35.時代の影と明かり
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「嫁さんには悪いと思うんだけどよ、じっとしていらねぇんだ。特に今回はな、我慢してもらうしかねぇ」
「淋しいかもしれませんね、奥さん……」
「そう言われると言い返せねぇなぁ、お前はどうなんだ。斎藤の野郎あんまり帰って来ねぇだろ、大丈夫か」
「大丈夫ですよ、遅い日も多いし、いない日も多いですけど……」
「淋しくねぇか。まぁ屯所にいた頃から待ち惚けには慣れてるか……って悪ぃ悪ぃ、余計なこと言っちまったな」
「平気ですよ、本当の事ですもん……」
そう、屯所で世話になっていた頃から帰らない斎藤を待つのには慣れている。時代の変わり目、再会の時を何年も待っていられた。
数日、数週間、例え任務で戻れなくとも耐えられる。沖田や赤べこの妙もいるから一人ではない。
「しかし子供の一人もいねぇとは、あの野郎本当に駆け回ってんだな」
「えっ」
「いや、結構経つだろう婚礼を挙げてからよ。なのにガキの一人もいねぇってのはそういう事じゃねぇのか、ガキがいりゃあ淋しさも紛れるだろう」
「あっ、なっ、永倉さんっ、何言ってるんですかっ!」
大きな声を上げて真っ赤になる夢主、夫婦の時間が無いのかと言葉の裏にある問いに顔が火照った。
肌を重ねる夜を思い浮かべてしまい、永倉も同じ行為を想像しているのかと思うと顔の熱がどんどん高まっていく。
「ははっその反応!大丈夫みてぇだな、心配いらねぇな」
「そ……そうですよ、大丈夫ですから!そういう話はしちゃいけないんですよ!」
「悪かったよ、しかしガキはいいぞ。目に入れても痛くねぇって上手いこと言うよなぁ、本当にそうだぜ」
「そうですか……」
「んっ」
突然しぼんだように小さくなる夢主。元気に話していたのに黙り込んでしまった。
足取りが重くなり遅れ始めた夢主を見て、永倉は顔を覗き込んだ。
「どうしたよ」
「いえ……」
触れて欲しくない話題になり、顔が下を向いてしまった。気にしないと決めたが意識させられると辛いものがある。
斎藤と暮らし始めて六年目、夫婦仲が冷めている訳ではない。一人の夜も多いが、熱く求められる夜も決して少なくない。
幾度も子種を受けて子を成さない理由を考えてしまった。
「もしかして気にしてんのか、子供がいねぇこと」
夢主はその質問に不満そうに頷いた。
わざわざ聞かないでくださいと、つい睨みつけてしまう。
「おぉっ怖い顔すんなよ、気にすんな!まだ斎藤と暮らし始めて、ひーふぅ、みぃ……結構経つのか」
小さく頷く夢主の淋しそうな姿に、永倉はしまったと後ろ首を掻いた。
もうすぐ別れようかという所で話し相手を落ち込ませるとはあまりに情けない。数年ぶりに再会した相手なのだから余計にばつが悪かった。
「まぁこればっかりはどうにもならねぇしな……ほら天の恵っつーか、偶然って言うか、だいだいよ!夢主の子は見たいけどよ、斎藤のガキってのはぁ考えてみりゃあ恐ろしいよな!」
顔を上げず口を開かない夢主に困り果てた永倉は懸命に気遣う言葉をかけ続けた。
夢主は斎藤の子供は見たくないと言われ不覚にも笑ってしまい、的外れな励ましに拗ねているのが馬鹿らしくなり顔を上げた。
目が合うと思ったが、永倉は川に掛かる橋を見ている。橋に立つ男の後ろ姿に驚いていた。
「永倉さん?」
「淋しいかもしれませんね、奥さん……」
「そう言われると言い返せねぇなぁ、お前はどうなんだ。斎藤の野郎あんまり帰って来ねぇだろ、大丈夫か」
「大丈夫ですよ、遅い日も多いし、いない日も多いですけど……」
「淋しくねぇか。まぁ屯所にいた頃から待ち惚けには慣れてるか……って悪ぃ悪ぃ、余計なこと言っちまったな」
「平気ですよ、本当の事ですもん……」
そう、屯所で世話になっていた頃から帰らない斎藤を待つのには慣れている。時代の変わり目、再会の時を何年も待っていられた。
数日、数週間、例え任務で戻れなくとも耐えられる。沖田や赤べこの妙もいるから一人ではない。
「しかし子供の一人もいねぇとは、あの野郎本当に駆け回ってんだな」
「えっ」
「いや、結構経つだろう婚礼を挙げてからよ。なのにガキの一人もいねぇってのはそういう事じゃねぇのか、ガキがいりゃあ淋しさも紛れるだろう」
「あっ、なっ、永倉さんっ、何言ってるんですかっ!」
大きな声を上げて真っ赤になる夢主、夫婦の時間が無いのかと言葉の裏にある問いに顔が火照った。
肌を重ねる夜を思い浮かべてしまい、永倉も同じ行為を想像しているのかと思うと顔の熱がどんどん高まっていく。
「ははっその反応!大丈夫みてぇだな、心配いらねぇな」
「そ……そうですよ、大丈夫ですから!そういう話はしちゃいけないんですよ!」
「悪かったよ、しかしガキはいいぞ。目に入れても痛くねぇって上手いこと言うよなぁ、本当にそうだぜ」
「そうですか……」
「んっ」
突然しぼんだように小さくなる夢主。元気に話していたのに黙り込んでしまった。
足取りが重くなり遅れ始めた夢主を見て、永倉は顔を覗き込んだ。
「どうしたよ」
「いえ……」
触れて欲しくない話題になり、顔が下を向いてしまった。気にしないと決めたが意識させられると辛いものがある。
斎藤と暮らし始めて六年目、夫婦仲が冷めている訳ではない。一人の夜も多いが、熱く求められる夜も決して少なくない。
幾度も子種を受けて子を成さない理由を考えてしまった。
「もしかして気にしてんのか、子供がいねぇこと」
夢主はその質問に不満そうに頷いた。
わざわざ聞かないでくださいと、つい睨みつけてしまう。
「おぉっ怖い顔すんなよ、気にすんな!まだ斎藤と暮らし始めて、ひーふぅ、みぃ……結構経つのか」
小さく頷く夢主の淋しそうな姿に、永倉はしまったと後ろ首を掻いた。
もうすぐ別れようかという所で話し相手を落ち込ませるとはあまりに情けない。数年ぶりに再会した相手なのだから余計にばつが悪かった。
「まぁこればっかりはどうにもならねぇしな……ほら天の恵っつーか、偶然って言うか、だいだいよ!夢主の子は見たいけどよ、斎藤のガキってのはぁ考えてみりゃあ恐ろしいよな!」
顔を上げず口を開かない夢主に困り果てた永倉は懸命に気遣う言葉をかけ続けた。
夢主は斎藤の子供は見たくないと言われ不覚にも笑ってしまい、的外れな励ましに拗ねているのが馬鹿らしくなり顔を上げた。
目が合うと思ったが、永倉は川に掛かる橋を見ている。橋に立つ男の後ろ姿に驚いていた。
「永倉さん?」