23.博覧会の誤解
夢主名前設定
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「総司さん、その格好でその厭らしいお顔……ふふっ、似合わないです」
「似合うと言われるより嬉しいですね、はははっ。先に言ってあげられなくてごめんね、最初は一緒に遊びに行くつもりだったのに」
「吃驚しましたよ……でも一さんこそ……」
丁寧に謝罪をしてくれる沖田から、後ろで見守る斎藤に目を移した。本当に謝るべきは斎藤であり、巻き込まれた沖田ではないのでは、そんな目で見てしまった。
視線に含まれた意味を察した斎藤は小さく喉を鳴らした。
「悪かったよ、だが言えんものは仕方ない。事後報告ですまんな。本当は博覧会が終わるまで伏せておくつもりだったんだが」
「だって見ちゃったんだもん……信じてましたよ、でも……仲良さそうだったから……」
「僕らはこれでも幕末からの相棒ですからね、違和感なかったでしょう」
相手が分からなければ不安で仕方ないが、沖田だと分かれば思い出す仲睦まじさにクスクスと笑いが込み上げてくる。
「ふふっ、確かに長年連れ添った夫婦者みたいでした」
「ね、夢主ちゃんがやきもち焼いちゃうのも仕方ありませんよ」
「やっ、やきもちだなんて……」
ぽっと赤くなって否定する夢主に、沖田はショールを手渡した。
「はい、ありがとう。じゃあ僕はこれで。いい加減この格好から解放されたいですからね。いつもはちゃんと男の姿で帰るんですから」
「総司さん本当にすみません、何か巻き込んじゃって……わざわざ家までそんな恰好のまま……」
「構いませんよ、夢主ちゃんの笑顔の為なら、ははっ。謝らなきゃいけないのは斎藤さんですからね、では僕はこれで。斎藤さん、また明日」
「あぁ、いつもと同じ午砲の後だ。頼んだぞ」
沖田は笑顔で「はいはい」と二度返事をして家に戻っていった。
玄関に残された二人。夢主は苦笑いで斎藤を見上げた。
「フン、悪かったな」
「いいぇ……でも本当に、見かけた時は固まっちゃいました。ごめんなさい」
「何故お前が謝る」
「だって……一さんをもっと信じてたら私……」
「阿呆、沖田君も言ってただろう。なかなかに互いを知った二人があんな格好で歩いていたら、お前が不安を感じる関係に見えてもおかしくあるまい。実際、そう装って歩いていたんだ。不安にさせちまったな」
「一さん……」
「決まった時間に家に帰れるとはいい仕事だな。今日は特にそう思うぜ」
「そうですね……」
「あぁ。拗ねた妻をゆっくり宥められるんだからな、忙しければ誤解も解けずに参ったもんだ」
「ふふっ、一さんってば」
「さぁ戻るぞ」
斎藤は玄関をしっかり戸締りし直して、不意に夢主の体を抱え上げた。
「あの、一さん?」
「いいだろう、こうやって運ばれるのも」
「はい……でも、恥ずかしいですよ……」
斎藤の腕に軽々と抱き上げられた夢主は、言葉とは裏腹に体が離れないよう首に手を回してしがみ付いた。
途端に温かい斎藤の体温が伝わってくる。同時に、大好きなこの人だけの匂いも……夢主は薄っすら目を閉じて微笑んだ。
「……言われてみれば……懐かしいです。この感じ……」
「玄関で寝ぼけたお前を運ぶ、俺にとっては然程懐かしくもないんだがな」
「っす……すみません……覚えがなくて……」
「構わんさ、お前の記憶にないは今に始まった事じゃない。それにこうして運ぶのは」
ふと座敷の前で立ち止まり、夢主の顔をじっと見つめた。
瞬きもせず見つめられ、夢主はおどおどと瞳を揺らした。
「フッ、今も昔も俺は好きだぞ、お前を運ぶのはな」
「一さん……」
「これからも、いくらでも運んでやる。出来ればちゃんと意識を保って起きていれば文句なしだ」
「はい……」
「いい返事だ」
障子の前で下ろされると思った夢主だが、手が塞がった斎藤に開けろと促された。
そっと手を伸ばし僅かに隙間を作ったところで、斎藤が足を入れて開け放った。
「似合うと言われるより嬉しいですね、はははっ。先に言ってあげられなくてごめんね、最初は一緒に遊びに行くつもりだったのに」
「吃驚しましたよ……でも一さんこそ……」
丁寧に謝罪をしてくれる沖田から、後ろで見守る斎藤に目を移した。本当に謝るべきは斎藤であり、巻き込まれた沖田ではないのでは、そんな目で見てしまった。
視線に含まれた意味を察した斎藤は小さく喉を鳴らした。
「悪かったよ、だが言えんものは仕方ない。事後報告ですまんな。本当は博覧会が終わるまで伏せておくつもりだったんだが」
「だって見ちゃったんだもん……信じてましたよ、でも……仲良さそうだったから……」
「僕らはこれでも幕末からの相棒ですからね、違和感なかったでしょう」
相手が分からなければ不安で仕方ないが、沖田だと分かれば思い出す仲睦まじさにクスクスと笑いが込み上げてくる。
「ふふっ、確かに長年連れ添った夫婦者みたいでした」
「ね、夢主ちゃんがやきもち焼いちゃうのも仕方ありませんよ」
「やっ、やきもちだなんて……」
ぽっと赤くなって否定する夢主に、沖田はショールを手渡した。
「はい、ありがとう。じゃあ僕はこれで。いい加減この格好から解放されたいですからね。いつもはちゃんと男の姿で帰るんですから」
「総司さん本当にすみません、何か巻き込んじゃって……わざわざ家までそんな恰好のまま……」
「構いませんよ、夢主ちゃんの笑顔の為なら、ははっ。謝らなきゃいけないのは斎藤さんですからね、では僕はこれで。斎藤さん、また明日」
「あぁ、いつもと同じ午砲の後だ。頼んだぞ」
沖田は笑顔で「はいはい」と二度返事をして家に戻っていった。
玄関に残された二人。夢主は苦笑いで斎藤を見上げた。
「フン、悪かったな」
「いいぇ……でも本当に、見かけた時は固まっちゃいました。ごめんなさい」
「何故お前が謝る」
「だって……一さんをもっと信じてたら私……」
「阿呆、沖田君も言ってただろう。なかなかに互いを知った二人があんな格好で歩いていたら、お前が不安を感じる関係に見えてもおかしくあるまい。実際、そう装って歩いていたんだ。不安にさせちまったな」
「一さん……」
「決まった時間に家に帰れるとはいい仕事だな。今日は特にそう思うぜ」
「そうですね……」
「あぁ。拗ねた妻をゆっくり宥められるんだからな、忙しければ誤解も解けずに参ったもんだ」
「ふふっ、一さんってば」
「さぁ戻るぞ」
斎藤は玄関をしっかり戸締りし直して、不意に夢主の体を抱え上げた。
「あの、一さん?」
「いいだろう、こうやって運ばれるのも」
「はい……でも、恥ずかしいですよ……」
斎藤の腕に軽々と抱き上げられた夢主は、言葉とは裏腹に体が離れないよう首に手を回してしがみ付いた。
途端に温かい斎藤の体温が伝わってくる。同時に、大好きなこの人だけの匂いも……夢主は薄っすら目を閉じて微笑んだ。
「……言われてみれば……懐かしいです。この感じ……」
「玄関で寝ぼけたお前を運ぶ、俺にとっては然程懐かしくもないんだがな」
「っす……すみません……覚えがなくて……」
「構わんさ、お前の記憶にないは今に始まった事じゃない。それにこうして運ぶのは」
ふと座敷の前で立ち止まり、夢主の顔をじっと見つめた。
瞬きもせず見つめられ、夢主はおどおどと瞳を揺らした。
「フッ、今も昔も俺は好きだぞ、お前を運ぶのはな」
「一さん……」
「これからも、いくらでも運んでやる。出来ればちゃんと意識を保って起きていれば文句なしだ」
「はい……」
「いい返事だ」
障子の前で下ろされると思った夢主だが、手が塞がった斎藤に開けろと促された。
そっと手を伸ばし僅かに隙間を作ったところで、斎藤が足を入れて開け放った。