19.その男、実業家
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……大した知識もない男が西洋文化を聞きかじった程度で知った気になっているな。
洋服も慣れていな所から見て明治維新後に一発当てた成り上がりだろう。もしくは成り上がった父親の脛かじりか。
惚れた女の機嫌を取るために珍しい品を送るか、気に入った女中に使わせるか、どちらにしてもろくでもない男だな。
だが、支払いが先というのは素晴らしい!!
「……ククッ」
「どうなさいました?」
沖田は顔を上げてようやく相手の確認を忘れていたと、その姿顔形を観察した。
色白で面長の男は、珍しい四角い形の眼鏡をかけている。あんな小さな眼鏡で見えるのだろうか、沖田は不思議そうに見つめた。
……うん、あの武田さんとは全く別人だ。なんだか厭らしい所は似てるけど……
武田を確認し終えた沖田はいつもの無邪気な笑顔を見せ、相手を見下す武田に更なる安心感を無意識に与えた。
「奥様にでしょうか」
「奥様?あははっ、僕はまだ独り身ですから、残念ながらね。でも知り合いの女性にあげるんです。きっと喜んでくれますよ」
「そうでしょう、そうでしょう!」
武田は手をすり合わせながら、細い目を弓形に変えた。
知り合いの女性に渡すという点では真実だ。武田は嘘を言っている顔ではないと、沖田を見て納得している。
この男は金払いが良いかどうか、これからも顧客として囲う価値があるのか、何の為に金を使う男なのか。
特別な逸品を勧めるべきか否か、秘密と金を持って再びやって来る男かどうか……武田は四角い眼鏡の奥で目をにぃと細めた。
「高価なお品だというのに先払いとは、随分と成功なさっているのですね」
「えっ?いやぁそれ程でも……僕は何もしていませんからね」
「左様でございますか」
……ちっ、やはり親の脛かじりか。まぁ良い、金を自由に使える馬鹿という点では親がやって来るよりいいだろう……
武田はほくそ笑むと、何かを思いついたふりをして手を打った。
「あぁ、そうです!女性が喜びそうな品が他にも色々とございますよ、宝飾や美術品はもちろん、例えば……気持ち良くなる品など」
「気持ち良く……?」
美しい装飾の品か手触りの良い外国の襟巻でもあるのか、想像つかない未知の品に、沖田は怪訝な顔で武田を見上げた。
「えぇ、興味はおありで?」
「そうですね……興味はありますが……でも生憎、今日は急ぐものですから」
何やら良くない気配を察した沖田。妙な物を掴まされては堪らないと断った。
話に乗っても良いが、ここで騒動が起きては困る。自分が厄介ごとに巻き込まれ、傍にいる夢主にとばっちりが行っては敵わない。
一旦斎藤に報告して後は任せようと腰を上げた。
「それは残念です。また興味が沸きましたらお尋ねください。いつでもお待ちしておりますので」
「えぇ、是非」
予想よりも重たい火熨斗の箱を抱えて、沖田は入ってきた時と同じ男に外まで案内された。
洋式の大きな窓から武田が去り行く沖田を見送っている。
「また来るかあの男……金を持った馬鹿はいい客だ。さて、私は建築中の邸宅でも見に行きましょうかね!」
郊外に建築中の巨大な邸宅には様々な空間が作られる。外界から隔離された砦のような存在になるだろう。
武田はその邸宅に全てを懸けていた。
「阿片を仕入れて売りさばくのもいいが利益が少ない!これからは原料を仕入れて自分で作らねば!その為に研究所を屋敷内に作るのですから。楽しみですねぇ!!!」
誰もいなくなった部屋の中、武田観柳はひとり高笑いを続けた。
洋服も慣れていな所から見て明治維新後に一発当てた成り上がりだろう。もしくは成り上がった父親の脛かじりか。
惚れた女の機嫌を取るために珍しい品を送るか、気に入った女中に使わせるか、どちらにしてもろくでもない男だな。
だが、支払いが先というのは素晴らしい!!
「……ククッ」
「どうなさいました?」
沖田は顔を上げてようやく相手の確認を忘れていたと、その姿顔形を観察した。
色白で面長の男は、珍しい四角い形の眼鏡をかけている。あんな小さな眼鏡で見えるのだろうか、沖田は不思議そうに見つめた。
……うん、あの武田さんとは全く別人だ。なんだか厭らしい所は似てるけど……
武田を確認し終えた沖田はいつもの無邪気な笑顔を見せ、相手を見下す武田に更なる安心感を無意識に与えた。
「奥様にでしょうか」
「奥様?あははっ、僕はまだ独り身ですから、残念ながらね。でも知り合いの女性にあげるんです。きっと喜んでくれますよ」
「そうでしょう、そうでしょう!」
武田は手をすり合わせながら、細い目を弓形に変えた。
知り合いの女性に渡すという点では真実だ。武田は嘘を言っている顔ではないと、沖田を見て納得している。
この男は金払いが良いかどうか、これからも顧客として囲う価値があるのか、何の為に金を使う男なのか。
特別な逸品を勧めるべきか否か、秘密と金を持って再びやって来る男かどうか……武田は四角い眼鏡の奥で目をにぃと細めた。
「高価なお品だというのに先払いとは、随分と成功なさっているのですね」
「えっ?いやぁそれ程でも……僕は何もしていませんからね」
「左様でございますか」
……ちっ、やはり親の脛かじりか。まぁ良い、金を自由に使える馬鹿という点では親がやって来るよりいいだろう……
武田はほくそ笑むと、何かを思いついたふりをして手を打った。
「あぁ、そうです!女性が喜びそうな品が他にも色々とございますよ、宝飾や美術品はもちろん、例えば……気持ち良くなる品など」
「気持ち良く……?」
美しい装飾の品か手触りの良い外国の襟巻でもあるのか、想像つかない未知の品に、沖田は怪訝な顔で武田を見上げた。
「えぇ、興味はおありで?」
「そうですね……興味はありますが……でも生憎、今日は急ぐものですから」
何やら良くない気配を察した沖田。妙な物を掴まされては堪らないと断った。
話に乗っても良いが、ここで騒動が起きては困る。自分が厄介ごとに巻き込まれ、傍にいる夢主にとばっちりが行っては敵わない。
一旦斎藤に報告して後は任せようと腰を上げた。
「それは残念です。また興味が沸きましたらお尋ねください。いつでもお待ちしておりますので」
「えぇ、是非」
予想よりも重たい火熨斗の箱を抱えて、沖田は入ってきた時と同じ男に外まで案内された。
洋式の大きな窓から武田が去り行く沖田を見送っている。
「また来るかあの男……金を持った馬鹿はいい客だ。さて、私は建築中の邸宅でも見に行きましょうかね!」
郊外に建築中の巨大な邸宅には様々な空間が作られる。外界から隔離された砦のような存在になるだろう。
武田はその邸宅に全てを懸けていた。
「阿片を仕入れて売りさばくのもいいが利益が少ない!これからは原料を仕入れて自分で作らねば!その為に研究所を屋敷内に作るのですから。楽しみですねぇ!!!」
誰もいなくなった部屋の中、武田観柳はひとり高笑いを続けた。