12.秘め事
夢主名前設定
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様々な感情を抱いて艶 やかな景色を眺めていると、大門前で突然腕を捉まれた。
遊里の入り口で受ける強引な力に、夢主は怯えながら振り向いた。
「駄目ですよ、これ以上は」
「総司さんっ」
恐怖が抜けると共に力も抜けてしまった夢主の体を、沖田は笑って支えた。
軽々と抱えるように支えられた夢主は腕を掴んだ相手が沖田と分かり、ほっとする反面、この状況では悔しくもあった。
「ご存知ではありませんか、女の方は通行証無しに入ってはいけません」
「勝手に入れないのは知っていますけど……あの」
やはり沖田はここに女を買いに来たのか。
夢主が俯いていると腕を引かれ、いつの間にかずるずると歩いていた。
「えっ、総司さんっ」
「大丈夫ですから」
沖田が大門脇で木戸の番人に手続きを済ませている間、大人しく待っていると、すんなり木札を受け渡され中に引き入れられた。
「さぁ夢主さん、中をご案内いたしましょう」
「でも……」
他人行儀な言葉で手を広げ遊里内を示す沖田に、夢主はむすりとして眉を寄せた。
しかし気になる場所ではある。しかめっ面のまま、右へ左へと目を動かしてしまう。
「怖い顔しないで、ここには何でもあるんですよ。住んでいるのは遊女の方々だけではありませんからね」
「……そうなんですか」
「あちらが稲本楼、そちらが金平楼。どちらも一二を争う立派な大見世です」
「お詳しいんですね……」
僅かに機嫌を取り戻した夢主だったが、目の前の妓楼を紹介され、またすぐにふてくされてしまった。
沖田を置いて通りを進もうとするが、またも腕をぐいと掴まれた。
「奥には行かない方がいいですよ、一番煌びやかなのは大門の辺りですから」
奥に進むほど遊里の闇が見えてくる。そこまで夢主に案内するつもりは無い。
足止めされた夢主は気を取り直して、沖田の様子を伺いつつ、大きな妓楼の入り口を通り過ぎた。
ここは大丈夫だろうか、次の建物の前でちらりと振り向き、沖田が頷く顔を確認して夢主は足を止めた。
「大きい……ここも凄いですね」
「赤猫楼、なかなかの大所帯ですね」
「赤猫楼……」
妓楼の名に聞き覚えがあった。
……確か由美さんがいる場所……今もいるのかな……
「思ったより静かなんですね……」
「昼見世は静かなもんですね、夜になれば行灯が並んで軒下の提燈に火が入って、三味線も響きますよ」
「……やっぱりお詳しいんですね」
「あははっ、耳が痛いなぁ。京にいた頃から護衛であちこちの花街に出向いていましたから、こういう場にはそれなりに。とは言っても……今は僕の意志で来ていますけどね。僕がいつも揚がるのは向かいの店です」
「揚がる……じゃあ……やっぱり……」
沖田が揚がり、女を……そんな場面を想像を廻らせてしまい、戸惑いと恥ずかしさで赤い顔を懸命に振った。
「こっちですよ」と誘う仕種に反応がなく、沖田はくすりと笑って赤い顔を覗き込んだ。
「どうしました」
「いえっ、だって……いいですよ……」
「気になるのでしょう」
どんな所なのか、本当に沖田が通っているのか、妓はどんな人達がいるのか。
気になって仕方が無い。しかし近付いてはいけない気もする。
「でも……」
「格子から覗くなんて皆していますよ、女の人だってします」
「でも……総司さんがいつも行かれるお店なんですよね、だったら私が一緒にいたらなんと言うか……悪いじゃありませんか」
遊女といえども女だ。相手は客、それでも普段の相手が女を連れてやってくるのは心地良くないだろう。
「優しいなぁ、確かにそうかもしれませんね。でもここで働く女の人はね、そういった事も受け入れなきゃならないんです」
一時の淋しさを埋める為には相手にも割り切ってもらわないと困る、そう言いたいのか。
沖田にしては冷たい物言いだ。
「辛いお仕事ですね……」
「そうかもしれませんね。さぁ折角ここまで来たのですから」
沖田に促され見世格子に一歩二歩と近付き、その中が見える位置まで足を動かした。
昼見世は客が少ないからか、中にいる遊女は妓楼の大きさに対して少なく感じられる。中にいる妓達も真面目に座るものは少なく、それぞれに遊んでも見える。
まだ何人もいるのだろうか……
ぼんやり見ていると、ふと一人の遊女と目が合い、妖しげな微笑を受けて夢主は思わず後ろに退いた。
「あのっ!やっぱり私やめておきます!」
遊里の入り口で受ける強引な力に、夢主は怯えながら振り向いた。
「駄目ですよ、これ以上は」
「総司さんっ」
恐怖が抜けると共に力も抜けてしまった夢主の体を、沖田は笑って支えた。
軽々と抱えるように支えられた夢主は腕を掴んだ相手が沖田と分かり、ほっとする反面、この状況では悔しくもあった。
「ご存知ではありませんか、女の方は通行証無しに入ってはいけません」
「勝手に入れないのは知っていますけど……あの」
やはり沖田はここに女を買いに来たのか。
夢主が俯いていると腕を引かれ、いつの間にかずるずると歩いていた。
「えっ、総司さんっ」
「大丈夫ですから」
沖田が大門脇で木戸の番人に手続きを済ませている間、大人しく待っていると、すんなり木札を受け渡され中に引き入れられた。
「さぁ夢主さん、中をご案内いたしましょう」
「でも……」
他人行儀な言葉で手を広げ遊里内を示す沖田に、夢主はむすりとして眉を寄せた。
しかし気になる場所ではある。しかめっ面のまま、右へ左へと目を動かしてしまう。
「怖い顔しないで、ここには何でもあるんですよ。住んでいるのは遊女の方々だけではありませんからね」
「……そうなんですか」
「あちらが稲本楼、そちらが金平楼。どちらも一二を争う立派な大見世です」
「お詳しいんですね……」
僅かに機嫌を取り戻した夢主だったが、目の前の妓楼を紹介され、またすぐにふてくされてしまった。
沖田を置いて通りを進もうとするが、またも腕をぐいと掴まれた。
「奥には行かない方がいいですよ、一番煌びやかなのは大門の辺りですから」
奥に進むほど遊里の闇が見えてくる。そこまで夢主に案内するつもりは無い。
足止めされた夢主は気を取り直して、沖田の様子を伺いつつ、大きな妓楼の入り口を通り過ぎた。
ここは大丈夫だろうか、次の建物の前でちらりと振り向き、沖田が頷く顔を確認して夢主は足を止めた。
「大きい……ここも凄いですね」
「赤猫楼、なかなかの大所帯ですね」
「赤猫楼……」
妓楼の名に聞き覚えがあった。
……確か由美さんがいる場所……今もいるのかな……
「思ったより静かなんですね……」
「昼見世は静かなもんですね、夜になれば行灯が並んで軒下の提燈に火が入って、三味線も響きますよ」
「……やっぱりお詳しいんですね」
「あははっ、耳が痛いなぁ。京にいた頃から護衛であちこちの花街に出向いていましたから、こういう場にはそれなりに。とは言っても……今は僕の意志で来ていますけどね。僕がいつも揚がるのは向かいの店です」
「揚がる……じゃあ……やっぱり……」
沖田が揚がり、女を……そんな場面を想像を廻らせてしまい、戸惑いと恥ずかしさで赤い顔を懸命に振った。
「こっちですよ」と誘う仕種に反応がなく、沖田はくすりと笑って赤い顔を覗き込んだ。
「どうしました」
「いえっ、だって……いいですよ……」
「気になるのでしょう」
どんな所なのか、本当に沖田が通っているのか、妓はどんな人達がいるのか。
気になって仕方が無い。しかし近付いてはいけない気もする。
「でも……」
「格子から覗くなんて皆していますよ、女の人だってします」
「でも……総司さんがいつも行かれるお店なんですよね、だったら私が一緒にいたらなんと言うか……悪いじゃありませんか」
遊女といえども女だ。相手は客、それでも普段の相手が女を連れてやってくるのは心地良くないだろう。
「優しいなぁ、確かにそうかもしれませんね。でもここで働く女の人はね、そういった事も受け入れなきゃならないんです」
一時の淋しさを埋める為には相手にも割り切ってもらわないと困る、そう言いたいのか。
沖田にしては冷たい物言いだ。
「辛いお仕事ですね……」
「そうかもしれませんね。さぁ折角ここまで来たのですから」
沖田に促され見世格子に一歩二歩と近付き、その中が見える位置まで足を動かした。
昼見世は客が少ないからか、中にいる遊女は妓楼の大きさに対して少なく感じられる。中にいる妓達も真面目に座るものは少なく、それぞれに遊んでも見える。
まだ何人もいるのだろうか……
ぼんやり見ていると、ふと一人の遊女と目が合い、妖しげな微笑を受けて夢主は思わず後ろに退いた。
「あのっ!やっぱり私やめておきます!」