40.相楽左之助
夢主名前設定
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「斎藤さん、今朝は家を通らずに行ったんですよ」
「はぃ……」
承知の事実、夢主が見送ったのは家の前の通り。戦場を目指す姿を見送った。
徐々に小さくなっていく背中、やがて角を曲がり見えなくなった。
何度も、何人も見送った。死地へ赴く姿を見つめるのはどんなに回を重ねても慣れはしない。
「でもね、夕べ僕の所へ来てくれました」
「総司……さんの所へ……」
「はい。何を話したかは……分かるかな」
「……私のこと……」
「そうです。夢主ちゃんのこと。宜しく頼むって」
沖田はわざわざ頼まれずとも心得ている。
それでも伝えたいほど貴女を案じている。そう知らされて、夢主は赤くなった目をこすった。
「出て行く前に、一さんにあの桜の陶器を渡そうかと思ったんです」
「桜の……懐かしいですね」
比古の指導の下、夢主が作り上げた桜の花びらを模した小さな陶器。
幾人もの男達に命を繋ぐ勇気を与えた品だ。
それを今度の戦でも斎藤の手元に、考えたが思い止まってしまった。
「はい……でも私のも一さんのも持ち歩ける状態じゃなくて」
「土方さんのがありますよ」
「そう思ったんですけど……」
「あぁ、被弾して亡くなった土方さんのでは縁起が悪いですね」
親しい者の死を受け入れて乗り越えたのか、あっけらかんと語る沖田。
命を落としてしまった土方、奇しくも斎藤が負傷する部位と同じ腹部に被弾した。
現実に持っていなかった物を持たせる抵抗を感じた。
「土方さんに怒られちゃいそうですけど……」
「ははっ、斎藤さんに来て欲しくなくて守ってくれたかもしれませんよ。それに僕のだってあります」
「総司さんのは総司さんのもとに置いて欲しいんです。総司さんを守ってくれるんじゃないかなんて、私の勝手な思い込みですけど……」
「ははっ、素敵な思い込みだね。僕にとってもお守りです。今でも、これからも。ありがとうございます」
「総司さん……」
「さぁさぁ涙はおさまりましたか、元気出してお散歩でも行きましょう。お昼は一緒に赤べこでも。一緒に行くのは久しぶりですよね」
「はい……」
「では決まりです!暫くゆっくり過ごすといいですよ。道場や赤べこの手伝いもほどほどに、」
「いえ、お手伝いは気が紛れるので……お邪魔でなければ……」
「そうですか」
いらぬ考え事をしてしまわぬよう忙しく動いている方が良い。
夢主は今までと変わらぬ暮らしを選び、斎藤がいない日々を過ごしていった。
「はぃ……」
承知の事実、夢主が見送ったのは家の前の通り。戦場を目指す姿を見送った。
徐々に小さくなっていく背中、やがて角を曲がり見えなくなった。
何度も、何人も見送った。死地へ赴く姿を見つめるのはどんなに回を重ねても慣れはしない。
「でもね、夕べ僕の所へ来てくれました」
「総司……さんの所へ……」
「はい。何を話したかは……分かるかな」
「……私のこと……」
「そうです。夢主ちゃんのこと。宜しく頼むって」
沖田はわざわざ頼まれずとも心得ている。
それでも伝えたいほど貴女を案じている。そう知らされて、夢主は赤くなった目をこすった。
「出て行く前に、一さんにあの桜の陶器を渡そうかと思ったんです」
「桜の……懐かしいですね」
比古の指導の下、夢主が作り上げた桜の花びらを模した小さな陶器。
幾人もの男達に命を繋ぐ勇気を与えた品だ。
それを今度の戦でも斎藤の手元に、考えたが思い止まってしまった。
「はい……でも私のも一さんのも持ち歩ける状態じゃなくて」
「土方さんのがありますよ」
「そう思ったんですけど……」
「あぁ、被弾して亡くなった土方さんのでは縁起が悪いですね」
親しい者の死を受け入れて乗り越えたのか、あっけらかんと語る沖田。
命を落としてしまった土方、奇しくも斎藤が負傷する部位と同じ腹部に被弾した。
現実に持っていなかった物を持たせる抵抗を感じた。
「土方さんに怒られちゃいそうですけど……」
「ははっ、斎藤さんに来て欲しくなくて守ってくれたかもしれませんよ。それに僕のだってあります」
「総司さんのは総司さんのもとに置いて欲しいんです。総司さんを守ってくれるんじゃないかなんて、私の勝手な思い込みですけど……」
「ははっ、素敵な思い込みだね。僕にとってもお守りです。今でも、これからも。ありがとうございます」
「総司さん……」
「さぁさぁ涙はおさまりましたか、元気出してお散歩でも行きましょう。お昼は一緒に赤べこでも。一緒に行くのは久しぶりですよね」
「はい……」
「では決まりです!暫くゆっくり過ごすといいですよ。道場や赤べこの手伝いもほどほどに、」
「いえ、お手伝いは気が紛れるので……お邪魔でなければ……」
「そうですか」
いらぬ考え事をしてしまわぬよう忙しく動いている方が良い。
夢主は今までと変わらぬ暮らしを選び、斎藤がいない日々を過ごしていった。