27.幸せの景色
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斎藤を送り出した夢主はこの日も沖田の屋敷を訪れた。お土産に庭で拾った椿を持っている。
今朝も調子が良い沖田は既に着流し姿で庭先に下りていた。
先に顔を見せた斎藤に正月早々の情事を問い詰めた事は内緒にして、沖田はそしらぬ顔で朝の挨拶をした。
「お早うございます」
「お早いですね、総司さん。お体は平気ですか」
「もう大丈夫ですよ。少しでも体を動かしておきませんとね」
夢主ちゃんこそもう平気?深入りしたい気持ちを抑えて何気ない言葉を返した。
沖田は日常の中で体を動かし、頻繁に庭を歩いて体を慣らしていた。
夢主の手に乗る椿に気付いた沖田は顔を綻ばせた。差し出された花を手に受け取り、微笑みを浮かべて眺めている。
「総司さん、椿好きなんですか」
「いいえ、別に好きとかそういうわけでは……ただ懐かしくはありますね。この屋敷に椿はありませんから。道場屋敷らしいです」
首が落ちるようで不吉な花と言われ武士が好まなかった椿。
斎藤はかつて嫌いじゃないと言っていたが、この屋敷の元主は迷信通り椿を避けていたらしい。
沖田は懐かしいと言いながら、昔の癖で椿の花を握り潰しそうになり、思い止まった。記憶の中の椿に比べ随分小さく可愛い花だ。
せっかく届けてくれた美しい花を目の前で砕いて悲しませてはいけない。
花を見つめていると、いつかの大きな椿を思い出す。
……昔、京の町で……緋村さんと対峙していた頃か、懐かしいな……
夜の巡察途中、落ちている大きな椿をたまに拾ったものだ。帯同する斎藤に「そんな物を拾ったら邪魔だぞ」と咎められた。
それでも掌に余る大きな椿が気になり拾ってしまった。
椿を拾った夜は不逞浪士に出会う事が多かった。不思議な偶然だ。
人斬り抜刀斎と遣り合った夜にも持っていた。抜刀する前に手にある椿を握り潰すのが何故か好きだった。砕ける感触を気に入っていた。
「本当に懐かしいや」
「総司さん?」
「いえ、何でもありませんよ。京の都では椿をよく見かけましたね」
「そうでしたか……私は余り記憶にないんですけど……歩き回ってた総司さんが仰るならそうなんでしょうね」
ふふっと首を傾げる楚々とした笑顔に沖田は息を呑んだ。
「そっか、町中を自由に歩き回っていたわけじゃありませんでしたね、すみませんつい……」
「総司さん?」
今更そんな昔の事を気に掛け謝るなど珍しい。
夢主は様子がおかしい沖田の顔を覗いた。
「あははっ、何でもありませんよ本当に。ちょっと懐かしんだだけです。椿、綺麗ですね。せっかくですから水鉢に入れておきます。ありがとう」
そう言って沖田は庭の水場に置かれた水鉢に椿を浮かべた。
溜まった水に静かに波紋が広がった。
今朝も調子が良い沖田は既に着流し姿で庭先に下りていた。
先に顔を見せた斎藤に正月早々の情事を問い詰めた事は内緒にして、沖田はそしらぬ顔で朝の挨拶をした。
「お早うございます」
「お早いですね、総司さん。お体は平気ですか」
「もう大丈夫ですよ。少しでも体を動かしておきませんとね」
夢主ちゃんこそもう平気?深入りしたい気持ちを抑えて何気ない言葉を返した。
沖田は日常の中で体を動かし、頻繁に庭を歩いて体を慣らしていた。
夢主の手に乗る椿に気付いた沖田は顔を綻ばせた。差し出された花を手に受け取り、微笑みを浮かべて眺めている。
「総司さん、椿好きなんですか」
「いいえ、別に好きとかそういうわけでは……ただ懐かしくはありますね。この屋敷に椿はありませんから。道場屋敷らしいです」
首が落ちるようで不吉な花と言われ武士が好まなかった椿。
斎藤はかつて嫌いじゃないと言っていたが、この屋敷の元主は迷信通り椿を避けていたらしい。
沖田は懐かしいと言いながら、昔の癖で椿の花を握り潰しそうになり、思い止まった。記憶の中の椿に比べ随分小さく可愛い花だ。
せっかく届けてくれた美しい花を目の前で砕いて悲しませてはいけない。
花を見つめていると、いつかの大きな椿を思い出す。
……昔、京の町で……緋村さんと対峙していた頃か、懐かしいな……
夜の巡察途中、落ちている大きな椿をたまに拾ったものだ。帯同する斎藤に「そんな物を拾ったら邪魔だぞ」と咎められた。
それでも掌に余る大きな椿が気になり拾ってしまった。
椿を拾った夜は不逞浪士に出会う事が多かった。不思議な偶然だ。
人斬り抜刀斎と遣り合った夜にも持っていた。抜刀する前に手にある椿を握り潰すのが何故か好きだった。砕ける感触を気に入っていた。
「本当に懐かしいや」
「総司さん?」
「いえ、何でもありませんよ。京の都では椿をよく見かけましたね」
「そうでしたか……私は余り記憶にないんですけど……歩き回ってた総司さんが仰るならそうなんでしょうね」
ふふっと首を傾げる楚々とした笑顔に沖田は息を呑んだ。
「そっか、町中を自由に歩き回っていたわけじゃありませんでしたね、すみませんつい……」
「総司さん?」
今更そんな昔の事を気に掛け謝るなど珍しい。
夢主は様子がおかしい沖田の顔を覗いた。
「あははっ、何でもありませんよ本当に。ちょっと懐かしんだだけです。椿、綺麗ですね。せっかくですから水鉢に入れておきます。ありがとう」
そう言って沖田は庭の水場に置かれた水鉢に椿を浮かべた。
溜まった水に静かに波紋が広がった。