33.陸蒸気の景色
夢主名前設定
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「ただの物盗りか」
取り巻く男達の息は既に荒い。
剣先はぶれ、構えも落ち着かずにいる。人を斬るどころか刀を抜くことにも慣れていない証拠だ。感情だけで突っ走ってしまったのだろう。
握られている刀も光が鈍く、手入れされていない。
こんな時は面倒だがまとめて打ちのめし、地元の警官に委ねるのが一番。
斎藤は物見の中で一番平静を保って見える人物に警官を呼びに行くよう告げ、右手を柄に掛けた。
「お前は動くなよ、目を閉じていてもいい」
小声で告げられた夢主は小さく頷き、それを確認した斎藤はすらりと抜刀し刃を賊に見せつけた。
夢主は賊とはいえ夫が人を斬り殺してしまうのか、気が気でないが見ずにはいられなかった。
抱える包みを顔まで持ち上げ、覗くように見守る。大人しく見ていると、すぐに恐れは無用と理解した。
斎藤は公衆の面前で男達を斬るつもりは無かった。威嚇と、振り下ろされる刀を安全に防ぐため抜刀したのだ。
斎藤が構えを整えると、男達は斬りつけようと刀を振り上げるが、気迫に負けたのか微かに震えている。
「つまらん」
「何をぉおおお!」
斎藤の一言で正気を失った一人が叫びながら斬りかかってきた。
見守る夢主は思わず目をつぶるが、すぐにドサリと大きなものが倒れる音がして目を開いた。
「斬るまでもない、阿呆が」
斎藤が向かってくる男をかわし、後ろ首に柄尻を入れて一打で気を失わせたのだ。
「くそぉおお!」
「馬鹿にしおって!」
仲間の昏睡に怒った男達が次々斎藤に斬りかかってくる。
斎藤はフンと一息おいて真っ先に向かってくる刃を刀で受け、そのまま受け流して体を回した。体勢を崩した男は斎藤の刀から離れた刃で地面を斬っていた。
斎藤は容赦なく残りの男を打ちのめしていく。
その姿を驚きの目で見守っていると、夢主の存在を思い出した賊の一人が手を伸ばし襲い掛かってきた。
「貴様が弱点か!っぐあぁああっ」
「寝ろ」
夢主に手が触れるより早く、男の後ろ頭を掴んだ斎藤が、男の顔面を地面に叩きつけた。
鼻の骨は間違いなく折れている。気を失い体を痙攣させている。
斎藤は相変わらず平静を保って見えるが、地面に屈服させられた男が一番酷い状況から、夢主に手を伸ばしたことで斎藤の怒りに触れたことは間違いない。
フン、と鼻をならした斎藤は、転がる男達が全員地面に倒れて動かないのを確認して、刀を納めた。
「警察だーー道を開けろー!!」
音を鳴らして納刀すると同時に、警官の笛が鳴り響いた。
けたたましい音と共に駆け寄る警官達。
斎藤に警官を呼ぶよう指示された男が息を切らし、その後ろに続いていた。
「これは、藤田警部補ではありませんか」
「先日はお世話になりました」
斎藤を見るなり知った顔だと気付き、先頭を走っていた警官が姿勢を正した。斎藤も反射的に藤田五郎の顔を作り、にこやかに挨拶を返す。
不自然なやりとりに夢主は堪らず顔を隠した。笑いが堪えられず小さく震えている。
「こちらこそ。お怪我はございませんか、夫妻が不逞の輩に絡まれていると通報があったのですが、まさか藤田警部補とは」
「家内が一緒だったので助かりましたよ」
「何を仰いますか」
周りには伸びた男達が倒れて体をひくつかせている。謙遜する斎藤を見上げた警官は、その剣腕に驚いていた。
斎藤は以前、任務で横浜を訪れた際に地元の警察署に顔を出していた。そこでたまたま顔を合わせた警官の一人がこの現場にやって来たのだ。
複数の警官が倒れた男達に声を掛けながら体を拘束していく。気を取り戻させて、歩いて連行するのだ。
「歩けない者はいないでしょう。後は任せましたよ」
「お任せください」
斎藤は目礼をし、後ろで小さくなり笑いを堪えている夢主をこの場から連れ出した。
破落戸達は警官達に連れられ、よろめきながら歩き出した。反抗する力も残っていないようだ。
そのさまに騒動の終わりを確認し、野次馬達も散り散りになっていく。
少し離れると、斎藤はいつもの表情を取り戻した。
取り巻く男達の息は既に荒い。
剣先はぶれ、構えも落ち着かずにいる。人を斬るどころか刀を抜くことにも慣れていない証拠だ。感情だけで突っ走ってしまったのだろう。
握られている刀も光が鈍く、手入れされていない。
こんな時は面倒だがまとめて打ちのめし、地元の警官に委ねるのが一番。
斎藤は物見の中で一番平静を保って見える人物に警官を呼びに行くよう告げ、右手を柄に掛けた。
「お前は動くなよ、目を閉じていてもいい」
小声で告げられた夢主は小さく頷き、それを確認した斎藤はすらりと抜刀し刃を賊に見せつけた。
夢主は賊とはいえ夫が人を斬り殺してしまうのか、気が気でないが見ずにはいられなかった。
抱える包みを顔まで持ち上げ、覗くように見守る。大人しく見ていると、すぐに恐れは無用と理解した。
斎藤は公衆の面前で男達を斬るつもりは無かった。威嚇と、振り下ろされる刀を安全に防ぐため抜刀したのだ。
斎藤が構えを整えると、男達は斬りつけようと刀を振り上げるが、気迫に負けたのか微かに震えている。
「つまらん」
「何をぉおおお!」
斎藤の一言で正気を失った一人が叫びながら斬りかかってきた。
見守る夢主は思わず目をつぶるが、すぐにドサリと大きなものが倒れる音がして目を開いた。
「斬るまでもない、阿呆が」
斎藤が向かってくる男をかわし、後ろ首に柄尻を入れて一打で気を失わせたのだ。
「くそぉおお!」
「馬鹿にしおって!」
仲間の昏睡に怒った男達が次々斎藤に斬りかかってくる。
斎藤はフンと一息おいて真っ先に向かってくる刃を刀で受け、そのまま受け流して体を回した。体勢を崩した男は斎藤の刀から離れた刃で地面を斬っていた。
斎藤は容赦なく残りの男を打ちのめしていく。
その姿を驚きの目で見守っていると、夢主の存在を思い出した賊の一人が手を伸ばし襲い掛かってきた。
「貴様が弱点か!っぐあぁああっ」
「寝ろ」
夢主に手が触れるより早く、男の後ろ頭を掴んだ斎藤が、男の顔面を地面に叩きつけた。
鼻の骨は間違いなく折れている。気を失い体を痙攣させている。
斎藤は相変わらず平静を保って見えるが、地面に屈服させられた男が一番酷い状況から、夢主に手を伸ばしたことで斎藤の怒りに触れたことは間違いない。
フン、と鼻をならした斎藤は、転がる男達が全員地面に倒れて動かないのを確認して、刀を納めた。
「警察だーー道を開けろー!!」
音を鳴らして納刀すると同時に、警官の笛が鳴り響いた。
けたたましい音と共に駆け寄る警官達。
斎藤に警官を呼ぶよう指示された男が息を切らし、その後ろに続いていた。
「これは、藤田警部補ではありませんか」
「先日はお世話になりました」
斎藤を見るなり知った顔だと気付き、先頭を走っていた警官が姿勢を正した。斎藤も反射的に藤田五郎の顔を作り、にこやかに挨拶を返す。
不自然なやりとりに夢主は堪らず顔を隠した。笑いが堪えられず小さく震えている。
「こちらこそ。お怪我はございませんか、夫妻が不逞の輩に絡まれていると通報があったのですが、まさか藤田警部補とは」
「家内が一緒だったので助かりましたよ」
「何を仰いますか」
周りには伸びた男達が倒れて体をひくつかせている。謙遜する斎藤を見上げた警官は、その剣腕に驚いていた。
斎藤は以前、任務で横浜を訪れた際に地元の警察署に顔を出していた。そこでたまたま顔を合わせた警官の一人がこの現場にやって来たのだ。
複数の警官が倒れた男達に声を掛けながら体を拘束していく。気を取り戻させて、歩いて連行するのだ。
「歩けない者はいないでしょう。後は任せましたよ」
「お任せください」
斎藤は目礼をし、後ろで小さくなり笑いを堪えている夢主をこの場から連れ出した。
破落戸達は警官達に連れられ、よろめきながら歩き出した。反抗する力も残っていないようだ。
そのさまに騒動の終わりを確認し、野次馬達も散り散りになっていく。
少し離れると、斎藤はいつもの表情を取り戻した。