23.博覧会の誤解
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「実は博覧会の期間中、俺はその警備にあたる」
「わぁ、凄いですね一さん!」
政府が開催する大事な行事で大役を任された夫を驚きながら、素直に称賛した。
影から大事に関わることが多い斎藤がそんな公の場で任務を遂行するのか。皆に認めてもらえるようで嬉しい。
「ただの任務だ。だがまぁ、ただの警官としているわけではない、それだけは伝えておく」
「はい……」
会場警備といえば人々出入りの確認や、展示物に手を出さないか見張りをする。人が多くいざこざが発生すれば仲裁に入る。
それ以外の任務……夢主は首を傾げた。
「分かっているのか、俺を見つけても手を振ったり駆け寄ったりするなよ」
近寄らなければ少なくとも沖田が女の姿で隣にいるとは気付くまい。
女と歩く誤解ならばすぐに解けるだろう。夢主は俺を信じてくれる、そう思える己は幸せ者だ。
妻を見つめる目がほんのり柔らかくなった。
「あっ、わかりました!そうですよね、気を付けます……」
会場の警備ではなく、密かに何か任を帯びているのだ。ようやく察した夢主は静かに頷いた。
「気を付けるでは困る。するなよ」
「はい……」
他人として振舞え。そんな言葉に淋しげに眉を下げる夢主、フッと笑った斎藤はそっと手を伸ばしてその体を引き寄せた。
「だが今はいくらでも構わんぞ、今は俺もただの夫だろう」
「はっ……はぃ……」
夢主の心に小さく芽生えた淋しさを打ち消すように、斎藤は温かい手でその頬に触れた。
そっと抱え込まれたまま、伝わる優しい熱に夢主は頬を染めた。
「俺はお前の夫だ。共に生きたいのはお前だけ、肌に触れたいのもお前だけだ」
「どうしたんですか、突然……」
「フッ、博覧会とはまた面倒な事をするもんだ」
「でもきっと面白いですよ、いろんな物を集めるんでしょうね」
「さぁて。俺には関係ないな。様々な人間が集まる状況の方が俺には重要だ」
「ふふっ、そうなんですね」
夢主は博覧会と聞いて思い浮かぶ世界に目を輝かせている。
夫には面倒な仕事の場でしかないようだが、今からその日が楽しみだった。
「沖田君と行くんだったな」
「はい。そうですよ」
疑いなく微笑む姿に罪悪感を覚えた。しかし今回ばかりは事後報告になってしまう。
申し訳ないと謝罪のつもりで、斎藤はそっと口を重ねた。
「っどう……したんですか」
「何がだ」
「いぇ……」
夢主はふと自分の唇に指で触れて目を伏せた。
とても恥ずかしそうに、目を逸らしている。
「何だ夢主、お前こそどうした」
「だって一さん……その……お優しいから」
いつも優しくないという意味か。
眉間に縦皺が見えた夢主は慌てて首を振った。
「違いますよ、一さんはいつも優しいですし!その口吸いも……お優しいですけど、いつになく……優しいというか、穏やかで、なんて言うか……」
謝罪の気持ちが優しすぎる口吸いに変わったようで、普段と異なる様子に夢主は恥じらっていた。
「フッ、他意はない。そんな気分だっただけさ。たまにはいいだろう」
いつもの悪ぶった瞳で言われ、夢主は赤い顔で頷いた。
優しすぎるくらいの夫に戸惑うが、このくすぐったさも心地良かった。
「博覧会の警備、頑張ってくださいね。私見かけてもちゃんと距離を取りますから」
「そうか、助かる。お前も楽しんで来い」
「はい」
大きな胸に甘えるよう顔を埋め、夢主は小さく返事をした。
目の前にある頭をそっと撫で始めた斎藤、すぐにその手は体へと下りて行った。
「わぁ、凄いですね一さん!」
政府が開催する大事な行事で大役を任された夫を驚きながら、素直に称賛した。
影から大事に関わることが多い斎藤がそんな公の場で任務を遂行するのか。皆に認めてもらえるようで嬉しい。
「ただの任務だ。だがまぁ、ただの警官としているわけではない、それだけは伝えておく」
「はい……」
会場警備といえば人々出入りの確認や、展示物に手を出さないか見張りをする。人が多くいざこざが発生すれば仲裁に入る。
それ以外の任務……夢主は首を傾げた。
「分かっているのか、俺を見つけても手を振ったり駆け寄ったりするなよ」
近寄らなければ少なくとも沖田が女の姿で隣にいるとは気付くまい。
女と歩く誤解ならばすぐに解けるだろう。夢主は俺を信じてくれる、そう思える己は幸せ者だ。
妻を見つめる目がほんのり柔らかくなった。
「あっ、わかりました!そうですよね、気を付けます……」
会場の警備ではなく、密かに何か任を帯びているのだ。ようやく察した夢主は静かに頷いた。
「気を付けるでは困る。するなよ」
「はい……」
他人として振舞え。そんな言葉に淋しげに眉を下げる夢主、フッと笑った斎藤はそっと手を伸ばしてその体を引き寄せた。
「だが今はいくらでも構わんぞ、今は俺もただの夫だろう」
「はっ……はぃ……」
夢主の心に小さく芽生えた淋しさを打ち消すように、斎藤は温かい手でその頬に触れた。
そっと抱え込まれたまま、伝わる優しい熱に夢主は頬を染めた。
「俺はお前の夫だ。共に生きたいのはお前だけ、肌に触れたいのもお前だけだ」
「どうしたんですか、突然……」
「フッ、博覧会とはまた面倒な事をするもんだ」
「でもきっと面白いですよ、いろんな物を集めるんでしょうね」
「さぁて。俺には関係ないな。様々な人間が集まる状況の方が俺には重要だ」
「ふふっ、そうなんですね」
夢主は博覧会と聞いて思い浮かぶ世界に目を輝かせている。
夫には面倒な仕事の場でしかないようだが、今からその日が楽しみだった。
「沖田君と行くんだったな」
「はい。そうですよ」
疑いなく微笑む姿に罪悪感を覚えた。しかし今回ばかりは事後報告になってしまう。
申し訳ないと謝罪のつもりで、斎藤はそっと口を重ねた。
「っどう……したんですか」
「何がだ」
「いぇ……」
夢主はふと自分の唇に指で触れて目を伏せた。
とても恥ずかしそうに、目を逸らしている。
「何だ夢主、お前こそどうした」
「だって一さん……その……お優しいから」
いつも優しくないという意味か。
眉間に縦皺が見えた夢主は慌てて首を振った。
「違いますよ、一さんはいつも優しいですし!その口吸いも……お優しいですけど、いつになく……優しいというか、穏やかで、なんて言うか……」
謝罪の気持ちが優しすぎる口吸いに変わったようで、普段と異なる様子に夢主は恥じらっていた。
「フッ、他意はない。そんな気分だっただけさ。たまにはいいだろう」
いつもの悪ぶった瞳で言われ、夢主は赤い顔で頷いた。
優しすぎるくらいの夫に戸惑うが、このくすぐったさも心地良かった。
「博覧会の警備、頑張ってくださいね。私見かけてもちゃんと距離を取りますから」
「そうか、助かる。お前も楽しんで来い」
「はい」
大きな胸に甘えるよう顔を埋め、夢主は小さく返事をした。
目の前にある頭をそっと撫で始めた斎藤、すぐにその手は体へと下りて行った。