111.別れ、そして新時代へ
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夢主と沖田が斎藤と別れて京を出てから、多くの仲間達との別れと死を乗り越えた。
そして土方の死をも乗り越えて、あれからどれ程の季節が経っただろうか。
二人はすっかり馴染んだ道場で、新しい時代を生きていた。
もうすぐ夢主の好きな桜の季節がやって来る。
「わぁっ……」
「どうしましたか、夢主ちゃん」
道場の敷地内で玄関前を掃いていた夢主が嬉しそうに驚きの声を上げた。
沖田がその理由を探しにやって来ると、見つけた物に顔を上げ、共に微笑んだ。
「綺麗ですね……サボンの玉ですか」
「さぼん……シャボン玉!」
「シャボン……へぇ、シャボン玉と言うのですね。どこか近くで誰かが飛ばしているのでしょう」
沖田は大して変わらないが少し異なる呼び方をする夢主をにこりと微笑んで、どこからか飛んで来るシャボン玉を眺めた。
ふたつ、みっつと飛んで来ては、静かな風に乗り流されていく。
弾けて消えるが、すぐに次のシャボン玉が飛んで来る。
「でも石鹸って高価なんじゃぁ……」
「石鹸?あれはムクロジって木から作った水で遊ぶんですよ、僕も子供の頃に遊んだものです」
「木から?出来るんですか?知りませんでした……私が知っているものと全く変わりません、綺麗です……」
春の柔らかな日差しを受けて七色に色を変えて輝くシャボン玉は、夢主の知る美しさと何も変わらなかった。
風の流れが変わると踊るように揺れて飛ぶシャボン玉、隣の玉とくっついて飛んでいくもの、ただただ一つ、高く空を上っていくもの。
様々な振る舞いを見せるシャボン玉に魅了され、箒を動かす手が止まっていた。
そんなシャボン玉に目と心を奪われている二人に近付く人影があった。
地面の砂利を踏みしめる音が聞こえ、夢主はようやく人の気配に気が付いた。
顔を下ろすと門の向こうに人影が見える。
影になって見えないその人影が、門をくぐり光を受けて、姿が露になった。
「ぁ……」
「……よぉ」
突然現れた人物とその声に驚き、夢主は持っていた箒を離していた。
ゆっくり倒れていく箒が地面に届いて音が鳴り、夢主はようやく口を開き、夢うつつに名を呼んだ。
「……はじめ……さん」
「夢主」
「一……さん」
紛れも無い、目の前に斎藤が立っていた。
共に生きると誓い、別れたあの日から待ち望んだこの時、突然の訪れに言葉を失った。
言葉は出てこなくても、名を呼んで見つめていると、これまで堪えていたものが一気に溢れ出す。
目の前に斎藤がいる嬉しさで、白い頬をぽろぽろと雫が伝い始めた。
こぼれる喜びで動けずにいると、斎藤が夢主を見つめたまま一歩二歩と近付いて来た。
フッ……
懐かしい斎藤の澄ました笑みで、夢主の金縛りは弾けるように解けた。
夢主は飛び込むように斎藤の元へ駆け出した。
「一さんっ!おかえり……なさい……」
「あぁ」
死線を乗り越え死地から戻った斎藤の体を夢主は強く抱きしめ、幻ではないと確かめた。
そんな夢主の体を斎藤は愛おしんで包み返した。
斎藤にも込み上げるものがある。
自らの胸に顔をうずめて離さない夢主を黙って受け入れて、小さな体を優しく擦った。
そして土方の死をも乗り越えて、あれからどれ程の季節が経っただろうか。
二人はすっかり馴染んだ道場で、新しい時代を生きていた。
もうすぐ夢主の好きな桜の季節がやって来る。
「わぁっ……」
「どうしましたか、夢主ちゃん」
道場の敷地内で玄関前を掃いていた夢主が嬉しそうに驚きの声を上げた。
沖田がその理由を探しにやって来ると、見つけた物に顔を上げ、共に微笑んだ。
「綺麗ですね……サボンの玉ですか」
「さぼん……シャボン玉!」
「シャボン……へぇ、シャボン玉と言うのですね。どこか近くで誰かが飛ばしているのでしょう」
沖田は大して変わらないが少し異なる呼び方をする夢主をにこりと微笑んで、どこからか飛んで来るシャボン玉を眺めた。
ふたつ、みっつと飛んで来ては、静かな風に乗り流されていく。
弾けて消えるが、すぐに次のシャボン玉が飛んで来る。
「でも石鹸って高価なんじゃぁ……」
「石鹸?あれはムクロジって木から作った水で遊ぶんですよ、僕も子供の頃に遊んだものです」
「木から?出来るんですか?知りませんでした……私が知っているものと全く変わりません、綺麗です……」
春の柔らかな日差しを受けて七色に色を変えて輝くシャボン玉は、夢主の知る美しさと何も変わらなかった。
風の流れが変わると踊るように揺れて飛ぶシャボン玉、隣の玉とくっついて飛んでいくもの、ただただ一つ、高く空を上っていくもの。
様々な振る舞いを見せるシャボン玉に魅了され、箒を動かす手が止まっていた。
そんなシャボン玉に目と心を奪われている二人に近付く人影があった。
地面の砂利を踏みしめる音が聞こえ、夢主はようやく人の気配に気が付いた。
顔を下ろすと門の向こうに人影が見える。
影になって見えないその人影が、門をくぐり光を受けて、姿が露になった。
「ぁ……」
「……よぉ」
突然現れた人物とその声に驚き、夢主は持っていた箒を離していた。
ゆっくり倒れていく箒が地面に届いて音が鳴り、夢主はようやく口を開き、夢うつつに名を呼んだ。
「……はじめ……さん」
「夢主」
「一……さん」
紛れも無い、目の前に斎藤が立っていた。
共に生きると誓い、別れたあの日から待ち望んだこの時、突然の訪れに言葉を失った。
言葉は出てこなくても、名を呼んで見つめていると、これまで堪えていたものが一気に溢れ出す。
目の前に斎藤がいる嬉しさで、白い頬をぽろぽろと雫が伝い始めた。
こぼれる喜びで動けずにいると、斎藤が夢主を見つめたまま一歩二歩と近付いて来た。
フッ……
懐かしい斎藤の澄ました笑みで、夢主の金縛りは弾けるように解けた。
夢主は飛び込むように斎藤の元へ駆け出した。
「一さんっ!おかえり……なさい……」
「あぁ」
死線を乗り越え死地から戻った斎藤の体を夢主は強く抱きしめ、幻ではないと確かめた。
そんな夢主の体を斎藤は愛おしんで包み返した。
斎藤にも込み上げるものがある。
自らの胸に顔をうずめて離さない夢主を黙って受け入れて、小さな体を優しく擦った。