35.時代の影と明かり
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夢主は当然のように沖田へ永倉の話を伝えた。
懐かしい名前に沖田の顔に赤みが差す。
旧い仲間の知らせは嬉しい。複雑な自分達の事情を承知してくれている人物なら尚更だ。何の心配もせず昔話に花を咲かせられる。
「僕も会いたいですね!永倉さんが元気そうで何よりだ」
「ぜひご一緒に!まだいつお会いできるかわからないんですけど、きっと近いうちに」
「楽しみです!僕も少しだけど寄付金を用意しておきます。力になれるなんて嬉しいなぁ」
いつだったか夢主が永倉に語った話を記憶している。永倉も斎藤と同じく時代を変える戦を生き抜くと語っていた。
生き延びてすべき事がある、それは後世に新選組が如何なる存在だったか伝える仕事だと。
新選組が賊軍にされてしまわぬよう、官軍が発する情報に対抗し真実を書き残す。
戦で散った者達を弔い、そういった男達がいたことを後の世に伝える。それが永倉の成すべき仕事。
沖田はまさにその時が来たと悟り、助力できる喜びを噛みしめた。
「永倉さんは凄いな、北海道へ渡って、また東京へ戻っているんだ」
「総司さんも行ってみたいですか、北海道」
「そうですね、いつかはこの目で見たいです。土方さんが最期まで戦った地を……」
仙台で見た土方は少し寂しそうだったが、それでも精悍さは変わっていなかった。
新しい地で明るい未来を描いていた土方。どんな想いで最果ての戦地を駆けたのか、現地を歩けば分かる気がした。
これでもあの人を誰よりも理解しているつもりだ。最期の想いを感じ取るのが土方から与えられた最後の使命に思える。
託されたもの……沖田は顔を上げて「うん」と頷いた。
今際の際に夢で語られたのは夢主を甘やかしてやれ、いつまでも笑っていろ、その二つだ。
……託されたものは守れている、僕も頑張ってるな……
「行ってみたいけど、もう少し先かな。今教えてる子達に目録を渡してからですね、ぐんぐん腕を上げているんです。ここで離れるには惜しい。海を渡れば幾月も道場を空けてしまいますからね」
「駄目なものですか」
「えぇ、もう少しだけ先の事です」
この地で叶った自分の夢、子供達が夢見る明日。
父や兄が悔しい思いをした時代、そこから忘れてはならない物を受け継ぎ、新しい時代で生き抜く力に変えようとしている。
子供達に芽生え始めた夢や自信を見守りたい。
「でもきっと遠い日ではありませんよ」
二人が話に夢中になっていると、今日の稽古に弟子達がやって来た。
顔を見てにこやかに微笑む師匠と夢主、子供達は自分達の話をしていたとは思わず、不思議そうに稽古の支度を始めた。
道場の中はすぐに威勢のいい声がこだまし始めた。
懐かしい名前に沖田の顔に赤みが差す。
旧い仲間の知らせは嬉しい。複雑な自分達の事情を承知してくれている人物なら尚更だ。何の心配もせず昔話に花を咲かせられる。
「僕も会いたいですね!永倉さんが元気そうで何よりだ」
「ぜひご一緒に!まだいつお会いできるかわからないんですけど、きっと近いうちに」
「楽しみです!僕も少しだけど寄付金を用意しておきます。力になれるなんて嬉しいなぁ」
いつだったか夢主が永倉に語った話を記憶している。永倉も斎藤と同じく時代を変える戦を生き抜くと語っていた。
生き延びてすべき事がある、それは後世に新選組が如何なる存在だったか伝える仕事だと。
新選組が賊軍にされてしまわぬよう、官軍が発する情報に対抗し真実を書き残す。
戦で散った者達を弔い、そういった男達がいたことを後の世に伝える。それが永倉の成すべき仕事。
沖田はまさにその時が来たと悟り、助力できる喜びを噛みしめた。
「永倉さんは凄いな、北海道へ渡って、また東京へ戻っているんだ」
「総司さんも行ってみたいですか、北海道」
「そうですね、いつかはこの目で見たいです。土方さんが最期まで戦った地を……」
仙台で見た土方は少し寂しそうだったが、それでも精悍さは変わっていなかった。
新しい地で明るい未来を描いていた土方。どんな想いで最果ての戦地を駆けたのか、現地を歩けば分かる気がした。
これでもあの人を誰よりも理解しているつもりだ。最期の想いを感じ取るのが土方から与えられた最後の使命に思える。
託されたもの……沖田は顔を上げて「うん」と頷いた。
今際の際に夢で語られたのは夢主を甘やかしてやれ、いつまでも笑っていろ、その二つだ。
……託されたものは守れている、僕も頑張ってるな……
「行ってみたいけど、もう少し先かな。今教えてる子達に目録を渡してからですね、ぐんぐん腕を上げているんです。ここで離れるには惜しい。海を渡れば幾月も道場を空けてしまいますからね」
「駄目なものですか」
「えぇ、もう少しだけ先の事です」
この地で叶った自分の夢、子供達が夢見る明日。
父や兄が悔しい思いをした時代、そこから忘れてはならない物を受け継ぎ、新しい時代で生き抜く力に変えようとしている。
子供達に芽生え始めた夢や自信を見守りたい。
「でもきっと遠い日ではありませんよ」
二人が話に夢中になっていると、今日の稽古に弟子達がやって来た。
顔を見てにこやかに微笑む師匠と夢主、子供達は自分達の話をしていたとは思わず、不思議そうに稽古の支度を始めた。
道場の中はすぐに威勢のいい声がこだまし始めた。