30.後悔のあと
夢主名前設定
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翌朝は武田の邸宅に出向くのを控え、大人しく沖田の道場を手伝っていた。
時間を変えて出向き、恵が出てくるのを信じて待つつもりだ。暮らし始めて間もなければ必要なものが出て買い物に行くかもしれない。
気の強い恵みだから自分が欲しいものは自分で選ぶと言い張ると踏んでいた。
「昨日はどうしたんですか、道場のお手伝い随分と遅刻してきましたけど」
恵のことばかりを考えて箒が止まりがちな夢主に沖田がにこにこ笑んで寄ってきた。
分かりやすい人だなぁと理由を察するも反応を見たくて敢え訊ねた。
「本当にごめんなさい、ちょっと用事があって……」
「朝早くから」
「あの……」
「行ってたんですね、武田邸に」
「……はい」
「そっか、夢主ちゃんは優しいですね。今日は僕がお供しましょうか」
「本当ですか!あっ……」
喜ぶ夢主だがすぐに蒼紫の言葉が脳裏を過ぎった。
夢主自身に危害を加える気は無くとも周辺の者が相手なら容赦はしない。夫も隣人も把握していると語っていた。
目の前で優しく微笑む沖田を蒼紫に引き合わせてはいけない。もし自分を庇って闘う事になれば沖田は無傷では済むまい。
「やっぱり、大丈夫です。今日は赤べこのお手伝いがあるので大人しく過ごします」
「そうですか、それならいいんですけど」
「総司さん、あの……前に鉄之助君が持ってきた土方さんの桜の陶器をお借りしたいんですけど」
「土方さんの?」
沖田が夢主から貰い受けた物は、宗次郎が刀と共に持ち去ってしまった。今は代わりに、残された土方の桜の陶器を大切にしまっている。
共に大切な一振りに飾るつもりが、根付けとして付ける前に刀が持ち去られてしまった。幸か不幸か、土方の形見は手元に残ったのだ。
その形見を今更どうするのと訊ねたくなるが切ない顔でお願いしますと訴えられ、笑い出しそうになる。
沖田は笑いを我慢して頷いた。この顔を見ていたら理由などどうでも良くなってしまう。
「いいですよ」
「良かった!ある人の心の支えになってくれたらいいなって思うんです。心が壊れてしまわないよう、目に見える……人の目を感じる何かがあれば、いつも傍にあれば変わるのかなって」
「目に見える物をきっかけに誰かの存在を感じるという事ですか」
沖田自身も家族のように慕った仲間達を常にそばに感じて今日まで生きて来た。
弱音を吐きそうな時、心の中で叱咤して励ましてくれた人達の存在の大切さを知っている。
「確かにそれは大切ですね。いいですよ、お渡しします。もともと夢主ちゃんが作った物ですし、僕のではなく土方さんのです。土方さんはきっと夢主ちゃんに託すでしょう」
「ありがとうございます!いつか、必ずお返ししますから」
誰に渡すのか聞かず、沖田は小さな陶器を夢主に手渡した。
土方を支え続けた小さな存在が今度は蒼紫の力になってくれれば。
馬鹿な考えだと分かっているが、夢主は小さな花びらを手に仕事を終えた道場から出発した。
時間を変えて出向き、恵が出てくるのを信じて待つつもりだ。暮らし始めて間もなければ必要なものが出て買い物に行くかもしれない。
気の強い恵みだから自分が欲しいものは自分で選ぶと言い張ると踏んでいた。
「昨日はどうしたんですか、道場のお手伝い随分と遅刻してきましたけど」
恵のことばかりを考えて箒が止まりがちな夢主に沖田がにこにこ笑んで寄ってきた。
分かりやすい人だなぁと理由を察するも反応を見たくて敢え訊ねた。
「本当にごめんなさい、ちょっと用事があって……」
「朝早くから」
「あの……」
「行ってたんですね、武田邸に」
「……はい」
「そっか、夢主ちゃんは優しいですね。今日は僕がお供しましょうか」
「本当ですか!あっ……」
喜ぶ夢主だがすぐに蒼紫の言葉が脳裏を過ぎった。
夢主自身に危害を加える気は無くとも周辺の者が相手なら容赦はしない。夫も隣人も把握していると語っていた。
目の前で優しく微笑む沖田を蒼紫に引き合わせてはいけない。もし自分を庇って闘う事になれば沖田は無傷では済むまい。
「やっぱり、大丈夫です。今日は赤べこのお手伝いがあるので大人しく過ごします」
「そうですか、それならいいんですけど」
「総司さん、あの……前に鉄之助君が持ってきた土方さんの桜の陶器をお借りしたいんですけど」
「土方さんの?」
沖田が夢主から貰い受けた物は、宗次郎が刀と共に持ち去ってしまった。今は代わりに、残された土方の桜の陶器を大切にしまっている。
共に大切な一振りに飾るつもりが、根付けとして付ける前に刀が持ち去られてしまった。幸か不幸か、土方の形見は手元に残ったのだ。
その形見を今更どうするのと訊ねたくなるが切ない顔でお願いしますと訴えられ、笑い出しそうになる。
沖田は笑いを我慢して頷いた。この顔を見ていたら理由などどうでも良くなってしまう。
「いいですよ」
「良かった!ある人の心の支えになってくれたらいいなって思うんです。心が壊れてしまわないよう、目に見える……人の目を感じる何かがあれば、いつも傍にあれば変わるのかなって」
「目に見える物をきっかけに誰かの存在を感じるという事ですか」
沖田自身も家族のように慕った仲間達を常にそばに感じて今日まで生きて来た。
弱音を吐きそうな時、心の中で叱咤して励ましてくれた人達の存在の大切さを知っている。
「確かにそれは大切ですね。いいですよ、お渡しします。もともと夢主ちゃんが作った物ですし、僕のではなく土方さんのです。土方さんはきっと夢主ちゃんに託すでしょう」
「ありがとうございます!いつか、必ずお返ししますから」
誰に渡すのか聞かず、沖田は小さな陶器を夢主に手渡した。
土方を支え続けた小さな存在が今度は蒼紫の力になってくれれば。
馬鹿な考えだと分かっているが、夢主は小さな花びらを手に仕事を終えた道場から出発した。