるが、遠ざかっていく左之助に気付き慌てて呼び止めた。
買った新聞を沖田の前で開くのが最近の日課。即時とはいかないが、九州の戦況が新聞を通して知れるのだ。
「無い……今日も一さんの記事はありません」
「毎日毎日、夢主ちゃんも一途ですね。新聞に載らないのはまだ戦場にいないか、無事だという証拠。まぁ新聞に載るほどの活躍が無ければ……」
縁側で新聞に顔を近づけていた夢主が、仕込み刀で素振りする沖田を睨みつけた。
機嫌を損ねたが、それだけの元気があるのは話し相手になってくれる沖田の存在が大きい。
「あははっ、すみません。そんなに斎藤さんが心配ですか。あの人は殺しても死にませんよ」
「総司さん!」
「またまたすみません、冗談ですよ。でもあの人の強さは突出していますでしょう」
「そうだといいんですけど……」
誰よりも斎藤の腕を知る剣客の言葉に、もごもご言い返しながら読み終えた新聞を畳んだ。
折角買った新聞をすぐに燃やしてはもったいない。この後、赤べこにでも持っていこうか。
夢主が立ち上がろうとすると、沖田は素振りを止めた。
「私、赤べこのお手伝いがありますので……」
「僕もこの後用事があるので送りますよ。戸締りしてきますね」
「あ……ありがとうございます。お願いします」
一人で不安を感じる時間が少しでも減るように、小さな心遣いがとても温かい。
沖田に見送られてやって来た赤べこでの忙しい時間は、元気を蓄える時間だ。
妙の笑顔と威勢のいい挨拶。客との楽しいやり取りが耳に届き、夢主も常に笑っていた。
「ほなまたね、今日もありがとう!」
昼の書き入れ時を過ぎて、夢主は店を後にした。
夜は一人の晩ご飯だから早めに帰って支度をしても良いし、外で食べても良い。
斎藤が気に入っている蕎麦屋に一人で行くのも面白いかもしれない。
晩ご飯を考えながら歩くうち、いつもの橋へ辿り着いた。
先に橋を渡る男がいる。
巨大なものを肩に担ぎ、ご機嫌に大きく揺れながら歩いている。
フンフンと鼻歌まで響かせていた。
「あれ、あの後姿……っていうかあの肩の物は……」
肩にあるのは紛れもない、斬馬刀だ。
斬馬刀を荒っぽく包む布が揺れ、隠れていた悪の一文字が見えた。間違いない。夢主は相楽左之助を見つけた。
どんどん橋を渡る左之助だが、ぽとりと小さなものを落とした。財布だ。
本人も大きな斬馬刀に意識が行っているのか、足元の小物に気付かず進んでいく。
「えっ、嘘、気付かないで行っちゃう……」
拾っても警察に届けられない。左之助は警察を嫌っている。夢主は慌てて財布を拾った。
重たい財布、こんなに重いのに気付かないなんて……両手で重みを確かめるが、遠ざかっていく左之助に気付き慌てて呼び止めた。