30.後悔のあと
夢主名前設定
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「行け、お前を殺しても面白く無い」
「でも恵さんに……お願いです、会わせてください」
「あの女には会えん。余りしつこいとこちらにも考えがある」
「考え……」
「お前の口を封じたくはない。だがそれはお前自身の事、お前の身内や親しい友人がどうなろうが、俺には関係ない話だ」
「まさか」
「その昔、俺はお前の全てを見ていたと知っているはずだ。お前の夫、お前の隣人、世話になっている友人、今も全て把握している」
凍り付く夢主に近付き、蒼紫は挑発するように青白い顔に触れた。
華奢な顎に指を掛けて目を逸らせぬように目線を縛る。
夢主は黙って蒼紫の言葉を聞くしかなかった。
「そしてお前の秘密……俺が知らぬと思うか。武田観柳は喜んでお前を飼い猫に迎えるだろう」
「そっ、そんな」
「嫌ならば、さっさと去れ。二度と近付くな」
「でも、このままでは恵さんも、貴方だって」
俺がどうした、蒼紫は不覚にも眉を動かして本心を表してしまい眉間に皺を寄せた。
反応を悟られまいと夢主の顎にかけた手を動かし、顔を更に持ち上げた。
首が伸びた夢主は呼吸が辛くなるが構わず話し続けた。
「貴方だって、このままでは大切な仲間と……ご自分の誇りを失ってしまいます……」
「……去れ」
蒼紫が乱暴に手を放し、夢主は首を傷めるかと思うほど顔を振られた。
強い言葉と力で追い払われ、夢主は後ろ髪を引かれるように何度も振り返りながら去って行った。
「何だと言うのだ」
誇りと仲間を失うだと、馬鹿馬鹿しい。
蒼紫は地面を蹴って聳えたつ塀を軽々と越え、武田邸に消えた。
夜、夢主は首に触れて傷みがすっかり消えているのを確かめた。
傷付けようと思えばいくらでも出来たはず。簡単にこの場に戻れないよう足を折るも出来た。御庭番衆御頭にとって女一人を痛め付けるなど造作もない。
しかし蒼紫は言葉で命令し僅かに力を見せただけだ。
どうしてだろう、女に手を出すのは嫌なのか。
夢主は朝の出来事を思い返して顔に触れ、共に晩飯を食べる夫がずっと自分を見ている視線に気付かなかった。
「初日、成果は無し」
「えっ」
「顔に書いてあるぞ」
「何がですか……」
「例の隠し事の件だ。二、三日待ってくださいとお前は言ったな、待ってやる。ただし三日だ。それを過ぎたらお前を放っておく訳にはいかん。俺の仕事の都合もあるんだよ、頼むぞ」
「一さん……」
「夢主」
「……わかりました」
あと二日ばかり妻が一人動いても何かが解決するなど起こり得ない。
だがそれでいい、斎藤は夢主が渋々頷くさまを見守った。
「やっぱり一さんは全てご存知なんですね」
「さぁな、お前にも話しはせん。仕事の話だ」
「……今日、」
四乃森蒼紫に会いました、言いかける夢主だが作り笑顔を見せて箸を皿に運んだ。
話に名前が上がる度、嬉しくない顔を見せる夫にその名前を伝えてもややこしくなるだけだ。
「晩ご飯美味しく出来たんです、もっと食べてくださいね」
「……あぁ」
斎藤がどこか不機嫌な声で応えると、夢主は体を縮めて食事を進めた。
「でも恵さんに……お願いです、会わせてください」
「あの女には会えん。余りしつこいとこちらにも考えがある」
「考え……」
「お前の口を封じたくはない。だがそれはお前自身の事、お前の身内や親しい友人がどうなろうが、俺には関係ない話だ」
「まさか」
「その昔、俺はお前の全てを見ていたと知っているはずだ。お前の夫、お前の隣人、世話になっている友人、今も全て把握している」
凍り付く夢主に近付き、蒼紫は挑発するように青白い顔に触れた。
華奢な顎に指を掛けて目を逸らせぬように目線を縛る。
夢主は黙って蒼紫の言葉を聞くしかなかった。
「そしてお前の秘密……俺が知らぬと思うか。武田観柳は喜んでお前を飼い猫に迎えるだろう」
「そっ、そんな」
「嫌ならば、さっさと去れ。二度と近付くな」
「でも、このままでは恵さんも、貴方だって」
俺がどうした、蒼紫は不覚にも眉を動かして本心を表してしまい眉間に皺を寄せた。
反応を悟られまいと夢主の顎にかけた手を動かし、顔を更に持ち上げた。
首が伸びた夢主は呼吸が辛くなるが構わず話し続けた。
「貴方だって、このままでは大切な仲間と……ご自分の誇りを失ってしまいます……」
「……去れ」
蒼紫が乱暴に手を放し、夢主は首を傷めるかと思うほど顔を振られた。
強い言葉と力で追い払われ、夢主は後ろ髪を引かれるように何度も振り返りながら去って行った。
「何だと言うのだ」
誇りと仲間を失うだと、馬鹿馬鹿しい。
蒼紫は地面を蹴って聳えたつ塀を軽々と越え、武田邸に消えた。
夜、夢主は首に触れて傷みがすっかり消えているのを確かめた。
傷付けようと思えばいくらでも出来たはず。簡単にこの場に戻れないよう足を折るも出来た。御庭番衆御頭にとって女一人を痛め付けるなど造作もない。
しかし蒼紫は言葉で命令し僅かに力を見せただけだ。
どうしてだろう、女に手を出すのは嫌なのか。
夢主は朝の出来事を思い返して顔に触れ、共に晩飯を食べる夫がずっと自分を見ている視線に気付かなかった。
「初日、成果は無し」
「えっ」
「顔に書いてあるぞ」
「何がですか……」
「例の隠し事の件だ。二、三日待ってくださいとお前は言ったな、待ってやる。ただし三日だ。それを過ぎたらお前を放っておく訳にはいかん。俺の仕事の都合もあるんだよ、頼むぞ」
「一さん……」
「夢主」
「……わかりました」
あと二日ばかり妻が一人動いても何かが解決するなど起こり得ない。
だがそれでいい、斎藤は夢主が渋々頷くさまを見守った。
「やっぱり一さんは全てご存知なんですね」
「さぁな、お前にも話しはせん。仕事の話だ」
「……今日、」
四乃森蒼紫に会いました、言いかける夢主だが作り笑顔を見せて箸を皿に運んだ。
話に名前が上がる度、嬉しくない顔を見せる夫にその名前を伝えてもややこしくなるだけだ。
「晩ご飯美味しく出来たんです、もっと食べてくださいね」
「……あぁ」
斎藤がどこか不機嫌な声で応えると、夢主は体を縮めて食事を進めた。