3.白い小袖の女
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「総司さん……?」
「なんでしょうか」
「何か……ありましたか」
「ん?いいえ、特に何も?」
ふふんと微笑む笑顔は確かに昨日の朝に別れた時と変わらない。
首を傾げる沖田を覗き込んでいると、逆に顔を寄せて覗き込まれ、後退ることになった。
「夢主ちゃんこそ、何かあったんですか?雰囲気が違いますね……ふふっ」
「えぇっ、あのっ?!何もありませんよっ!」
沖田らしからぬニヤリとした詮索に、思わずたじろぐ。
まさか先夜の情事を知られている訳ではあるまいが、二人の初夜を容易に想像出来るのも確かだ。
「ぁああっ、あのっ!今日はお暇ですかっ」
「今日ですか?ふふっ、僕はいつでも暇してますよ、あはははっ」
「そっ、総司さん……流浪人にみたいなことを言わないでくださいよ……もぅ」
「ははっ、僕もそろそろ動かないといけませんね!それで、今日はどうしたんですか」
夢主が顔を紅潮させて話を逸らすと、優しい沖田はそのまま話題を変えやった。
それでもにやにやと夢主の表情を観察している。
「あの……買い出しに付き合っていただきたいんです。いつもと違うものを探さないといけなくて……総司さん、土地勘があると仰っていましたよね」
「買い出しですか、いいですよ!案内します。それで風呂敷がはみ出しているんですね」
「えっ?あっ……」
先程転びかけた時だろうか、懐に忍ばせたはずの風呂敷が飛び出ていた。
「綺麗な色ですよね、そういえば……ちょっと待ってて、屋敷の正面で待っていてください!」
「はぃ……何だろう」
紅桔梗から月白へ淡く色を変える風呂敷を見て、何か思い出したように沖田は屋敷の中に走って行った。
言われた通り屋敷の正面で待っていると、すぐに笑顔の沖田が戻ってきた。顔を隠すための藍染の衿巻きが首元を覆っている。
夢主と人混みを歩く時は、無用な争いに巻き込まれないよう今でも気を付けている。
新選組沖田総司の顔は、明治になり東京と変わった今でも、幕末に対峙した者には忘れられない顔。死んだと話は広まっていても、油断は出来ない。
明治二年に出た法令のおかげで、政府の人間に見つかった所で幕末の行いを理由に咎められる恐れは無くなった。
しかし敵討ちとなれば話は別で、未だ刃を気にしなければならなかった。
数年後の敵討ちを禁じる法令が出るまで、この衿巻きは活躍を続けるだろう。
藍色の布に巻かれた沖田、その手には夢主の風呂敷に似た紫色に染まった長い布があった。
「お待たせしました!」
「それは……」
「これ夢主ちゃんに、綺麗でしょう。肩掛けなんですけど、ショールって言うんですよ。大家さんと話していて在り処を教えていただいたんです。白い小袖に合うはずだって」
「綺麗……私が使ってもいいんですか」
「ははっ、他に誰に使ってもらうと言うんですか、僕には似合いませんでしょう。是非使ってください。きっと似合いますよ」
手渡されたショールを肩に掛けて見ると、確かに白い小袖によく合い優しい印象を与えた。
とても長く膝までも届くほどだった。
「うん、いいですね。綺麗ですよ」
「ありがとうございます」
素直な言葉で褒められた夢主は、照れ隠しに腕にショールを絡めて俯いた。
「それで、買い出しでしたよね。お付き合いしますよ」
「良かった、ありがとうございます。包帯とかお薬はどこで手に入れたら良いか分からなくて……」
「薬ですか、斎藤さんの買い物ですね。ちょうどいいや、この辺りには噂のお医者さんがいるようですから行ってみましょう。道場には掛かりつけのお医者さんが欠かせませんから」
「はい!それに……まだあるんですよ。お酒です」
「え、お酒?」
「はい。どうしたんですか」
「斎藤さんがお酒を?」
「はぃ、そうですよ」
それがどうかしたのかと首を傾げる夢主に、沖田は慌てて首を振った。
「いえ、別にっ!早速出かけましょうか」
……斎藤さんはお酒を止めたんじゃ……夢主ちゃんの前ならいいのかな……
何故今更酒なのか、疑問を持ったまま沖田は夢主を案内した。
「なんでしょうか」
「何か……ありましたか」
「ん?いいえ、特に何も?」
ふふんと微笑む笑顔は確かに昨日の朝に別れた時と変わらない。
首を傾げる沖田を覗き込んでいると、逆に顔を寄せて覗き込まれ、後退ることになった。
「夢主ちゃんこそ、何かあったんですか?雰囲気が違いますね……ふふっ」
「えぇっ、あのっ?!何もありませんよっ!」
沖田らしからぬニヤリとした詮索に、思わずたじろぐ。
まさか先夜の情事を知られている訳ではあるまいが、二人の初夜を容易に想像出来るのも確かだ。
「ぁああっ、あのっ!今日はお暇ですかっ」
「今日ですか?ふふっ、僕はいつでも暇してますよ、あはははっ」
「そっ、総司さん……流浪人にみたいなことを言わないでくださいよ……もぅ」
「ははっ、僕もそろそろ動かないといけませんね!それで、今日はどうしたんですか」
夢主が顔を紅潮させて話を逸らすと、優しい沖田はそのまま話題を変えやった。
それでもにやにやと夢主の表情を観察している。
「あの……買い出しに付き合っていただきたいんです。いつもと違うものを探さないといけなくて……総司さん、土地勘があると仰っていましたよね」
「買い出しですか、いいですよ!案内します。それで風呂敷がはみ出しているんですね」
「えっ?あっ……」
先程転びかけた時だろうか、懐に忍ばせたはずの風呂敷が飛び出ていた。
「綺麗な色ですよね、そういえば……ちょっと待ってて、屋敷の正面で待っていてください!」
「はぃ……何だろう」
紅桔梗から月白へ淡く色を変える風呂敷を見て、何か思い出したように沖田は屋敷の中に走って行った。
言われた通り屋敷の正面で待っていると、すぐに笑顔の沖田が戻ってきた。顔を隠すための藍染の衿巻きが首元を覆っている。
夢主と人混みを歩く時は、無用な争いに巻き込まれないよう今でも気を付けている。
新選組沖田総司の顔は、明治になり東京と変わった今でも、幕末に対峙した者には忘れられない顔。死んだと話は広まっていても、油断は出来ない。
明治二年に出た法令のおかげで、政府の人間に見つかった所で幕末の行いを理由に咎められる恐れは無くなった。
しかし敵討ちとなれば話は別で、未だ刃を気にしなければならなかった。
数年後の敵討ちを禁じる法令が出るまで、この衿巻きは活躍を続けるだろう。
藍色の布に巻かれた沖田、その手には夢主の風呂敷に似た紫色に染まった長い布があった。
「お待たせしました!」
「それは……」
「これ夢主ちゃんに、綺麗でしょう。肩掛けなんですけど、ショールって言うんですよ。大家さんと話していて在り処を教えていただいたんです。白い小袖に合うはずだって」
「綺麗……私が使ってもいいんですか」
「ははっ、他に誰に使ってもらうと言うんですか、僕には似合いませんでしょう。是非使ってください。きっと似合いますよ」
手渡されたショールを肩に掛けて見ると、確かに白い小袖によく合い優しい印象を与えた。
とても長く膝までも届くほどだった。
「うん、いいですね。綺麗ですよ」
「ありがとうございます」
素直な言葉で褒められた夢主は、照れ隠しに腕にショールを絡めて俯いた。
「それで、買い出しでしたよね。お付き合いしますよ」
「良かった、ありがとうございます。包帯とかお薬はどこで手に入れたら良いか分からなくて……」
「薬ですか、斎藤さんの買い物ですね。ちょうどいいや、この辺りには噂のお医者さんがいるようですから行ってみましょう。道場には掛かりつけのお医者さんが欠かせませんから」
「はい!それに……まだあるんですよ。お酒です」
「え、お酒?」
「はい。どうしたんですか」
「斎藤さんがお酒を?」
「はぃ、そうですよ」
それがどうかしたのかと首を傾げる夢主に、沖田は慌てて首を振った。
「いえ、別にっ!早速出かけましょうか」
……斎藤さんはお酒を止めたんじゃ……夢主ちゃんの前ならいいのかな……
何故今更酒なのか、疑問を持ったまま沖田は夢主を案内した。