12.秘め事
夢主名前設定
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夢主は朝の片付けを済ませると、沖田の稽古を手伝い、早めの昼飯を済ませて道場を抜け出した。
沖田に対する態度がどこかぎこちなく申し訳なさを感じる夢主だったが、当の沖田は何も気にすること無く振舞っていた。
それどころか、秘密を持っている様子をおかく感じ、可愛いと見守っていた。
道場を出た夢主は小国診療所への道を途中で逸れ、妙のいる赤べこへ向かった。
返す着物を入れた包みを手にしている。
「こんにちは、妙さん」
「あぁ!来てくれたんね!」
牛鍋屋へ改装が始まっていたらと心配したが、店は以前と同じ雑貨屋として営業していた。
扉を開くと店番をする妙が夢主に気付き、嬉しそうに笑った。
「着物ありがとうございました」
「いつでもええんのよ、わざわざありがとうねぇ」
夢主より少し年若い妙だが、落ち着いた性格はその差を感じさせない。
「あの……夢主はん……で合ぅてるやろか」
「はい、すみません、お世話になったのに名乗ってませんでしたね。夢主と申します」
藤田夢主と名乗って良いものか……躊躇した夢主は下の名だけを伝えた。
「ごめんけど夢主はんの着物、洗って干したんやけど泥汚れがしつこぉてな、二回目洗ってまだ干してるんよ、せっかく来てもらったのに悪いなぁ」
「いえ、こちらこそ丁寧に洗っていただいてすみません」
「えぇのよ」
妙に着物を渡して話していると、互いに気が合うのが分かる。
気付けばクスクスと揃って肩を揺らしていた。
「なぁ夢主はん、この辺の人なん?なんかあんまり慣れてない気がするんやけど」
「あ……東京に来て何年か経つんですけど……」
この世界へやって来てから六年、今の暮らしに慣れたと思ったがやはり浮いているのか。
東京に出てきてからは三年も経っていない。蓄えられた知識があるとは言え、長年住んだ者と同じとは言えないだろう。
「別にえぇのよ、ごめんな。このご時勢やもん、人に言いたない事があってもおかしくないんよ」
「ありがとうございます、妙さんはお優しいんですね」
「いややわぁ夢主はんたら」
「ふふっ、私、妙さんの事とっても好きになっちゃいました」
「まぁ、そんな事!嬉しすぎてお父はんに自慢してしまうわ!!」
妙も初対面の時から夢主に好感を抱いていた。
純白の笑みで好意を伝えられた妙は素直に舞い上がり、同じく夢主を気に入っている父に自慢するとはしゃいだ。
「なぁ、今度うちの店番が無い日に一緒に浅草で遊ばへん?うち、夢主はんと仲良くなりたいわぁ」
「私こそっ、妙さんと浅草歩いてみたいです」
「それなら、決まりやね!」
ふふふっ、夢主と妙の笑い声が重なって響く。
似た年頃の妙と話して笑っていると、斎藤から得る幸せとはまた違う温かさを感じる。忘れていた何かを思い出すようだった。
沖田に対する態度がどこかぎこちなく申し訳なさを感じる夢主だったが、当の沖田は何も気にすること無く振舞っていた。
それどころか、秘密を持っている様子をおかく感じ、可愛いと見守っていた。
道場を出た夢主は小国診療所への道を途中で逸れ、妙のいる赤べこへ向かった。
返す着物を入れた包みを手にしている。
「こんにちは、妙さん」
「あぁ!来てくれたんね!」
牛鍋屋へ改装が始まっていたらと心配したが、店は以前と同じ雑貨屋として営業していた。
扉を開くと店番をする妙が夢主に気付き、嬉しそうに笑った。
「着物ありがとうございました」
「いつでもええんのよ、わざわざありがとうねぇ」
夢主より少し年若い妙だが、落ち着いた性格はその差を感じさせない。
「あの……夢主はん……で合ぅてるやろか」
「はい、すみません、お世話になったのに名乗ってませんでしたね。夢主と申します」
藤田夢主と名乗って良いものか……躊躇した夢主は下の名だけを伝えた。
「ごめんけど夢主はんの着物、洗って干したんやけど泥汚れがしつこぉてな、二回目洗ってまだ干してるんよ、せっかく来てもらったのに悪いなぁ」
「いえ、こちらこそ丁寧に洗っていただいてすみません」
「えぇのよ」
妙に着物を渡して話していると、互いに気が合うのが分かる。
気付けばクスクスと揃って肩を揺らしていた。
「なぁ夢主はん、この辺の人なん?なんかあんまり慣れてない気がするんやけど」
「あ……東京に来て何年か経つんですけど……」
この世界へやって来てから六年、今の暮らしに慣れたと思ったがやはり浮いているのか。
東京に出てきてからは三年も経っていない。蓄えられた知識があるとは言え、長年住んだ者と同じとは言えないだろう。
「別にえぇのよ、ごめんな。このご時勢やもん、人に言いたない事があってもおかしくないんよ」
「ありがとうございます、妙さんはお優しいんですね」
「いややわぁ夢主はんたら」
「ふふっ、私、妙さんの事とっても好きになっちゃいました」
「まぁ、そんな事!嬉しすぎてお父はんに自慢してしまうわ!!」
妙も初対面の時から夢主に好感を抱いていた。
純白の笑みで好意を伝えられた妙は素直に舞い上がり、同じく夢主を気に入っている父に自慢するとはしゃいだ。
「なぁ、今度うちの店番が無い日に一緒に浅草で遊ばへん?うち、夢主はんと仲良くなりたいわぁ」
「私こそっ、妙さんと浅草歩いてみたいです」
「それなら、決まりやね!」
ふふふっ、夢主と妙の笑い声が重なって響く。
似た年頃の妙と話して笑っていると、斎藤から得る幸せとはまた違う温かさを感じる。忘れていた何かを思い出すようだった。