28.江戸城の落日
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「俺がやきもちを妬いてはいかんか。うろちょろする見知らぬ男が厄介だと思うのはいかんか」
「いえ、そんな……嬉しいです」
「嬉しい、か」
夢主の髪をそっと撫でた斎藤は、短い口付けをしてすぐに体を離した。
相変わらず妻の体を隠したまま、胸の隠しからいつもの煙草を取り出した。広い河原だから夢主の前で火をつけても煙はかからないだろう。
風向きを読んだ斎藤はひょいと煙草を咥えて火をつけた。
最初の一息を長く吸い、顔を背けてふぅっと煙を細く吐き出す。
「まぁ好きにしくれて構わんが、あまり俺を煽るなよ。狼のやきもちは激しいぞ」
「そうなんですか」
「さぁて、俺にも分からんさ」
「んっ……」
右手は煙草を持ったまま、空いた左手が夢主の細い腰を引き寄せた。
己の味を押し付けるような荒っぽい口吸いをされ、夢主は顔をしかめた。
ぴたりと密着した斎藤の腰に硬直した熱い物を感じる。こんな河原でと恥じらい目を動かして辺りを見回すが、斎藤の体に隠れて景色はほとんど見えない。
斎藤の手にある煙草の先が少しずつ灰に変わって行く。長くなった灰の一塊が落ちて、ようやく夢主は解放された。
口の中に仄かな苦みと、鼻には煙草独特の渋い匂いが残っていた。
斎藤は再び煙草の吸い口を咥えてその渋さを味わい、煙をくゆらせている。
「何するんですか、私煙草は嫌いだって……っふ……」
強く細い息で煙を一気に吐きだし、斎藤は再び口を合わせた。
夢主の驚いた瞳に、「苦いだろ」と少し意地悪な顔を見せつける。
斎藤の悪戯染みた口吸いから逃げようとするが腰に回った手はがっちりと離れず動けない。煙草を手にしたままのもう一方の腕が触れて、更に夢主の体を固定した。
んんっ、と怒るように声を漏らす夢主に、斎藤は己の苦さを植え付けるよう執拗に柔らかい口内を弄った。
「っも、……ゃ……」
夢主は隙を突いて嫌がる声を出すが、それは斎藤はわざと与えている呼吸の間合い。
上気した顔で空気を欲しがり、離してと恥じらう妻の声を耳に、斎藤の目は厭らしく笑んでいた。
「ぅ……っ、はぁ……はぁ……もぉ……」
「こんなもんじゃすまんぞ」
短くなってしまった一本の最後の一服を味わって、斎藤は煙草を投げ捨てた。
「俺を妬かせたいならこれ以上の攻めを受ける覚悟でいろよ」
「私のせいじゃないのに」
「何か言ったか」
「なんでもありません!もう帰ります、火事の後始末頑張ってください!」
勝手にやきもち妬いてこんな事するなんて、恨めしくも捨て台詞のような労いの言葉を掛け、ぷいと体を背けた。
「おい」と呼び止められ謝罪があるのかと振り向けば、斎藤は新しい煙草に火を点けるところだった。
「家は向こうだぞ、迷子になるなよ」
斎藤は夢主が進もうとした方角と全く違う向きに顎をクイと動かし行く道を示した。
「どうせ私は出来た女じゃありません、帰り道を間違えるくらい……」
「阿呆、何を馬鹿なことを言っている。いいから気を付けて帰るんだ。一人では帰れんか」
「帰れますよ……大丈夫です」
大げさに腰を折って別れの挨拶とし、夢主はすたすた歩きだした。
意地でも振り向いてやるものか、そんな下らない事を考えて歩いていると、ふっと横に人影が現れて歩みを止められた。
「一さん……」
白手袋に白い煙草の夫、無言で煙を吐いて手にあった一本を弾き捨てた。
まだ長い煙草はどこかへ消えてしまった。
「いえ、そんな……嬉しいです」
「嬉しい、か」
夢主の髪をそっと撫でた斎藤は、短い口付けをしてすぐに体を離した。
相変わらず妻の体を隠したまま、胸の隠しからいつもの煙草を取り出した。広い河原だから夢主の前で火をつけても煙はかからないだろう。
風向きを読んだ斎藤はひょいと煙草を咥えて火をつけた。
最初の一息を長く吸い、顔を背けてふぅっと煙を細く吐き出す。
「まぁ好きにしくれて構わんが、あまり俺を煽るなよ。狼のやきもちは激しいぞ」
「そうなんですか」
「さぁて、俺にも分からんさ」
「んっ……」
右手は煙草を持ったまま、空いた左手が夢主の細い腰を引き寄せた。
己の味を押し付けるような荒っぽい口吸いをされ、夢主は顔をしかめた。
ぴたりと密着した斎藤の腰に硬直した熱い物を感じる。こんな河原でと恥じらい目を動かして辺りを見回すが、斎藤の体に隠れて景色はほとんど見えない。
斎藤の手にある煙草の先が少しずつ灰に変わって行く。長くなった灰の一塊が落ちて、ようやく夢主は解放された。
口の中に仄かな苦みと、鼻には煙草独特の渋い匂いが残っていた。
斎藤は再び煙草の吸い口を咥えてその渋さを味わい、煙をくゆらせている。
「何するんですか、私煙草は嫌いだって……っふ……」
強く細い息で煙を一気に吐きだし、斎藤は再び口を合わせた。
夢主の驚いた瞳に、「苦いだろ」と少し意地悪な顔を見せつける。
斎藤の悪戯染みた口吸いから逃げようとするが腰に回った手はがっちりと離れず動けない。煙草を手にしたままのもう一方の腕が触れて、更に夢主の体を固定した。
んんっ、と怒るように声を漏らす夢主に、斎藤は己の苦さを植え付けるよう執拗に柔らかい口内を弄った。
「っも、……ゃ……」
夢主は隙を突いて嫌がる声を出すが、それは斎藤はわざと与えている呼吸の間合い。
上気した顔で空気を欲しがり、離してと恥じらう妻の声を耳に、斎藤の目は厭らしく笑んでいた。
「ぅ……っ、はぁ……はぁ……もぉ……」
「こんなもんじゃすまんぞ」
短くなってしまった一本の最後の一服を味わって、斎藤は煙草を投げ捨てた。
「俺を妬かせたいならこれ以上の攻めを受ける覚悟でいろよ」
「私のせいじゃないのに」
「何か言ったか」
「なんでもありません!もう帰ります、火事の後始末頑張ってください!」
勝手にやきもち妬いてこんな事するなんて、恨めしくも捨て台詞のような労いの言葉を掛け、ぷいと体を背けた。
「おい」と呼び止められ謝罪があるのかと振り向けば、斎藤は新しい煙草に火を点けるところだった。
「家は向こうだぞ、迷子になるなよ」
斎藤は夢主が進もうとした方角と全く違う向きに顎をクイと動かし行く道を示した。
「どうせ私は出来た女じゃありません、帰り道を間違えるくらい……」
「阿呆、何を馬鹿なことを言っている。いいから気を付けて帰るんだ。一人では帰れんか」
「帰れますよ……大丈夫です」
大げさに腰を折って別れの挨拶とし、夢主はすたすた歩きだした。
意地でも振り向いてやるものか、そんな下らない事を考えて歩いていると、ふっと横に人影が現れて歩みを止められた。
「一さん……」
白手袋に白い煙草の夫、無言で煙を吐いて手にあった一本を弾き捨てた。
まだ長い煙草はどこかへ消えてしまった。