1.コトハジメ
夢主名前設定
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「二階にお部屋が二つも……」
「寝るのは上か、下の一部屋は一応は客間だな。勝手場に近い部屋は食事と、俺の仕事もそこでするつもりだ。お前が家でする用事も下が多いだろう、俺も同じ部屋にいるさ」
「一さん……ふふっ、ありがとうございます。でも、寝るのも……一さんがお仕事する部屋ではいけませんか、お仕事遅くなっても構いません。家にいる時は夜もお傍にいたいんです……」
夢主の淋しがりな要望に、斎藤は目を丸くして大きな瞳を見つめ返した。
「明るくて眠れんかもしれんぞ」
「構わないです、お布団から一さんを眺めています」
「フンッ、阿呆ぅ。寝る時は先に寝ろ。それが約束できるなら…………いいぞ」
斎藤の甘い声に夢主はほのかに色づいた顔で頷いた。
恥ずかしさを誤魔化したい夢主は、踏み石に置かれた庭下駄に足を入れて、庭に飛び出した。
「凄いですね、本当に!お庭も充分過ぎる広さです。お洗濯物干すのにも困りませんっ!」
にこりと首を傾げる夢主を見て、斎藤はふと思い出したように夢主を縁側に呼び戻した。
「どうしたんですか」
「すまん、お前に一つ告げねばならん事が」
「私に……」
「待ってろ」
縁側に戻ってきた夢主は腰掛けて首を傾げて待っていると、斎藤が小さな紙の包みを持って戻った。
「これだ。今も制服の上着に入れて持ち歩いていたんだが」
斎藤が白い紙を開くと、桜色の猪目の片割れが幾つかに割れていた。
「すまないな、恐らく戦の最中に衝撃のせいだろう、気付いた時には砕けてしまった」
「そうでしたか……実は私のも……」
へへっと苦笑いを見せて懐から取り出した夢主の猪目の片割れにも雪花状のひびが入っていた。
「私の作りが甘かったせいですね……でも、もしかしたら身代わりになってくれたのかも……しれません」
「身代わり」
「お守りとかお札とか、持ち主の代わりに壊れて怪我や病の身代わりになるっていう……」
「成る程な、俺の身代わりに……か」
「はい、そう思うとなんだか……割れた猪目がとても愛おしいです」
「フッ、そうだな。これは一緒にしておくか」
「えっ」
「俺のとお前のと、一つにしてどこかにしまっておくか」
「一緒に……そうですね、一緒に……一つに戻してあげましょう」
思いがけない優しい提案に夢主は頷いた。同じ紙に包み、大切に置いておこう。そのうちに良い小箱を見つけたら、そこに移そう。
そう約束して二人は桜の花びらを模した猪目の陶器を一つにまとめ、紙に包んだ。
「お前の鏡台に入れておけ」
「はい」
「それから、もうひとつついでに見せておく。来い」
「何でしょうか」
「まぁ来い。洗濯物と聞いて思い出したんだよ」
まだ足を庭に下ろしていた夢主を、斎藤は指先をくいくいっと二度曲げて家に上がるように誘った。
「寝るのは上か、下の一部屋は一応は客間だな。勝手場に近い部屋は食事と、俺の仕事もそこでするつもりだ。お前が家でする用事も下が多いだろう、俺も同じ部屋にいるさ」
「一さん……ふふっ、ありがとうございます。でも、寝るのも……一さんがお仕事する部屋ではいけませんか、お仕事遅くなっても構いません。家にいる時は夜もお傍にいたいんです……」
夢主の淋しがりな要望に、斎藤は目を丸くして大きな瞳を見つめ返した。
「明るくて眠れんかもしれんぞ」
「構わないです、お布団から一さんを眺めています」
「フンッ、阿呆ぅ。寝る時は先に寝ろ。それが約束できるなら…………いいぞ」
斎藤の甘い声に夢主はほのかに色づいた顔で頷いた。
恥ずかしさを誤魔化したい夢主は、踏み石に置かれた庭下駄に足を入れて、庭に飛び出した。
「凄いですね、本当に!お庭も充分過ぎる広さです。お洗濯物干すのにも困りませんっ!」
にこりと首を傾げる夢主を見て、斎藤はふと思い出したように夢主を縁側に呼び戻した。
「どうしたんですか」
「すまん、お前に一つ告げねばならん事が」
「私に……」
「待ってろ」
縁側に戻ってきた夢主は腰掛けて首を傾げて待っていると、斎藤が小さな紙の包みを持って戻った。
「これだ。今も制服の上着に入れて持ち歩いていたんだが」
斎藤が白い紙を開くと、桜色の猪目の片割れが幾つかに割れていた。
「すまないな、恐らく戦の最中に衝撃のせいだろう、気付いた時には砕けてしまった」
「そうでしたか……実は私のも……」
へへっと苦笑いを見せて懐から取り出した夢主の猪目の片割れにも雪花状のひびが入っていた。
「私の作りが甘かったせいですね……でも、もしかしたら身代わりになってくれたのかも……しれません」
「身代わり」
「お守りとかお札とか、持ち主の代わりに壊れて怪我や病の身代わりになるっていう……」
「成る程な、俺の身代わりに……か」
「はい、そう思うとなんだか……割れた猪目がとても愛おしいです」
「フッ、そうだな。これは一緒にしておくか」
「えっ」
「俺のとお前のと、一つにしてどこかにしまっておくか」
「一緒に……そうですね、一緒に……一つに戻してあげましょう」
思いがけない優しい提案に夢主は頷いた。同じ紙に包み、大切に置いておこう。そのうちに良い小箱を見つけたら、そこに移そう。
そう約束して二人は桜の花びらを模した猪目の陶器を一つにまとめ、紙に包んだ。
「お前の鏡台に入れておけ」
「はい」
「それから、もうひとつついでに見せておく。来い」
「何でしょうか」
「まぁ来い。洗濯物と聞いて思い出したんだよ」
まだ足を庭に下ろしていた夢主を、斎藤は指先をくいくいっと二度曲げて家に上がるように誘った。