35.時代の影と明かり
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手紙のやり取りで、永倉との再会は初夏に決まった。
東京の桜の木はすっかり緑の葉で覆われて、待ちに待った時が訪れる。
斎藤、沖田、永倉が揃うのは、夢主と沖田が不動堂村の屯所を出て以来。四人は沖田の屋敷に集まっていた。
永倉が持ち込んだ手土産の酒を早速飲み交わしたいが、男三人は昼からそれぞれ用事が待っている。
忙しい斎藤は丸一日休めない。永倉は東京に出てきた目的の為、この日もあちこちで人に会う約束を取り付けていた。
このあとの用事に備え、四人は温かい茶と浅草で買った菓子で再会を楽しんでいる。
一番長く離れていた沖田は懐かしい顔に頬が緩みっぱなしだ。
「本当にお久しぶりです!変わってませんね永倉さん!」
「ははっ、そりゃあお前もだろう総司!相変わらずの顔してるな、斎藤と夢主もだ」
「ふふっ、永倉さんこそ。永倉さん、最後に会った時よりいい顔されてます!」
上野で一度出会っている夢主は当時の様子を思い浮かべた。山で遭遇した時はこんな心からの笑顔ではなかった。
途中で戦場を離れた自分に負い目を感じ自らを責めていたあの頃と違い、今は実現したい大事に向け自信をもって突き進んでいる。
想いを語り、熱く輝く目に憂いは無かった。
「そうか?」
「はいっ」
嬉しそうに頷く夢主の隣で斎藤も楽しげに会話を聞いている。
斎藤は上野で会わなかった分、夢主よりも久しぶりの再会になる。
だが北海道で無事生きている情報を得ていた為、離れていた時間に空白を感じることなく接していた。
命を預け合った仲間は顔を見るだけで良いらしい。
全てが通じ、男達は気付けばあの頃と同じよう笑い合っていた。
それに気付いた夢主も微笑まずにいられない。
四人の都合がついた僅かな時間、無駄にはしまいと縁を確かめているようだ。
「石碑の他にもいつか果たしたい事があるんだ」
三人の視線が集まる中心で永倉は得意げに語った。
自分の言葉で歴史を残したいというのだ。
幕末、京の都で何が起きたのか。
現在、世に広まる話は新政府に都合よく、旧勢力を貶める話ばかり。面白可笑しく誇張された話が多く、真実がねじ曲げられている事件も多い。
永倉は自らの経験を文章にし、それらを正す本を出すというのだ。
「もちろん今すぐにといかねぇのは分かるさ、俺も馬鹿じゃねぇ。政府批判のような事を仕出かして掴まって処刑されちゃ元も子もないってのはぁ、悔しいが局長の件で思い知ったぜ」
「近藤さん……」
斬首された新選組局長、近藤勇。
彼は反論の場も与えられず、正しい手順も踏まずに一部の者の判断で勝手な処刑により斬首されてしまった。新政府軍の内部からも批判が出た事件だ。
今でも似たような権力は存在する。
真面目に国を立て直そうとする政治家がいる一方、自分達に都合が悪い者は排除すべしと動く政治家もいる。
永倉は案を練りつつ、時が来るのを待つと語った。
「いつか必ず俺達新選組が何をしてきたか、京を守ってた事実を伝えるんだ。俺達の子や孫が新選組生き残りの子孫だってだけで虐められちゃあ叶わねえ!荒らしたのは奴らで、俺達は守っていたんだぜ」
「えぇ、分かっていますよ。僕だって悔しいですから」
「まぁ言いたい事は分かる。だが俺の事は書くなよ」
「分かってるさ、お前は立場もあるし目立つのが嫌いだろ。もちろん総司と夢主の話も伏せるさ」
夢主は熱く語る姿に目頭を熱くした。
歴史に立ち会っている今、感動が溢れてきたのだ。
東京の桜の木はすっかり緑の葉で覆われて、待ちに待った時が訪れる。
斎藤、沖田、永倉が揃うのは、夢主と沖田が不動堂村の屯所を出て以来。四人は沖田の屋敷に集まっていた。
永倉が持ち込んだ手土産の酒を早速飲み交わしたいが、男三人は昼からそれぞれ用事が待っている。
忙しい斎藤は丸一日休めない。永倉は東京に出てきた目的の為、この日もあちこちで人に会う約束を取り付けていた。
このあとの用事に備え、四人は温かい茶と浅草で買った菓子で再会を楽しんでいる。
一番長く離れていた沖田は懐かしい顔に頬が緩みっぱなしだ。
「本当にお久しぶりです!変わってませんね永倉さん!」
「ははっ、そりゃあお前もだろう総司!相変わらずの顔してるな、斎藤と夢主もだ」
「ふふっ、永倉さんこそ。永倉さん、最後に会った時よりいい顔されてます!」
上野で一度出会っている夢主は当時の様子を思い浮かべた。山で遭遇した時はこんな心からの笑顔ではなかった。
途中で戦場を離れた自分に負い目を感じ自らを責めていたあの頃と違い、今は実現したい大事に向け自信をもって突き進んでいる。
想いを語り、熱く輝く目に憂いは無かった。
「そうか?」
「はいっ」
嬉しそうに頷く夢主の隣で斎藤も楽しげに会話を聞いている。
斎藤は上野で会わなかった分、夢主よりも久しぶりの再会になる。
だが北海道で無事生きている情報を得ていた為、離れていた時間に空白を感じることなく接していた。
命を預け合った仲間は顔を見るだけで良いらしい。
全てが通じ、男達は気付けばあの頃と同じよう笑い合っていた。
それに気付いた夢主も微笑まずにいられない。
四人の都合がついた僅かな時間、無駄にはしまいと縁を確かめているようだ。
「石碑の他にもいつか果たしたい事があるんだ」
三人の視線が集まる中心で永倉は得意げに語った。
自分の言葉で歴史を残したいというのだ。
幕末、京の都で何が起きたのか。
現在、世に広まる話は新政府に都合よく、旧勢力を貶める話ばかり。面白可笑しく誇張された話が多く、真実がねじ曲げられている事件も多い。
永倉は自らの経験を文章にし、それらを正す本を出すというのだ。
「もちろん今すぐにといかねぇのは分かるさ、俺も馬鹿じゃねぇ。政府批判のような事を仕出かして掴まって処刑されちゃ元も子もないってのはぁ、悔しいが局長の件で思い知ったぜ」
「近藤さん……」
斬首された新選組局長、近藤勇。
彼は反論の場も与えられず、正しい手順も踏まずに一部の者の判断で勝手な処刑により斬首されてしまった。新政府軍の内部からも批判が出た事件だ。
今でも似たような権力は存在する。
真面目に国を立て直そうとする政治家がいる一方、自分達に都合が悪い者は排除すべしと動く政治家もいる。
永倉は案を練りつつ、時が来るのを待つと語った。
「いつか必ず俺達新選組が何をしてきたか、京を守ってた事実を伝えるんだ。俺達の子や孫が新選組生き残りの子孫だってだけで虐められちゃあ叶わねえ!荒らしたのは奴らで、俺達は守っていたんだぜ」
「えぇ、分かっていますよ。僕だって悔しいですから」
「まぁ言いたい事は分かる。だが俺の事は書くなよ」
「分かってるさ、お前は立場もあるし目立つのが嫌いだろ。もちろん総司と夢主の話も伏せるさ」
夢主は熱く語る姿に目頭を熱くした。
歴史に立ち会っている今、感動が溢れてきたのだ。