30.後悔のあと
夢主名前設定
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三日通い続けてすっかり道を覚えた夢主。武田邸の前には既に門番の男達が立っていた。
この日は離れた場所から密かに門を見張った。恵が出てきたら屋敷から離れた場所で声を掛ければ良い。
見張りの男がいるかもしれないが、女の自分が知人だと声を掛けても怪しまれないだろう。まさか御庭番衆の誰かが買い物に付き添いはしまい。
一時間、二時間、ただ黙って屋敷に動きがないか見張るが、やがて待ち疲れてその場に腰を下ろしてしまった。
「出てこないなぁ……」
屋敷から距離を取っている為か蒼紫の姿も見えない。
目当ての二人どちらにも会えずこの日は終わってしまった。
仕事から戻った斎藤との夜の食事時、夢主は昨夜と同じ指摘を受けた。
「二日目、成果は無し」
「一さんっ!」
「怒るなよ、今日も顔に書いてある。明日、最後だからって危ない真似をするんじゃないぞ」
「わかってますよ、怖い思いはごめんですし……一さんに迷惑はかけたくありません……」
「そうか。ならいいが」
しょんぼり首を傾げる夢主の仕草に斎藤はククッと喉を鳴らしてしまった。
「もぉ、笑わないでください」
「悪かったな、お前が失敗しても俺が上手く処理するさ。いずれ、だがな」
まだ先の話だ。夢主は知っている。
町に緋村剣心が現れた情報を掴み、武田の悪事を把握したうえで野放しにして剣心の動向を探る。
解決しなければ警察が動く。解決すればそのまま剣心の動向を探る。
それが斎藤の目的でも文句は言えない。
剣心の存在の重要性は夢主にも分かる。上からの任務を果たす夫に罪はない。
「いずれ……でもそれまでの間に何人の人が……」
「分からんさ。俺はただ己の信じた任務にあたっているだけだからな」
「任務……」
「お前はそんな俺を認めてくれているんじゃないのか」
「そうです、一さんを信じています……でも……」
「ならばお前も俺の仕事を手伝うか」
「えぇっ、私がですかっ!」
目を丸くして驚く夢主の反応に耐えかねて斎藤が声を発して笑い出した。
胡坐をかく膝に手をついて下を向き顔を隠しているが、妻の反応を相当楽しんでいる。
「もっ、もう一さんってば!」
「ハハハッ、すまん、冗談を真に受けるなよ」
「だって真剣な声で言うから!」
「揶揄いたくもなるだろう、真剣なのはお前だ。真面目な顔も過ぎると可笑しいな」
「笑わなくったって……助けてあげたい人がいて必死なんです、笑わないでくださいよ……」
「あぁ悪かったよ、拗ねるな、ほら」
斎藤はにやけた顔を上げて、むくれている夢主の体を抱き寄せた。
夢主は素直に体を預けるが不満そうに顔を背けたまま、それでもほんのり頬を染めていた。
「素直なんだか意地っぱりなんだか分からんな、今日のお前は」
「一さんが苛めてばっかりだから私が拗ねるんです」
「そうか、俺のせいだったとは」
「そうですよ、いい加減自覚してください。いつも揶揄って苛めてばかりで」
「嫌か、優しいだけの俺がいいか」
「……それは」
そんな俺も好きでいてくれるんだろう……息を吹き替えるように囁き、夢主の体をびくりと弾ませた。
反射的に頷いてしまったが、頷きを否定するように真っ赤な瞳と頬で斎藤を睨みつけた。
この日は離れた場所から密かに門を見張った。恵が出てきたら屋敷から離れた場所で声を掛ければ良い。
見張りの男がいるかもしれないが、女の自分が知人だと声を掛けても怪しまれないだろう。まさか御庭番衆の誰かが買い物に付き添いはしまい。
一時間、二時間、ただ黙って屋敷に動きがないか見張るが、やがて待ち疲れてその場に腰を下ろしてしまった。
「出てこないなぁ……」
屋敷から距離を取っている為か蒼紫の姿も見えない。
目当ての二人どちらにも会えずこの日は終わってしまった。
仕事から戻った斎藤との夜の食事時、夢主は昨夜と同じ指摘を受けた。
「二日目、成果は無し」
「一さんっ!」
「怒るなよ、今日も顔に書いてある。明日、最後だからって危ない真似をするんじゃないぞ」
「わかってますよ、怖い思いはごめんですし……一さんに迷惑はかけたくありません……」
「そうか。ならいいが」
しょんぼり首を傾げる夢主の仕草に斎藤はククッと喉を鳴らしてしまった。
「もぉ、笑わないでください」
「悪かったな、お前が失敗しても俺が上手く処理するさ。いずれ、だがな」
まだ先の話だ。夢主は知っている。
町に緋村剣心が現れた情報を掴み、武田の悪事を把握したうえで野放しにして剣心の動向を探る。
解決しなければ警察が動く。解決すればそのまま剣心の動向を探る。
それが斎藤の目的でも文句は言えない。
剣心の存在の重要性は夢主にも分かる。上からの任務を果たす夫に罪はない。
「いずれ……でもそれまでの間に何人の人が……」
「分からんさ。俺はただ己の信じた任務にあたっているだけだからな」
「任務……」
「お前はそんな俺を認めてくれているんじゃないのか」
「そうです、一さんを信じています……でも……」
「ならばお前も俺の仕事を手伝うか」
「えぇっ、私がですかっ!」
目を丸くして驚く夢主の反応に耐えかねて斎藤が声を発して笑い出した。
胡坐をかく膝に手をついて下を向き顔を隠しているが、妻の反応を相当楽しんでいる。
「もっ、もう一さんってば!」
「ハハハッ、すまん、冗談を真に受けるなよ」
「だって真剣な声で言うから!」
「揶揄いたくもなるだろう、真剣なのはお前だ。真面目な顔も過ぎると可笑しいな」
「笑わなくったって……助けてあげたい人がいて必死なんです、笑わないでくださいよ……」
「あぁ悪かったよ、拗ねるな、ほら」
斎藤はにやけた顔を上げて、むくれている夢主の体を抱き寄せた。
夢主は素直に体を預けるが不満そうに顔を背けたまま、それでもほんのり頬を染めていた。
「素直なんだか意地っぱりなんだか分からんな、今日のお前は」
「一さんが苛めてばっかりだから私が拗ねるんです」
「そうか、俺のせいだったとは」
「そうですよ、いい加減自覚してください。いつも揶揄って苛めてばかりで」
「嫌か、優しいだけの俺がいいか」
「……それは」
そんな俺も好きでいてくれるんだろう……息を吹き替えるように囁き、夢主の体をびくりと弾ませた。
反射的に頷いてしまったが、頷きを否定するように真っ赤な瞳と頬で斎藤を睨みつけた。