13.血の臭い
夢主名前設定
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「お梅さんっ」
夢主が涙声で名を叫ぶと、芹沢には分らぬよう、小さくニコリと会釈が返ってきた。
「芹沢はん、こないなこと幾らなんでも無体やゎ!!他にもおなごはん匿ぅてんのんは、うちかて知ってます!!せやけど芹沢はん!!」
お梅の余りの迫力に芹沢の手が緩んだ。
不機嫌さと欲情で満ちていた顔から力が引いていく。
「おぼこい素人の巫女はんかも知れへんおなごに手ぇ掛けよぅやなんて、いくら芹沢はんでも、したらあかんことがありますやろ!!堪忍しとくれやす!!……後生どす」
捲くし立てるように言うと、お梅はそのまま泣き崩れてしまった。
「後生どす……」
突然現れたお梅の、おっとりとした普段の静かな振る舞いからかけ離れた狼狽ぶりに、流石の芹沢も顔色を変えた。
「お梅……ちぃっ、貴様!お梅に免じて勘弁してやる!だが奴らに話しでもしてみろ!局長の儂に隠し事を企てた罪で皆揃って割腹、いや首斬りじゃ!!」
脅す芹沢だが、先程までの威圧感はなかった。
横目でお梅を見ると、涙を流しながらも微かに笑み、声は出さずに艶やかな朱色の唇を動かして「はよぉいきぃ」と促してくれた。
夢主は逃げるように前川邸へ駆け戻った。
膝や腕ががくがくと大きく震えている。
井戸の前で肌蹴た着物を直し、水を汲み上げようと釣瓶(つるべ)を落とした。
滑車を回そうと綱を引いた瞬間、肩に激しい痛みが走り手を離してしまった。
パシャンと水面に釣瓶が当たる音が鳴る。夢主は黙ってもう一度震える手を綱に掛けた。
その時、屯所へ戻った原田が夢主を見つけ、やって来た。
「よぉ、夢主!……なんか顔色悪いな、大丈夫か」
そう言うと夢主に代わって綱を手にした。
するすると釣瓶を引き上げ水を汲み上げる。原田の軽々とした動作に力強さを感じると共に、夢主は自らの非力さを実感した。
「ほらよ。どうした?喉でも渇いたか?」
夢主は黙って頷いた。
柄杓で水を掬おうとするが、手が大きく震えて少ししか掬えない。
「おぃ、どうしたよ!!震えてるじゃねぇか」
原田は優しく顔を覗き込むと、震えが落ち着くように手を添えた。
大きな手に包まれるとそれだけで心強い。
しかし夢主は辛そうな笑顔を見せて温かい手を除けるように水を口に運んだ。
「ありがとうございます、でも、なんでもないんです……ちょっと……調子が悪くて……」
水を口に少し含み、原田を振り払うようにお辞儀をして斎藤の部屋へ戻っていった。
原田は心配で夢主が去っていくさまを見つめていた。
おぼつかない足取りだ。
「何かあったのか」
そこへ斎藤が門をくぐり戻ってきた。
姿を見つけた原田は急いで駆け寄った。
夢主が涙声で名を叫ぶと、芹沢には分らぬよう、小さくニコリと会釈が返ってきた。
「芹沢はん、こないなこと幾らなんでも無体やゎ!!他にもおなごはん匿ぅてんのんは、うちかて知ってます!!せやけど芹沢はん!!」
お梅の余りの迫力に芹沢の手が緩んだ。
不機嫌さと欲情で満ちていた顔から力が引いていく。
「おぼこい素人の巫女はんかも知れへんおなごに手ぇ掛けよぅやなんて、いくら芹沢はんでも、したらあかんことがありますやろ!!堪忍しとくれやす!!……後生どす」
捲くし立てるように言うと、お梅はそのまま泣き崩れてしまった。
「後生どす……」
突然現れたお梅の、おっとりとした普段の静かな振る舞いからかけ離れた狼狽ぶりに、流石の芹沢も顔色を変えた。
「お梅……ちぃっ、貴様!お梅に免じて勘弁してやる!だが奴らに話しでもしてみろ!局長の儂に隠し事を企てた罪で皆揃って割腹、いや首斬りじゃ!!」
脅す芹沢だが、先程までの威圧感はなかった。
横目でお梅を見ると、涙を流しながらも微かに笑み、声は出さずに艶やかな朱色の唇を動かして「はよぉいきぃ」と促してくれた。
夢主は逃げるように前川邸へ駆け戻った。
膝や腕ががくがくと大きく震えている。
井戸の前で肌蹴た着物を直し、水を汲み上げようと釣瓶(つるべ)を落とした。
滑車を回そうと綱を引いた瞬間、肩に激しい痛みが走り手を離してしまった。
パシャンと水面に釣瓶が当たる音が鳴る。夢主は黙ってもう一度震える手を綱に掛けた。
その時、屯所へ戻った原田が夢主を見つけ、やって来た。
「よぉ、夢主!……なんか顔色悪いな、大丈夫か」
そう言うと夢主に代わって綱を手にした。
するすると釣瓶を引き上げ水を汲み上げる。原田の軽々とした動作に力強さを感じると共に、夢主は自らの非力さを実感した。
「ほらよ。どうした?喉でも渇いたか?」
夢主は黙って頷いた。
柄杓で水を掬おうとするが、手が大きく震えて少ししか掬えない。
「おぃ、どうしたよ!!震えてるじゃねぇか」
原田は優しく顔を覗き込むと、震えが落ち着くように手を添えた。
大きな手に包まれるとそれだけで心強い。
しかし夢主は辛そうな笑顔を見せて温かい手を除けるように水を口に運んだ。
「ありがとうございます、でも、なんでもないんです……ちょっと……調子が悪くて……」
水を口に少し含み、原田を振り払うようにお辞儀をして斎藤の部屋へ戻っていった。
原田は心配で夢主が去っていくさまを見つめていた。
おぼつかない足取りだ。
「何かあったのか」
そこへ斎藤が門をくぐり戻ってきた。
姿を見つけた原田は急いで駆け寄った。