30.後悔のあと
夢主名前設定
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「ひ、火男さんの秘密はお腹の油袋、般若さんの秘密は腕の模様」
「貴様っ」
「受け取ってくれないならこの秘密も全部打ち明けます、それに葵屋の大事な人のことだって、大切だから置いてきたんでしょう、守りたいから」
「脅しているつもりか」
「お互い様です!受け取ってくれたらもう近付きません!どうせ来ても追い返されるんです。でもお願いですから、ご自分を見失わないでください。恵さんの力になってあげてください!私には出来ないんです!」
「……俺にも出来ぬ相談だ。しかし仲間の秘密とは脅しの材料だとしては上出来だな。お前を殺したくない……俺の甘さか……約束しろ、二度と近付くな。次は容赦せん」
「はっ、はい……力になってくださるなら……」
力になるとは言っていない。
言い返すのも面倒な蒼紫が睨みつけると、夢主は目を閉じて胸の前で手を握った。
「何をしている」
「願いを込めているんです。無事に……恵さんが過ごせますように、貴方が無事に……過ごせますように」
「馬鹿馬鹿しい」
そう言いながらも蒼紫は夢主が震える手の中の陶器に願いを込める姿を黙って見守った。
夢主は願っていた。蒼紫と恵の幸せを、何より斎藤が生き抜く未来が変わらないように。
自分は何を望んでいるのか、矛盾した二つの願いがぶつかっているのではないか。どうして良いか分からぬが、夢主は陶器を差し出した。
頼りない細い手から陶器を受け取った蒼紫はちらと品を確認して装束の内側に隠した。
相変わらず何かに怯えるよう震える夢主に蒼紫は眉を寄せた。
「馬鹿な女だ」
「馬鹿で構いません……あの、ご、ご武運を……」
仲間の死に遭遇するかもしれない未来、緋村や翁と対する時が来るかも知れぬ蒼紫に向ける正しい言葉なのか、自信を持てないが夢主は伝えた。
無事に生き抜いて欲しい思いだけは本物だ。
「これが今生の別れだ」
「そんな事には……なりません」
「知っている……か」
蒼紫の一言に夢主はびくりと肩を動かした。
京の頃に何度も斎藤達が発した口癖のような言葉。先を知る夢主に、秘密を知っている周りの者だけが向ける言葉。
「蒼紫様……本当に……」
「知っている、だな」
生唾を飲み込む夢主の頬にそっと手を触れた蒼紫は、次の瞬間姿を消した。
「蒼紫……様……ごめんなさい」
彼はどこまで自分を知っているのか。本当に京にいた頃の自分を全て見て、全て知っているのかもしれない。
むず痒さと不安が同時に湧き起った。次の瞬間、消えたと思った蒼紫が背後に立つことを知る。
首の付け根に重たい手刀を受け、夢主は気を失った。
「御頭、その娘始末しましょうか」
「般若か。大丈夫だ、すぐに戻る」
夢主を屋敷付近から排除すべく意識を奪った蒼紫、そばに控えていた御庭番衆の配下・般若が姿を見せた。
倒れ込む女を抱え上げた御頭に後始末を申し出るが、命を奪う気がない蒼紫は自ら済ませると告げその場から去った。
「貴様っ」
「受け取ってくれないならこの秘密も全部打ち明けます、それに葵屋の大事な人のことだって、大切だから置いてきたんでしょう、守りたいから」
「脅しているつもりか」
「お互い様です!受け取ってくれたらもう近付きません!どうせ来ても追い返されるんです。でもお願いですから、ご自分を見失わないでください。恵さんの力になってあげてください!私には出来ないんです!」
「……俺にも出来ぬ相談だ。しかし仲間の秘密とは脅しの材料だとしては上出来だな。お前を殺したくない……俺の甘さか……約束しろ、二度と近付くな。次は容赦せん」
「はっ、はい……力になってくださるなら……」
力になるとは言っていない。
言い返すのも面倒な蒼紫が睨みつけると、夢主は目を閉じて胸の前で手を握った。
「何をしている」
「願いを込めているんです。無事に……恵さんが過ごせますように、貴方が無事に……過ごせますように」
「馬鹿馬鹿しい」
そう言いながらも蒼紫は夢主が震える手の中の陶器に願いを込める姿を黙って見守った。
夢主は願っていた。蒼紫と恵の幸せを、何より斎藤が生き抜く未来が変わらないように。
自分は何を望んでいるのか、矛盾した二つの願いがぶつかっているのではないか。どうして良いか分からぬが、夢主は陶器を差し出した。
頼りない細い手から陶器を受け取った蒼紫はちらと品を確認して装束の内側に隠した。
相変わらず何かに怯えるよう震える夢主に蒼紫は眉を寄せた。
「馬鹿な女だ」
「馬鹿で構いません……あの、ご、ご武運を……」
仲間の死に遭遇するかもしれない未来、緋村や翁と対する時が来るかも知れぬ蒼紫に向ける正しい言葉なのか、自信を持てないが夢主は伝えた。
無事に生き抜いて欲しい思いだけは本物だ。
「これが今生の別れだ」
「そんな事には……なりません」
「知っている……か」
蒼紫の一言に夢主はびくりと肩を動かした。
京の頃に何度も斎藤達が発した口癖のような言葉。先を知る夢主に、秘密を知っている周りの者だけが向ける言葉。
「蒼紫様……本当に……」
「知っている、だな」
生唾を飲み込む夢主の頬にそっと手を触れた蒼紫は、次の瞬間姿を消した。
「蒼紫……様……ごめんなさい」
彼はどこまで自分を知っているのか。本当に京にいた頃の自分を全て見て、全て知っているのかもしれない。
むず痒さと不安が同時に湧き起った。次の瞬間、消えたと思った蒼紫が背後に立つことを知る。
首の付け根に重たい手刀を受け、夢主は気を失った。
「御頭、その娘始末しましょうか」
「般若か。大丈夫だ、すぐに戻る」
夢主を屋敷付近から排除すべく意識を奪った蒼紫、そばに控えていた御庭番衆の配下・般若が姿を見せた。
倒れ込む女を抱え上げた御頭に後始末を申し出るが、命を奪う気がない蒼紫は自ら済ませると告げその場から去った。