19.その男、実業家
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「今日のお昼ご飯はとても美味しいですよ」
沖田は笑った理由を聞かれる前に話題を変えてしまおうと昼飯の話にすり替えた。
「はい!先生と夢主様の作られるお食事はいつも美味しく私の頬は落ちそうです!」
「あはははっ、嬉しいお言葉ですね。実はですね、今日はなんと……」
沖田は子供達の視線を集め、注目を誘って人差し指を立てた。
取り囲む子供達はまだ引かない汗をそのままに、ごくりと唾を飲み込んだ。
「栗ご飯です!」
「わぁああ!!」
「栗ご飯!」
「秋ですね、先生!」
沖田が献立を発表すると、稽古の最中には見せない無邪気な笑顔と喜びの声が子供達から溢れた。
「皆さんお好きですか?」
師匠の問いに子供達は次々と大きな返事をした。鍛錬の間は集中して気を逸らさず打ち込んでいた彼ら、献立を聞いた途端、漂う香りに気付く。
期待で込み上げた涎を、堪らずごくりと飲み込んだ。
「さぁさぁ、では皆さん汗を拭いて、顔でも洗っていらっしゃい。私と夢主さんで支度を整えましょう」
「ありがとうございます!」
「恐縮です!」
子供達は防具を纏め、手拭いを手に競うように井戸端へ飛び出していった。
「ふふっ、元気ですね」
「夢主ちゃん、ありがとう。さっそく準備してくれて」
「私も楽しみなんです。総司さん朝から仕込んでくださったんでしょう」
「えぇ。早起きは得意ですからね」
沖田が首を傾げ笑うと、早起きが苦手な夢主は恥ずかしそうに首を傾げ返した。
「総司さんお料理上手じゃありませんか、細かい作業は苦手だなんて」
「へへっ、こんなに上手に出来るとは思いませんでした。以前は皆で作ったものですから」
「あの、一さんの分を取り分けておいたんですけど……」
「もちろん構いませんよ、僕もお誘いしたんですけど忙しいみたいですね」
「そうでしたか。……夜、いつもより遅くまでこちらで待っていても構いませんか」
「それはいいですけど」
「きっと一さんにも懐かしいですよね、総司さんと一緒に頂いたら一さんだって嬉しいんじゃないかと思って……」
「あははっ、いいですよ。斎藤さんが喜んでくれるかは分かりませんが、僕は喜んで」
「ありがとうございます。栗の甘露煮も一さん気に入ってくださって」
「そりゃあそうでしょう、夢主ちゃんのお料理は特別美味しいですから」
「そんな事は……」
「斎藤さんには夢主ちゃんが作ったってだけで特別です。僕も同じですけどね、ははっ」
屈託のない笑顔でさらりと褒められ、夢主はもじもじと俯いた。
斎藤にとって特別美味しいのは貴女が作るからですよと語られては、赤い顔を伏せるしかない。
そうこうしているうちに門弟達が汗を流して戻ってきた。次々と道場に入り、円を作って座っていく。
独り身の沖田にとって、幼い門弟達と食す昼飯は宴のように特別な時間だ。
元来賑やかな食事時が好きである。煩い外での宴会と違い、良く知る者だけが集まり楽しく過ごす最高の時だ。
沖田が沢山炊き上げた栗ご飯。
夢主の栗の甘露煮を、元気な子供達はあっという間に平らげた。
沖田は笑った理由を聞かれる前に話題を変えてしまおうと昼飯の話にすり替えた。
「はい!先生と夢主様の作られるお食事はいつも美味しく私の頬は落ちそうです!」
「あはははっ、嬉しいお言葉ですね。実はですね、今日はなんと……」
沖田は子供達の視線を集め、注目を誘って人差し指を立てた。
取り囲む子供達はまだ引かない汗をそのままに、ごくりと唾を飲み込んだ。
「栗ご飯です!」
「わぁああ!!」
「栗ご飯!」
「秋ですね、先生!」
沖田が献立を発表すると、稽古の最中には見せない無邪気な笑顔と喜びの声が子供達から溢れた。
「皆さんお好きですか?」
師匠の問いに子供達は次々と大きな返事をした。鍛錬の間は集中して気を逸らさず打ち込んでいた彼ら、献立を聞いた途端、漂う香りに気付く。
期待で込み上げた涎を、堪らずごくりと飲み込んだ。
「さぁさぁ、では皆さん汗を拭いて、顔でも洗っていらっしゃい。私と夢主さんで支度を整えましょう」
「ありがとうございます!」
「恐縮です!」
子供達は防具を纏め、手拭いを手に競うように井戸端へ飛び出していった。
「ふふっ、元気ですね」
「夢主ちゃん、ありがとう。さっそく準備してくれて」
「私も楽しみなんです。総司さん朝から仕込んでくださったんでしょう」
「えぇ。早起きは得意ですからね」
沖田が首を傾げ笑うと、早起きが苦手な夢主は恥ずかしそうに首を傾げ返した。
「総司さんお料理上手じゃありませんか、細かい作業は苦手だなんて」
「へへっ、こんなに上手に出来るとは思いませんでした。以前は皆で作ったものですから」
「あの、一さんの分を取り分けておいたんですけど……」
「もちろん構いませんよ、僕もお誘いしたんですけど忙しいみたいですね」
「そうでしたか。……夜、いつもより遅くまでこちらで待っていても構いませんか」
「それはいいですけど」
「きっと一さんにも懐かしいですよね、総司さんと一緒に頂いたら一さんだって嬉しいんじゃないかと思って……」
「あははっ、いいですよ。斎藤さんが喜んでくれるかは分かりませんが、僕は喜んで」
「ありがとうございます。栗の甘露煮も一さん気に入ってくださって」
「そりゃあそうでしょう、夢主ちゃんのお料理は特別美味しいですから」
「そんな事は……」
「斎藤さんには夢主ちゃんが作ったってだけで特別です。僕も同じですけどね、ははっ」
屈託のない笑顔でさらりと褒められ、夢主はもじもじと俯いた。
斎藤にとって特別美味しいのは貴女が作るからですよと語られては、赤い顔を伏せるしかない。
そうこうしているうちに門弟達が汗を流して戻ってきた。次々と道場に入り、円を作って座っていく。
独り身の沖田にとって、幼い門弟達と食す昼飯は宴のように特別な時間だ。
元来賑やかな食事時が好きである。煩い外での宴会と違い、良く知る者だけが集まり楽しく過ごす最高の時だ。
沖田が沢山炊き上げた栗ご飯。
夢主の栗の甘露煮を、元気な子供達はあっという間に平らげた。