14.忘れた頃に
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ある薄暗い山中、目に見える範囲だけでも、両手の指に収まらないほどの死体が転がっていた。
志々雄真実は化け物狩りと称して旅を続けている。
この日、山中で遭遇した男達を次々に凶刃に掛けたのだ。
志々雄は最後の一人の背を踏んでいる。
男はまだ息絶えていないが、しっかりと押さえ込まれ身動きが取れずもがいている。
「足りねぇなぁ。もっと面白い奴はいねぇのか」
「志々雄さん、やっと追いつきました」
志々雄がぼやいていると、森の奥からひょっこり宗次郎が笑顔を見せた。
突然速度を上げた志々雄に置いて行かれ、慌てて追いかけて来たのだ。青い袴が土にまみれ汚れていた。
「遅かったな」
「突然なんです、呆気にとられちゃいましたよ。それより凄いですね、わぁ、これ全部志々雄さんがやったんですか」
「あぁ。こいつのトドメを刺せ」
「えっ?」
宗次郎が視線を落とすと志々雄が足を浮かせ、男が足下から這い出て泳ぐように手をバタつかせながら逃げ出した。
「わかりましたっ」
突然の指示に驚くが、快諾して脇差を抜き地面を蹴った宗次郎は、志々雄に置いて行かれたのが嘘のような疾さで男に近付いた。
よろめいて森の奥を目指す男は、すぐ横を通り過ぎる強い風に頬を叩かれ、体を止めた。
抜き身の脇差を手にした幼い宗次郎が、難なく追いついて前に回り込んだのだ。
「鬼ごっこですか?僕、鬼ごっこは好きですよ」
ひぃっと悲鳴を上げた男の額に、宗次郎は鈍い音を立てて刀を突き立てた。男は何かが潰れるような不快な声を出して絶命した。
宗次郎は白目をむいて崩れていく男に微笑んでから、大切な脇差を引き抜いた。
「あっけないんだな……志々雄さん、終わりました!」
役目を終えてすぐに志々雄の元へ戻ると、既に刀を納めて寛ぐ姿が見えた。
自分が手助けするまでも無いと見越した態度だ。
浮浪の男達の気配を察知して木々の間に一人飛び込んだ志々雄は、向かってくる男達を次々に仕留め、残しておいた一人のとどめを宗次郎に任せたのだ。
宗次郎は無自覚のうちに人斬りの術を教えられていた。
「志々雄さん、こんな山奥ばかり歩いて何をしているんですか」
「あぁっ?化け物を探してるんだよ」
「化け物、ですか」
「あぁ。面白い化け物をな。俺は強いが国を盗る為には手となり足となり動いてくれる人間が必要だ。強い奴がいい。宗次郎、お前が一人目だ」
「僕が……」
「あぁ。俺の代わりとなって、俺の刀として働いてくれるか」
「僕に出来るでしょうか」
「出来るさ。今はまだお前は子供だ。確かに体も小さく力も弱い。だがいつかは大人になる。そうなればお前は確実に誰よりも強くなれる。俺の次にな」
「本当に志々雄さんの次に」
「何度も言わせるな」
「わぁ……僕が志々雄さんの刀に……嬉しいです。僕もっともっと強くなりますね!」
「あぁ、頼んだぜ。それより、どこか陰になる場所を見つけねぇとな」
「陰、ですか」
「そうだ。分からねぇか、雨の匂いがするだろう」
「あ……本当だ……」
湿った匂いを感じて空を見上げると、辺りの薄暗さがうっそうとした木々で覆われた暗さではなく、雨雲が広がり陽を遮っているからだと知った。
「一雨来るぞ」
二人は近くにほら穴を見つけ、その中で夜を明かす事にした。
たいして広くはないが、大人と子供が二人で過ごすには充分だ。
宗次郎が腰を下ろすと、志々雄は自ずと向かいの岩にもたれて座った。
志々雄真実は化け物狩りと称して旅を続けている。
この日、山中で遭遇した男達を次々に凶刃に掛けたのだ。
志々雄は最後の一人の背を踏んでいる。
男はまだ息絶えていないが、しっかりと押さえ込まれ身動きが取れずもがいている。
「足りねぇなぁ。もっと面白い奴はいねぇのか」
「志々雄さん、やっと追いつきました」
志々雄がぼやいていると、森の奥からひょっこり宗次郎が笑顔を見せた。
突然速度を上げた志々雄に置いて行かれ、慌てて追いかけて来たのだ。青い袴が土にまみれ汚れていた。
「遅かったな」
「突然なんです、呆気にとられちゃいましたよ。それより凄いですね、わぁ、これ全部志々雄さんがやったんですか」
「あぁ。こいつのトドメを刺せ」
「えっ?」
宗次郎が視線を落とすと志々雄が足を浮かせ、男が足下から這い出て泳ぐように手をバタつかせながら逃げ出した。
「わかりましたっ」
突然の指示に驚くが、快諾して脇差を抜き地面を蹴った宗次郎は、志々雄に置いて行かれたのが嘘のような疾さで男に近付いた。
よろめいて森の奥を目指す男は、すぐ横を通り過ぎる強い風に頬を叩かれ、体を止めた。
抜き身の脇差を手にした幼い宗次郎が、難なく追いついて前に回り込んだのだ。
「鬼ごっこですか?僕、鬼ごっこは好きですよ」
ひぃっと悲鳴を上げた男の額に、宗次郎は鈍い音を立てて刀を突き立てた。男は何かが潰れるような不快な声を出して絶命した。
宗次郎は白目をむいて崩れていく男に微笑んでから、大切な脇差を引き抜いた。
「あっけないんだな……志々雄さん、終わりました!」
役目を終えてすぐに志々雄の元へ戻ると、既に刀を納めて寛ぐ姿が見えた。
自分が手助けするまでも無いと見越した態度だ。
浮浪の男達の気配を察知して木々の間に一人飛び込んだ志々雄は、向かってくる男達を次々に仕留め、残しておいた一人のとどめを宗次郎に任せたのだ。
宗次郎は無自覚のうちに人斬りの術を教えられていた。
「志々雄さん、こんな山奥ばかり歩いて何をしているんですか」
「あぁっ?化け物を探してるんだよ」
「化け物、ですか」
「あぁ。面白い化け物をな。俺は強いが国を盗る為には手となり足となり動いてくれる人間が必要だ。強い奴がいい。宗次郎、お前が一人目だ」
「僕が……」
「あぁ。俺の代わりとなって、俺の刀として働いてくれるか」
「僕に出来るでしょうか」
「出来るさ。今はまだお前は子供だ。確かに体も小さく力も弱い。だがいつかは大人になる。そうなればお前は確実に誰よりも強くなれる。俺の次にな」
「本当に志々雄さんの次に」
「何度も言わせるな」
「わぁ……僕が志々雄さんの刀に……嬉しいです。僕もっともっと強くなりますね!」
「あぁ、頼んだぜ。それより、どこか陰になる場所を見つけねぇとな」
「陰、ですか」
「そうだ。分からねぇか、雨の匂いがするだろう」
「あ……本当だ……」
湿った匂いを感じて空を見上げると、辺りの薄暗さがうっそうとした木々で覆われた暗さではなく、雨雲が広がり陽を遮っているからだと知った。
「一雨来るぞ」
二人は近くにほら穴を見つけ、その中で夜を明かす事にした。
たいして広くはないが、大人と子供が二人で過ごすには充分だ。
宗次郎が腰を下ろすと、志々雄は自ずと向かいの岩にもたれて座った。