35.時代の影と明かり
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「おいおい、どうしたよ」
「すみません永倉さん、これから本を書かれるんだって思ったらなんか嬉しくて、感動しちゃったんです……」
「あははっ、感動して泣いちゃうなんて可愛いですね」
「泣いてなんかっ、でも……本当に、素敵なことです。頑張ってください、応援してますから」
泣いていると言われたら本当に涙が頬を伝ってしまい慌てて拭い、気のせいだと強がった。
そして心から応援すると、永倉の行動を後押しした。
後世に残る大切な記録が生まれようとしている。感慨深い夢主は瞳を潤ませて微笑んでいた。
「ハハッ、ありがとうよ!そんな風に言われると照れるな」
「僕も応援していますよ、寄付金もお預けします。僕の代わりにお願いします」
「あぁ任せとけっ!立派な石碑を立ててやるぜ!政府連中が驚くぐらいのな」
「フッ、あんまり対立しないでくださいよ、永倉さん。今じゃあ連中も人民に目を向けている。能力のない連中ばかりだが改善に向けて努力はしている」
勇ましい永倉の言葉を斎藤が少し落ち着いてくださいと薄ら笑いながら諭した。
昔馴染みに問題を起こされるのは厄介だ。ただでさえ忙しいんだから止めてくれと冗談半分に笑っている。
「分かってるさ、お前に逮捕されたんじゃ面白くねぇからな!」
「ククッ、それも悪くない」
「おいおい!!」
滑稽な掛け合いは昔と変わらず、座敷には笑い声が響き続けた。
いつも以上に口数が増えている沖田、早々に会話を切り上げがちな斎藤も今日ばかりは楽しんで話をしている。
夢主は包み隠さず気持ちを表す男達の笑顔を眺め、言葉を交わし、幸せな時を心に刻んでいた。
日頃の苦労を忘れられる楽しい時が過ぎ、やがて斎藤は仕事へ、沖田は午後の稽古へ、永倉は次の約束へ赴く時間が訪れた。
「夢主、帰ったら瓦斯燈見に連れて行ってやる。今日はもともと休めるはずだったんだ、少し早めに帰るさ」
「本当ですか!じゃあ総司さんや永倉さんもご一緒に」
勢いよく二人を見るが、共に優しい目で首を振っている。
夫との約束にまで誘うとは、相手が心から好きな人物なのだ。その気持ちが分かり、二人は嬉しそうに目を細めていた。
「遠慮しますよ、さすがにお邪魔虫するのは気が引けます」
「ハハッ、言えてるな。久しぶりに会って二人の時間をぶち壊すのは気が引けるぜ。大丈夫だ、東京を去る前にまた会えるさ」
こうして夜の銀座へ出かける約束を残し、斎藤は先に屋敷を出た。
暖かい日差しに顔を上げる。日が沈んでも冷たい風は吹かないだろう。
銀座の夜を歩こうと誘われ、暖かくなったらなと軽く約束を交わしてしまったが、随分と待たせてしまった。
……だが、今宵は良い……
夜を思い僅かに口角を上げた斎藤は一足先に姿を消した。
それから少し遅れて、夢主は帰る永倉を川まで送ることになった。
夢主も斎藤と同じく暖かい日差しに空を見上げた。所々に小さな雲が浮かぶくらいで、綺麗な青空が見える。日が暮れても暖かさは消えず、天気も崩れないだろう。
空を見上げにこにこ微笑む夢主を見て、男二人は小さく笑った。考えている事が手に取るように分かる。
「ふふっ、夢主ちゃんは可愛いですね」
「相変わらず周りを幸せにするな、そばにいたい気持ちが分かるぜ」
「ははっ、その通りです!……それじゃあ永倉さん、お気をつけて。北海道に帰る前にもう一度、今度は呑みましょうね。僕、いつかは北海道に行ってみたいんです。ですからもっとお話を聞かせてください」
「あぁ喜んで引き受けるぜ、楽しみにしてるからな、総司。夢主、頼むぜ」
「はいっ」
夜の約束に気を取られていた夢主が慌てて振り返った。
屋敷を出て二人になり、会話は静かなものへ変わる。
先程、斎藤が照れて話したがらなかった互いの家族の話になり、夢主は近況を伝え、永倉ははにかんで新しい家族について教えてくれた。
養子に入った身で好き勝手出歩く自分は離縁されてもおかしくないと自分を笑っている。
「すみません永倉さん、これから本を書かれるんだって思ったらなんか嬉しくて、感動しちゃったんです……」
「あははっ、感動して泣いちゃうなんて可愛いですね」
「泣いてなんかっ、でも……本当に、素敵なことです。頑張ってください、応援してますから」
泣いていると言われたら本当に涙が頬を伝ってしまい慌てて拭い、気のせいだと強がった。
そして心から応援すると、永倉の行動を後押しした。
後世に残る大切な記録が生まれようとしている。感慨深い夢主は瞳を潤ませて微笑んでいた。
「ハハッ、ありがとうよ!そんな風に言われると照れるな」
「僕も応援していますよ、寄付金もお預けします。僕の代わりにお願いします」
「あぁ任せとけっ!立派な石碑を立ててやるぜ!政府連中が驚くぐらいのな」
「フッ、あんまり対立しないでくださいよ、永倉さん。今じゃあ連中も人民に目を向けている。能力のない連中ばかりだが改善に向けて努力はしている」
勇ましい永倉の言葉を斎藤が少し落ち着いてくださいと薄ら笑いながら諭した。
昔馴染みに問題を起こされるのは厄介だ。ただでさえ忙しいんだから止めてくれと冗談半分に笑っている。
「分かってるさ、お前に逮捕されたんじゃ面白くねぇからな!」
「ククッ、それも悪くない」
「おいおい!!」
滑稽な掛け合いは昔と変わらず、座敷には笑い声が響き続けた。
いつも以上に口数が増えている沖田、早々に会話を切り上げがちな斎藤も今日ばかりは楽しんで話をしている。
夢主は包み隠さず気持ちを表す男達の笑顔を眺め、言葉を交わし、幸せな時を心に刻んでいた。
日頃の苦労を忘れられる楽しい時が過ぎ、やがて斎藤は仕事へ、沖田は午後の稽古へ、永倉は次の約束へ赴く時間が訪れた。
「夢主、帰ったら瓦斯燈見に連れて行ってやる。今日はもともと休めるはずだったんだ、少し早めに帰るさ」
「本当ですか!じゃあ総司さんや永倉さんもご一緒に」
勢いよく二人を見るが、共に優しい目で首を振っている。
夫との約束にまで誘うとは、相手が心から好きな人物なのだ。その気持ちが分かり、二人は嬉しそうに目を細めていた。
「遠慮しますよ、さすがにお邪魔虫するのは気が引けます」
「ハハッ、言えてるな。久しぶりに会って二人の時間をぶち壊すのは気が引けるぜ。大丈夫だ、東京を去る前にまた会えるさ」
こうして夜の銀座へ出かける約束を残し、斎藤は先に屋敷を出た。
暖かい日差しに顔を上げる。日が沈んでも冷たい風は吹かないだろう。
銀座の夜を歩こうと誘われ、暖かくなったらなと軽く約束を交わしてしまったが、随分と待たせてしまった。
……だが、今宵は良い……
夜を思い僅かに口角を上げた斎藤は一足先に姿を消した。
それから少し遅れて、夢主は帰る永倉を川まで送ることになった。
夢主も斎藤と同じく暖かい日差しに空を見上げた。所々に小さな雲が浮かぶくらいで、綺麗な青空が見える。日が暮れても暖かさは消えず、天気も崩れないだろう。
空を見上げにこにこ微笑む夢主を見て、男二人は小さく笑った。考えている事が手に取るように分かる。
「ふふっ、夢主ちゃんは可愛いですね」
「相変わらず周りを幸せにするな、そばにいたい気持ちが分かるぜ」
「ははっ、その通りです!……それじゃあ永倉さん、お気をつけて。北海道に帰る前にもう一度、今度は呑みましょうね。僕、いつかは北海道に行ってみたいんです。ですからもっとお話を聞かせてください」
「あぁ喜んで引き受けるぜ、楽しみにしてるからな、総司。夢主、頼むぜ」
「はいっ」
夜の約束に気を取られていた夢主が慌てて振り返った。
屋敷を出て二人になり、会話は静かなものへ変わる。
先程、斎藤が照れて話したがらなかった互いの家族の話になり、夢主は近況を伝え、永倉ははにかんで新しい家族について教えてくれた。
養子に入った身で好き勝手出歩く自分は離縁されてもおかしくないと自分を笑っている。