17.詫びの印に
夢主名前設定
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「貴様、気付いていなかったな」
突き刺さった刀をそのままに、斎藤は振り返ると赤篠をギロリと睨み付けた。
それはまるで刃で斬り付けるような鋭い眼差しだ。
流石の赤篠も背筋が凍る思いで唾を飲み込んだ。赤篠は避けたとは言え、斎藤の牙突の勢いのとばっちりで肩を打撲していた。
「隠れていた刺客に気付かなかったな、貴様」
「藤田さん、お早いお戻りで。調べは終わったのです……ぅっ」
赤篠は背筋を落ちる汗を感じながら言うが、言い終える前に斎藤が拳に体重を乗せて殴りかかってきた。
必然的に赤篠の体は吹っ飛び床に転がった。
「ぁ……」
夢主は夫の行動に驚き、両手で口を覆った。
「気付いていなかっただろう!」
「ぐっ、藤田さっ」
「俺がいなければどうなっていた!!」
斎藤は怒りに任せて拳を振るっている。
柄にも無く我を忘れて、計算なく乱れた拳を浴びせている。
「うっ……待ってくだ……ふぅっ」
斎藤は容赦なく殴りつけるが、赤篠も密偵の端くれ、辛うじて防御の構えを保っていた。
しかし激しい乱打に徐々に構えは崩れていく。
「家内を囮にしたのか!」
斎藤の言葉に気を引き戻した夢主は違うと割って入ろうとするが、夫の剣幕の凄さに声が出せない。
「密偵失格だ!刺客に隙を与えるとは!」
「失格とは手厳しいっ、警告を発したのに、気付かなかった!貴方も……お相子でしょう!」
「警告だと!」
「赤、篠っ……赤報隊にいた事もある、篠原、単純な、隠語ですっ!」
……赤報隊……そうなの……
夢主は男の言葉を心で繰り返した。篠原達があの赤報隊に身を置いていたという事か。初めて知る彼らの経歴だ。
今日まで何がどう動いてきたのか理解は出来ないが、目の前の夫は止めなければならないと理解できる。
更に同僚を攻撃しようとする後姿に意を決した。
「ちっ!!」
警告したと告げられた斎藤は、より冷静さを失い殴りかかった。
赤篠は大振りの拳を防ぎながら、そろそろ反撃すべしと相手の手を見極めに入っている。
だが夢主が夫へ手を伸ばす姿が目に入り、防御する手を下ろして叫んでいた。
「危ない!!」
「何っ」
夫の凶行を止めようとした夢主に、振り返った斎藤の肘が入ってしまった。
赤篠の声と背後に突如感じた存在、斎藤は咄嗟に動きを止めたが間に合わなかった。
反射的な、短く大きな悲鳴を上げて後ろへ倒れた夢主が見え、斎藤は我に返った。
「阿呆、こんな時に近寄る馬鹿がいるか!」
「すみ……すみません……」
夢主の目からは涙が止まらずホロホロと流れている。
「泣くな、悪かった。痛むか」
「痛いに決まっているではありませんか藤田さん」
「貴様は黙っていろ!」
斎藤は己が痛めつけた赤篠に悪態をつき、夢主の顔を確認した。怒りはすっかり消え、代わりに妻を案じる優しさと痛みを与えてしまった後悔で溢れている。
肘が入ってしまった辺りは頬骨か、砕けていないか。
斎藤は自分の顔を抑える夢主の手を避け、怪我の具合を見た。
「骨は大丈夫だな」
殴りかかる加速がない分ましだが、大きく振り向いた勢いはあっただろう。
悔しいが男の言う通り、相当に痛いはずだ。
「ごめんなさい、私……」
「いや、謝るな。すまん、俺が悪かった」
止まらない涙は己の所為と分かっている。斎藤は必死に語りかけた。
夢主はゆっくりと首を振った。
突き刺さった刀をそのままに、斎藤は振り返ると赤篠をギロリと睨み付けた。
それはまるで刃で斬り付けるような鋭い眼差しだ。
流石の赤篠も背筋が凍る思いで唾を飲み込んだ。赤篠は避けたとは言え、斎藤の牙突の勢いのとばっちりで肩を打撲していた。
「隠れていた刺客に気付かなかったな、貴様」
「藤田さん、お早いお戻りで。調べは終わったのです……ぅっ」
赤篠は背筋を落ちる汗を感じながら言うが、言い終える前に斎藤が拳に体重を乗せて殴りかかってきた。
必然的に赤篠の体は吹っ飛び床に転がった。
「ぁ……」
夢主は夫の行動に驚き、両手で口を覆った。
「気付いていなかっただろう!」
「ぐっ、藤田さっ」
「俺がいなければどうなっていた!!」
斎藤は怒りに任せて拳を振るっている。
柄にも無く我を忘れて、計算なく乱れた拳を浴びせている。
「うっ……待ってくだ……ふぅっ」
斎藤は容赦なく殴りつけるが、赤篠も密偵の端くれ、辛うじて防御の構えを保っていた。
しかし激しい乱打に徐々に構えは崩れていく。
「家内を囮にしたのか!」
斎藤の言葉に気を引き戻した夢主は違うと割って入ろうとするが、夫の剣幕の凄さに声が出せない。
「密偵失格だ!刺客に隙を与えるとは!」
「失格とは手厳しいっ、警告を発したのに、気付かなかった!貴方も……お相子でしょう!」
「警告だと!」
「赤、篠っ……赤報隊にいた事もある、篠原、単純な、隠語ですっ!」
……赤報隊……そうなの……
夢主は男の言葉を心で繰り返した。篠原達があの赤報隊に身を置いていたという事か。初めて知る彼らの経歴だ。
今日まで何がどう動いてきたのか理解は出来ないが、目の前の夫は止めなければならないと理解できる。
更に同僚を攻撃しようとする後姿に意を決した。
「ちっ!!」
警告したと告げられた斎藤は、より冷静さを失い殴りかかった。
赤篠は大振りの拳を防ぎながら、そろそろ反撃すべしと相手の手を見極めに入っている。
だが夢主が夫へ手を伸ばす姿が目に入り、防御する手を下ろして叫んでいた。
「危ない!!」
「何っ」
夫の凶行を止めようとした夢主に、振り返った斎藤の肘が入ってしまった。
赤篠の声と背後に突如感じた存在、斎藤は咄嗟に動きを止めたが間に合わなかった。
反射的な、短く大きな悲鳴を上げて後ろへ倒れた夢主が見え、斎藤は我に返った。
「阿呆、こんな時に近寄る馬鹿がいるか!」
「すみ……すみません……」
夢主の目からは涙が止まらずホロホロと流れている。
「泣くな、悪かった。痛むか」
「痛いに決まっているではありませんか藤田さん」
「貴様は黙っていろ!」
斎藤は己が痛めつけた赤篠に悪態をつき、夢主の顔を確認した。怒りはすっかり消え、代わりに妻を案じる優しさと痛みを与えてしまった後悔で溢れている。
肘が入ってしまった辺りは頬骨か、砕けていないか。
斎藤は自分の顔を抑える夢主の手を避け、怪我の具合を見た。
「骨は大丈夫だな」
殴りかかる加速がない分ましだが、大きく振り向いた勢いはあっただろう。
悔しいが男の言う通り、相当に痛いはずだ。
「ごめんなさい、私……」
「いや、謝るな。すまん、俺が悪かった」
止まらない涙は己の所為と分かっている。斎藤は必死に語りかけた。
夢主はゆっくりと首を振った。