13.血の臭い
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その頃、朝稽古を終えた斎藤は土方に呼ばれ、部屋に同行していた。
「こっちは首尾よく行った。斎藤、お前も難儀だったな」
真面目な顔で土方が斎藤を労った。
最初の一言を終えた途端、土方は身を乗り出した。
「で、どうだったよ」
「何がですか」
小声で問う土方に斎藤は眉をひそめた。
「お膳立てしてやっただろう、やったのか!どうなんだよ!」
「何を、土方さん」
身を乗り出す土方に、斎藤はやはりかと歪んだ顔を見せた。
「何もありませんよ」
「おい本気か、なんもしてねぇのかよ」
「女の形をした玩具じゃぁあるまいし、あいつは嫌がるでしょう」
「斎藤の口からそんな言葉が出てくるとはな。お前、総司みたいなこと言ってるぞ」
沖田みたいと言われ、斎藤はまさかと苦々しく笑った。
「沖田君は初心で手を出さないが、俺は任務を全うしただけです」
フンと鼻を鳴らして顔を逸らした。
副長は尊敬しているがこの手の話に付き合う気はない。
「俺はてっきり本懐を遂げて帰ってくるもんだと……斎藤、お前も夢主の事が気になってんだろ。あいつもお前を相当気に掛けてるだろうよ。じゃなかったら俺はあいつをとっくに総司の部屋に割り当ててるぜ」
斎藤は関係ありませんねとばかりに鼻で笑った。
「あんな人のいい総司の好意を受けずにお前を見てるんだぜ、ちょっとは応えてやれよ。言っとくが総司だって相当もてるんだぞ、あれでいてよ」
愛くるしい笑顔で優しく気配りのある誠実な沖田は、近所の町娘達の中で土方と一番人気を争っている。
また、誰にも好意的な沖田と同様、夢主も皆に分け隔てなく接している。好意的に見えてもそういった感情が乗っているとは限らない。
「あいつはそんな事、望んでいないでしょう」
もういいですかと斎藤が立ち上がると、土方は静かに凄んだ。
「俺達はいつ死んでもおかしくない身だ。…………悔いは残すなよ」
斎藤は暫し睨み返すが、それ以上何も言わず部屋を出ていった。
自室に近付くと何やら騒々しい声が聞こえてくる。
機嫌を損ねて戻った斎藤はちっと舌打ちをしてから顔を出した。
「人の部屋で揃いも揃って何をしている」
「おぅ斎藤!ご苦労だったな!」
「それは原田さん達も、お疲れ様です」
ぶっきらぼうに言い放つが、目上の原田から労いの言葉を受け、素直に応じた。
だがすぐに斎藤の顔色が変わった。不満や怒りではない。
「申し訳ないですが夢主は昨日から体調が優れないので、この辺で」
斎藤は夢主の異変に気付き、皆に解散するよう頼んだ。
部屋を賑わせていた男達は驚いた。心配そうに夢主を窺う。
「どうした、夜の間寒かったんじゃねぇか」
「夢主ちゃん、また来るね、ゆっくり休んで」
次々に声を掛けて出ていく男達。
夢主は口元を隠したまま静かに頷いた。
「大丈夫か。ちょっと待ってろ」
縮こまって動かない夢主。斎藤は周知が必要だと廊下に出た皆を追いかけた。
「こっちは首尾よく行った。斎藤、お前も難儀だったな」
真面目な顔で土方が斎藤を労った。
最初の一言を終えた途端、土方は身を乗り出した。
「で、どうだったよ」
「何がですか」
小声で問う土方に斎藤は眉をひそめた。
「お膳立てしてやっただろう、やったのか!どうなんだよ!」
「何を、土方さん」
身を乗り出す土方に、斎藤はやはりかと歪んだ顔を見せた。
「何もありませんよ」
「おい本気か、なんもしてねぇのかよ」
「女の形をした玩具じゃぁあるまいし、あいつは嫌がるでしょう」
「斎藤の口からそんな言葉が出てくるとはな。お前、総司みたいなこと言ってるぞ」
沖田みたいと言われ、斎藤はまさかと苦々しく笑った。
「沖田君は初心で手を出さないが、俺は任務を全うしただけです」
フンと鼻を鳴らして顔を逸らした。
副長は尊敬しているがこの手の話に付き合う気はない。
「俺はてっきり本懐を遂げて帰ってくるもんだと……斎藤、お前も夢主の事が気になってんだろ。あいつもお前を相当気に掛けてるだろうよ。じゃなかったら俺はあいつをとっくに総司の部屋に割り当ててるぜ」
斎藤は関係ありませんねとばかりに鼻で笑った。
「あんな人のいい総司の好意を受けずにお前を見てるんだぜ、ちょっとは応えてやれよ。言っとくが総司だって相当もてるんだぞ、あれでいてよ」
愛くるしい笑顔で優しく気配りのある誠実な沖田は、近所の町娘達の中で土方と一番人気を争っている。
また、誰にも好意的な沖田と同様、夢主も皆に分け隔てなく接している。好意的に見えてもそういった感情が乗っているとは限らない。
「あいつはそんな事、望んでいないでしょう」
もういいですかと斎藤が立ち上がると、土方は静かに凄んだ。
「俺達はいつ死んでもおかしくない身だ。…………悔いは残すなよ」
斎藤は暫し睨み返すが、それ以上何も言わず部屋を出ていった。
自室に近付くと何やら騒々しい声が聞こえてくる。
機嫌を損ねて戻った斎藤はちっと舌打ちをしてから顔を出した。
「人の部屋で揃いも揃って何をしている」
「おぅ斎藤!ご苦労だったな!」
「それは原田さん達も、お疲れ様です」
ぶっきらぼうに言い放つが、目上の原田から労いの言葉を受け、素直に応じた。
だがすぐに斎藤の顔色が変わった。不満や怒りではない。
「申し訳ないですが夢主は昨日から体調が優れないので、この辺で」
斎藤は夢主の異変に気付き、皆に解散するよう頼んだ。
部屋を賑わせていた男達は驚いた。心配そうに夢主を窺う。
「どうした、夜の間寒かったんじゃねぇか」
「夢主ちゃん、また来るね、ゆっくり休んで」
次々に声を掛けて出ていく男達。
夢主は口元を隠したまま静かに頷いた。
「大丈夫か。ちょっと待ってろ」
縮こまって動かない夢主。斎藤は周知が必要だと廊下に出た皆を追いかけた。