11.心配性な人
夢主名前設定
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「確かに他の連中とは違うと認めるが、奴の個人的な感情に関わるつもりは無い。俺にはどうにも出来んからだ。お前はどうしたいんだ。どうにか出来るのか」
「それは……」
斎藤は愛おしんで何度も髪を撫でるが、夢主の気は落ち着かない。
夢主は鍛えられた胸元に無意識に手を添え、顔をうずめた。
表情は分からなくなったが、それでも斎藤は優しい瞳を向けたまま髪を撫でている。
「一さんは今夜はご機嫌ですね」
「そうか」
「はい、楽しそう……」
「まぁひとつ面白い話が入ってな。仕事だ」
「そうですか……」
斎藤は黙ってしまった夢主の髪を尚もゆっくりと撫で続けた。体が弱っている時は心も弱るものだ。
一過性の心配事だろうと妻を慰めた。
「あまり深入りするなよ」
つと体を離し、前髪を除けて額に唇を落とすと、夢主が小さく反応を見せた。
「お前がそうやって誰かを気に掛けるのは別に構わん」
深入りは望まないが、誰かを心配する事は構わない。
どういう事ですか、と首を傾げる夢主に、斎藤はフッと息のような短い笑い声を聞かせた。
「お前はそういう優しい所がいいんだろう」
思わぬ言葉にぽっと熱くなる顔、反射的に顔を上げて目が合い、夢主は逸らせなくなってしまった。
目の前の細い瞳がほんのりと緩んだ。
「だがあまり肩入れしているのを見ると流石に妬けるな」
「一さん」
「淋しい男に近寄り過ぎるな、刺激するな」
「じゃあどうすれば……」
訊ねると髪を撫でる斎藤の手が止まり、指先が頬に滑り下りて、夢主の胸は緊張で高鳴り、激しい鼓動が体中に響き始めた。
部屋に響く時計の音が聞こえなっていく。
「彼が自分でどうにかするしかないだろう」
「自分で……」
そうだ……
斎藤は囁きながら柔らかな夢主の唇に目を移した。
薄っすら開いている物言いたげな唇。
「……家族……」
「何」
塞いでしまおうと見つめる唇が小さく動き、夢主が漏らした言葉。
意識が唇に向いていた斎藤は聞き返した。
「家族みたいに……温かい場所になって欲しいんです。総司さんにとって……一さんや私の存在が」
そんな答えを導くとは考えていなかった斎藤は、目を伏せて夢主の言葉を反芻した。
「土方さんや近藤さんがそうだったみたいに……家族のように温まって欲しいですし、頼って欲しいです」
「家族か。一度は惚れた女が相手でそれが出来るかどうか、俺には分からん」
「一さんなら、もし総司さんの立場だったらどう感じるんですか」
「さぁな、だが俺なら……昼間の時点で押し倒してるかも知れんな」
「もぅっ……」
ゆっくりと覆いかぶさりながら低い声を響かせる斎藤を、夢主は真っ直ぐ見上げた。
闇に慣れた夢主の瞳に、切れ長のくせに優しい瞳がきらりと光って見える。
「物憂げな人妻が横たわる布団、一度は想った相手、夫は夜まで戻らない。俺なら遠慮しない、据え膳食わぬはなんとやらだ」
「一さんだけですよ、そんなの……」
夢主の言い返しを否定するように、斎藤は細い手首を力強く押さえつけた。
「沖田君はまぁ珍しい男だろう。実直で、想いや形は違えど、お前を今も昔も大切にしてくれている。彼みたいな男は珍しいと覚えておいてくれるか、優しい男に近付き過ぎるな」
「優しい……人……」
抵抗もせずに斎藤の言葉を理解しようと首を傾げる夢主の困り顔に、布団に押さえ付ける力が弱まった。
「あぁ。淋しい男、優しい男、幸い今は周りに妙な輩はいないようだがな」
「ふふっ……心配性……」
「阿呆」
妻の心配をして何が悪い、斎藤は自分を笑った夢主の口をそっと塞いだ。
何も考えられないようにしてやるから、頭の中を真っ白にして朝を迎えればいい。朝になったら悩みを晴らす糸口を与えてやる。
……だからそれまでは、忘れていろ……
斎藤は夢主から思考する力を徐々に奪っていった。
「それは……」
斎藤は愛おしんで何度も髪を撫でるが、夢主の気は落ち着かない。
夢主は鍛えられた胸元に無意識に手を添え、顔をうずめた。
表情は分からなくなったが、それでも斎藤は優しい瞳を向けたまま髪を撫でている。
「一さんは今夜はご機嫌ですね」
「そうか」
「はい、楽しそう……」
「まぁひとつ面白い話が入ってな。仕事だ」
「そうですか……」
斎藤は黙ってしまった夢主の髪を尚もゆっくりと撫で続けた。体が弱っている時は心も弱るものだ。
一過性の心配事だろうと妻を慰めた。
「あまり深入りするなよ」
つと体を離し、前髪を除けて額に唇を落とすと、夢主が小さく反応を見せた。
「お前がそうやって誰かを気に掛けるのは別に構わん」
深入りは望まないが、誰かを心配する事は構わない。
どういう事ですか、と首を傾げる夢主に、斎藤はフッと息のような短い笑い声を聞かせた。
「お前はそういう優しい所がいいんだろう」
思わぬ言葉にぽっと熱くなる顔、反射的に顔を上げて目が合い、夢主は逸らせなくなってしまった。
目の前の細い瞳がほんのりと緩んだ。
「だがあまり肩入れしているのを見ると流石に妬けるな」
「一さん」
「淋しい男に近寄り過ぎるな、刺激するな」
「じゃあどうすれば……」
訊ねると髪を撫でる斎藤の手が止まり、指先が頬に滑り下りて、夢主の胸は緊張で高鳴り、激しい鼓動が体中に響き始めた。
部屋に響く時計の音が聞こえなっていく。
「彼が自分でどうにかするしかないだろう」
「自分で……」
そうだ……
斎藤は囁きながら柔らかな夢主の唇に目を移した。
薄っすら開いている物言いたげな唇。
「……家族……」
「何」
塞いでしまおうと見つめる唇が小さく動き、夢主が漏らした言葉。
意識が唇に向いていた斎藤は聞き返した。
「家族みたいに……温かい場所になって欲しいんです。総司さんにとって……一さんや私の存在が」
そんな答えを導くとは考えていなかった斎藤は、目を伏せて夢主の言葉を反芻した。
「土方さんや近藤さんがそうだったみたいに……家族のように温まって欲しいですし、頼って欲しいです」
「家族か。一度は惚れた女が相手でそれが出来るかどうか、俺には分からん」
「一さんなら、もし総司さんの立場だったらどう感じるんですか」
「さぁな、だが俺なら……昼間の時点で押し倒してるかも知れんな」
「もぅっ……」
ゆっくりと覆いかぶさりながら低い声を響かせる斎藤を、夢主は真っ直ぐ見上げた。
闇に慣れた夢主の瞳に、切れ長のくせに優しい瞳がきらりと光って見える。
「物憂げな人妻が横たわる布団、一度は想った相手、夫は夜まで戻らない。俺なら遠慮しない、据え膳食わぬはなんとやらだ」
「一さんだけですよ、そんなの……」
夢主の言い返しを否定するように、斎藤は細い手首を力強く押さえつけた。
「沖田君はまぁ珍しい男だろう。実直で、想いや形は違えど、お前を今も昔も大切にしてくれている。彼みたいな男は珍しいと覚えておいてくれるか、優しい男に近付き過ぎるな」
「優しい……人……」
抵抗もせずに斎藤の言葉を理解しようと首を傾げる夢主の困り顔に、布団に押さえ付ける力が弱まった。
「あぁ。淋しい男、優しい男、幸い今は周りに妙な輩はいないようだがな」
「ふふっ……心配性……」
「阿呆」
妻の心配をして何が悪い、斎藤は自分を笑った夢主の口をそっと塞いだ。
何も考えられないようにしてやるから、頭の中を真っ白にして朝を迎えればいい。朝になったら悩みを晴らす糸口を与えてやる。
……だからそれまでは、忘れていろ……
斎藤は夢主から思考する力を徐々に奪っていった。