14.粛清の日
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目を開くと、衝立の向こうで人が動く気配がする。
……なんだろう……誰……っ斎藤さん!……
意識を覚醒させると同時に、既に朝稽古の準備を終えた斎藤が顔を覗かせた。
「起きたか」
「ぁっ、お早うございますっ」
慌てて夢主は起き上がり布団を片付けようとした。
「慌てなくていい。急ぎなら起こしていたさ。それより今日はそれを着ろ」
斎藤が示した場所には、いつもと色合いの違う着物が置いてあった。
「これは……」
「男物だ。色々と面倒があるのでな。今日はそれで出かけてもらう。いいな」
夢主は素直に分かりましたと着物を受け取った。
「傷は痛むか」
「……昨日よりは落ち着いています。ありがとうございます」
本当は昨日と変わらない痛みを感じる。しかし気にしてくれる事が嬉しい。
返事をすると痛みが和らぐ気がした。
「今日は昼飯を取ったらすぐに出掛けるからな。そのつもりでいろ」
「はいっ」
そう告げると斎藤は朝稽古に向かった。
いつも通り隊士達が続々と集まり、激しい声と木刀の鬩ぎあう音がこだまし始める。
「次っ!」
「まだだっ!!」
「小手先で打ち込むな!!体で来い!!」
「しっかり見ろ!死にたいのか!!」
いつにも増して厳しい沖田の声が響く。
凄みある目付きに隊士達も必死に応じていた。
「総司のやつ、気合入ってるな……」
「ぁあ、まるで自分に向かって言ってるみたいだぜ……」
平隊士を叩きつけるように稽古をつける沖田を、原田と永倉は見守った。
斎藤はいつも通りの稽古を隊士達に施していた。
稽古が終わり斎藤が部屋に戻ると、夢主が着替えを済ませていた。
髪をいつもより高く結び、その見た目は少年剣士といった様相だ。
「フっ、悪くはないぞ」
そうは言うが口元がにやけている。
「わ、笑いましたね!そんなに似合いませんか……」
夢主が両手で袴を軽く持ち上げ確認してみる。着方が間違っているのだろうか。
「いや、むしろ似合っている。新選組の隊士だと言われれば無理があるがな、ククッ」
斎藤は嬉しそうに言った。
そして笑いを隠すように話題を変えた。色小姓のようだとはさすがに言えなかったのだ。
「刀だが、俺のを一振り貸してやる。それを差して行け」
「ぇ……」
「刀無しでその恰好では歩けまい」
「そうなのですか……」
まさか帯刀までするとは思わず、夢主は戸惑い気味に応えた。
昼の食事も終え、いよいよ屯所を出る時。
自ずと気が引き締まる。
「行くぞ」
「はぃ」
短く返事をして斎藤の後に続いた。
斎藤に借りた刀が重たい。慣れない重さはとても歩きにくく、意識して真っ直ぐ歩くよう努めた。
足に当たるし左右に振れる。皆二本も差してよく普通に歩けるものだと夢主は感心した。
左側に重心が行くので、時折鉄扇で叩かれた左肩が傷む。
出るのはやはり裏口からだった。
「ちょぃと待っておくれやす」
木戸の前にやってきた時、物陰から声が掛かった。
……なんだろう……誰……っ斎藤さん!……
意識を覚醒させると同時に、既に朝稽古の準備を終えた斎藤が顔を覗かせた。
「起きたか」
「ぁっ、お早うございますっ」
慌てて夢主は起き上がり布団を片付けようとした。
「慌てなくていい。急ぎなら起こしていたさ。それより今日はそれを着ろ」
斎藤が示した場所には、いつもと色合いの違う着物が置いてあった。
「これは……」
「男物だ。色々と面倒があるのでな。今日はそれで出かけてもらう。いいな」
夢主は素直に分かりましたと着物を受け取った。
「傷は痛むか」
「……昨日よりは落ち着いています。ありがとうございます」
本当は昨日と変わらない痛みを感じる。しかし気にしてくれる事が嬉しい。
返事をすると痛みが和らぐ気がした。
「今日は昼飯を取ったらすぐに出掛けるからな。そのつもりでいろ」
「はいっ」
そう告げると斎藤は朝稽古に向かった。
いつも通り隊士達が続々と集まり、激しい声と木刀の鬩ぎあう音がこだまし始める。
「次っ!」
「まだだっ!!」
「小手先で打ち込むな!!体で来い!!」
「しっかり見ろ!死にたいのか!!」
いつにも増して厳しい沖田の声が響く。
凄みある目付きに隊士達も必死に応じていた。
「総司のやつ、気合入ってるな……」
「ぁあ、まるで自分に向かって言ってるみたいだぜ……」
平隊士を叩きつけるように稽古をつける沖田を、原田と永倉は見守った。
斎藤はいつも通りの稽古を隊士達に施していた。
稽古が終わり斎藤が部屋に戻ると、夢主が着替えを済ませていた。
髪をいつもより高く結び、その見た目は少年剣士といった様相だ。
「フっ、悪くはないぞ」
そうは言うが口元がにやけている。
「わ、笑いましたね!そんなに似合いませんか……」
夢主が両手で袴を軽く持ち上げ確認してみる。着方が間違っているのだろうか。
「いや、むしろ似合っている。新選組の隊士だと言われれば無理があるがな、ククッ」
斎藤は嬉しそうに言った。
そして笑いを隠すように話題を変えた。色小姓のようだとはさすがに言えなかったのだ。
「刀だが、俺のを一振り貸してやる。それを差して行け」
「ぇ……」
「刀無しでその恰好では歩けまい」
「そうなのですか……」
まさか帯刀までするとは思わず、夢主は戸惑い気味に応えた。
昼の食事も終え、いよいよ屯所を出る時。
自ずと気が引き締まる。
「行くぞ」
「はぃ」
短く返事をして斎藤の後に続いた。
斎藤に借りた刀が重たい。慣れない重さはとても歩きにくく、意識して真っ直ぐ歩くよう努めた。
足に当たるし左右に振れる。皆二本も差してよく普通に歩けるものだと夢主は感心した。
左側に重心が行くので、時折鉄扇で叩かれた左肩が傷む。
出るのはやはり裏口からだった。
「ちょぃと待っておくれやす」
木戸の前にやってきた時、物陰から声が掛かった。