19.その男、実業家
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静かな一人の家で、夢主は洗濯物を畳みながら庭を眺めていた。
「総司さん、家に帰って欲しかったみたいだけど、どうしたのかな……まさか、どうしても吉原に行きたかったのかな」
普段通り沖田の世話を焼いていたら、用事があるので今日はこれで結構ですよと丁寧に追い帰された。
珍しい出来事に夢主は理由を考えていた。
何か癇に障るような言動があっただろうか。それとも自分に知られたく秘密か。そうとなれば吉原通いしか思い当たらない。
夢主は「はぁ」と小さく息を吐いて畳みかけの白い晒を下ろした。
「そうかもしれない、やっぱり私には知られたくないんだからそうだよね、言えないよね……」
「どうしたんですか、浮かない顔をして」
「あぁっ総司さん!吃驚しました!どうしたんですか」
もう吉原へ行って姿がないと思っていた当人が急に顔を見せ、夢主は驚いて仰け反った。
「どうしたって……呼び掛けても返事がなかったのですが、門が開いていたので……不用心ですよ?」
夢主の目の前で、いつもの姿に戻った沖田がにこにこと微笑んでいる。
手には何も持っていない。
「ごめんなさい、気が付かなくて……門、開いてましたか」
「えぇ。僕が閉めましたけど。大丈夫ですか、考え事してるみたいでしたね」
「すみません、お手数おかけします……何でもないんですよ。本当にありがとうございます」
追い返された理由が吉原では無いらしいと気が軽くなったが、戸締りを忘れた自分に夢主は落ち込んだ。
戸締りは耳にたこができるほど斎藤に言われている。にも関わらず開けっ放しで忘れているとは。
「ははっ、構いませんよ。それより斎藤さんは……いる訳ありませんね。また来ますね、僕ちょっと出かけてきます」
「はい……あのっ!一さん二、三日は戻らないって話してました」
「えっ、本当ですか」
「はい。今回は総司さんに伝わっていないのですか」
「聞いていませんね。全く斎藤さんは……教えてくれてありがとうございます」
斎藤がいれば報告をと考えたが日中家にいないと思い出した。
しかし家に戻らないとは聞いていなかった沖田は、不満そうに斎藤の名を口にした。
火熨斗は武田の件を報告をして、その時に渡そうと考えていた。斎藤の企みで自分が動いた事を夢主に知らせる気はない。
「まぁ仕方ありません。また来ますね」
「はい、お出かけお気をつけて」
正面の門から入ってきた沖田は、裏口の戸から出て行った。
出かけるとはやはり吉原か、夢主は再び顔を落とした。
手元の洗濯物を見ながら、沖田は知らなかったが確かに数日家を空けると語っていた、朝の斎藤の言葉を思い返した。
「うん、一さんは二、三日家を空けるって言ってたもんね。でも遠出じゃないのなら帰ってくれてもいいのに……あっ!!」
夢主は大きな声を出して固まった。
「着替えとかいらないのかな。遠出なら現地調達って言ってたけど、家に帰らないのに着替えどうするんだろう……支給される、なんてないよね」
寝る時はどうするのだろうか。制服のまま、下着は、褌はさすがに変えるだろう。
「うぅん……」
夢主は暫くの間、頭を左右交互に傾げながら洗濯物を眺めた。
「総司さんが帰る前に頼めば良かったな。でも……頑張ってる一さんに申し訳ないし、持っていこうかな。その為に場所を聞いたんだもんね」
まだ日は高い。行って帰る時間は充分にある。夢主は思い立って風呂敷を座敷に広げた。
斎藤に貰った大きな風呂敷に、乾いたばかりの着替えを置いていく。
綺麗に風呂敷を結んだ夢主は両手で抱えて家を出た。
「総司さん、家に帰って欲しかったみたいだけど、どうしたのかな……まさか、どうしても吉原に行きたかったのかな」
普段通り沖田の世話を焼いていたら、用事があるので今日はこれで結構ですよと丁寧に追い帰された。
珍しい出来事に夢主は理由を考えていた。
何か癇に障るような言動があっただろうか。それとも自分に知られたく秘密か。そうとなれば吉原通いしか思い当たらない。
夢主は「はぁ」と小さく息を吐いて畳みかけの白い晒を下ろした。
「そうかもしれない、やっぱり私には知られたくないんだからそうだよね、言えないよね……」
「どうしたんですか、浮かない顔をして」
「あぁっ総司さん!吃驚しました!どうしたんですか」
もう吉原へ行って姿がないと思っていた当人が急に顔を見せ、夢主は驚いて仰け反った。
「どうしたって……呼び掛けても返事がなかったのですが、門が開いていたので……不用心ですよ?」
夢主の目の前で、いつもの姿に戻った沖田がにこにこと微笑んでいる。
手には何も持っていない。
「ごめんなさい、気が付かなくて……門、開いてましたか」
「えぇ。僕が閉めましたけど。大丈夫ですか、考え事してるみたいでしたね」
「すみません、お手数おかけします……何でもないんですよ。本当にありがとうございます」
追い返された理由が吉原では無いらしいと気が軽くなったが、戸締りを忘れた自分に夢主は落ち込んだ。
戸締りは耳にたこができるほど斎藤に言われている。にも関わらず開けっ放しで忘れているとは。
「ははっ、構いませんよ。それより斎藤さんは……いる訳ありませんね。また来ますね、僕ちょっと出かけてきます」
「はい……あのっ!一さん二、三日は戻らないって話してました」
「えっ、本当ですか」
「はい。今回は総司さんに伝わっていないのですか」
「聞いていませんね。全く斎藤さんは……教えてくれてありがとうございます」
斎藤がいれば報告をと考えたが日中家にいないと思い出した。
しかし家に戻らないとは聞いていなかった沖田は、不満そうに斎藤の名を口にした。
火熨斗は武田の件を報告をして、その時に渡そうと考えていた。斎藤の企みで自分が動いた事を夢主に知らせる気はない。
「まぁ仕方ありません。また来ますね」
「はい、お出かけお気をつけて」
正面の門から入ってきた沖田は、裏口の戸から出て行った。
出かけるとはやはり吉原か、夢主は再び顔を落とした。
手元の洗濯物を見ながら、沖田は知らなかったが確かに数日家を空けると語っていた、朝の斎藤の言葉を思い返した。
「うん、一さんは二、三日家を空けるって言ってたもんね。でも遠出じゃないのなら帰ってくれてもいいのに……あっ!!」
夢主は大きな声を出して固まった。
「着替えとかいらないのかな。遠出なら現地調達って言ってたけど、家に帰らないのに着替えどうするんだろう……支給される、なんてないよね」
寝る時はどうするのだろうか。制服のまま、下着は、褌はさすがに変えるだろう。
「うぅん……」
夢主は暫くの間、頭を左右交互に傾げながら洗濯物を眺めた。
「総司さんが帰る前に頼めば良かったな。でも……頑張ってる一さんに申し訳ないし、持っていこうかな。その為に場所を聞いたんだもんね」
まだ日は高い。行って帰る時間は充分にある。夢主は思い立って風呂敷を座敷に広げた。
斎藤に貰った大きな風呂敷に、乾いたばかりの着替えを置いていく。
綺麗に風呂敷を結んだ夢主は両手で抱えて家を出た。