109.さよなら
夢主名前設定
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「冗談だよ、冗談!!俺ぁそう簡単に死なねぇよ!」
「そうです……斎藤さんと同じです、土方さんだって死んだりしません、土方さんこそ何したって死なないお顔してますっ!!」
「ははっ、俺にそんな事が言えるのは総司とお前くらいだな」
目が合いクスクスと笑うが、夢主はすぐに俯いてしまった。
伝えなければいけない話がある。これ以上泣いてはいけないと言い聞かせ目尻を拭った。
「どうしても蝦夷に行かれるのですか」
「あぁ。蝦夷で俺達は新しい日本を作ってみせる」
「新しい……日本」
「そうだ。成功したら……お前達も来いよ」
どこか淋しげに誘う土方に、二人は小さく頷いた。
「俺は死なねぇ。大丈夫だ」
「でももし……もし怪我をして……動けなくなってしまっでも、大丈夫です!きっとお迎えがいらっしゃいますから……関門で待っててください……」
「関門?」
「はぃ……関所のそばで土方さん、お怪我を……でも大丈夫です!関所の門にいれば……お迎えが……」
「そうか」
潤み声で必死に自分の身に及ぶ危険を伝える夢主に苦笑いしながら、その頭をもう一度ぽんぽんと触れた。
「斎藤がいつまで経っても迎えに来なかったら、総司に幸せにしてもらうんだな、安心だろ。お前の傍には守ってくれる男がいるんだ。総司が嫌だってんなら、俺が蝦夷を平定して迎えに行くまで待ってろ」
「土方さん……」
「ははっ、斎藤こそ殺しても死なねぇ男だろうがな」
何か違う……以前と異なる土方を感じた夢主は、背伸びをして顔を近付け呟いた。
「や……約束……覚えていますよ」
その言葉に土方は目を開いてきょとんと夢主を見下ろした。
いつかの夕暮れ時、湯屋の帰り道、川沿いの道で仲間に囲まれた騒ぎの中で夢主が耳打ちした可愛い嘘。
土方はフッと笑んで呟き返した。
「約束……あれは冗談だろう、本気にしちゃいねぇよ、安心しろ」
「いえ……もし本当に戻って来てくださるなら……か、構いませんっ……その……」
ハハッ、こいつ……土方は懸命に嘘を付こうとする夢主の赤らんだ顔を愛おし気に眺めた。
「や、優しい土方さんを……教えてくださるんでしょう……ちゃんと……約束、守ってください」
「そうか、そいつは意地でも生き延びねぇとな……」
土方はそっと夢主の頭を一撫でした。
「そうだなぁ、その時は俺がお前を連れて新しい土地で暮らすか……蝦夷に作る新しい町、きっと見事だぞ!向こうには異人も多い、見たことも無い建物が沢山並んでいるそうだ」
「土方さん……」
土方の手がすっと伸び、夢主の体を抱き込んだ。
見ていた沖田から思わず「あっ」と短い声が漏れる。
「本当に優しく抱いてやりたかったんだ、夢主……」
「あっ……あの……ひじっ……」
耳まで染まった顔を隠そうと必死に俯いていると、耳元で体の芯に届く愉しげな小さな笑い声が聞こえた。
「ククッ……だが俺の役目じゃなくなっちまったな」
「土方さん?」
土方はそっと腕を緩め夢主に自分の顔をしっかりと見せ、涼やかな微笑で夢主の顔を更に赤くさせた。
「斎藤に優しくしてもらうんだな、あの野郎も女の扱いは上手いぞ、床上手って言うんだぜ」
「えっ……」
全てに於いて手練れであり、何事も器用にこなす斎藤をよく知っているが、不意にそんな事を告げられた夢主は熱で倒れるほどに上気した。
「へ、変なこと言わないでくださいっ!!もう、心配して会いに来たのにっ!!」
「ははははっ!その意気だ!お前は元気に笑っているほうがいい!もう泣くなよ、次に泣くのは斎藤が帰ってきた時でいい。分かったな!」
例え俺が死んで報せが届こうが、泣く必要は無い……
そう心の中で囁いて、土方は夢主を励ました。
「達者でな……」
「土方さん……土方さんこそ、ご武運を……ご無事をお祈りします。待っていますから……」
「あぁ、またな。総司、頼んだぞ!」
「はい!」
……さよならだ……夢主、総司……
「あっ……」
土方の心の声に反応するように吹いた突然の海風が、三人の髪を大きく乱した。
「そうです……斎藤さんと同じです、土方さんだって死んだりしません、土方さんこそ何したって死なないお顔してますっ!!」
「ははっ、俺にそんな事が言えるのは総司とお前くらいだな」
目が合いクスクスと笑うが、夢主はすぐに俯いてしまった。
伝えなければいけない話がある。これ以上泣いてはいけないと言い聞かせ目尻を拭った。
「どうしても蝦夷に行かれるのですか」
「あぁ。蝦夷で俺達は新しい日本を作ってみせる」
「新しい……日本」
「そうだ。成功したら……お前達も来いよ」
どこか淋しげに誘う土方に、二人は小さく頷いた。
「俺は死なねぇ。大丈夫だ」
「でももし……もし怪我をして……動けなくなってしまっでも、大丈夫です!きっとお迎えがいらっしゃいますから……関門で待っててください……」
「関門?」
「はぃ……関所のそばで土方さん、お怪我を……でも大丈夫です!関所の門にいれば……お迎えが……」
「そうか」
潤み声で必死に自分の身に及ぶ危険を伝える夢主に苦笑いしながら、その頭をもう一度ぽんぽんと触れた。
「斎藤がいつまで経っても迎えに来なかったら、総司に幸せにしてもらうんだな、安心だろ。お前の傍には守ってくれる男がいるんだ。総司が嫌だってんなら、俺が蝦夷を平定して迎えに行くまで待ってろ」
「土方さん……」
「ははっ、斎藤こそ殺しても死なねぇ男だろうがな」
何か違う……以前と異なる土方を感じた夢主は、背伸びをして顔を近付け呟いた。
「や……約束……覚えていますよ」
その言葉に土方は目を開いてきょとんと夢主を見下ろした。
いつかの夕暮れ時、湯屋の帰り道、川沿いの道で仲間に囲まれた騒ぎの中で夢主が耳打ちした可愛い嘘。
土方はフッと笑んで呟き返した。
「約束……あれは冗談だろう、本気にしちゃいねぇよ、安心しろ」
「いえ……もし本当に戻って来てくださるなら……か、構いませんっ……その……」
ハハッ、こいつ……土方は懸命に嘘を付こうとする夢主の赤らんだ顔を愛おし気に眺めた。
「や、優しい土方さんを……教えてくださるんでしょう……ちゃんと……約束、守ってください」
「そうか、そいつは意地でも生き延びねぇとな……」
土方はそっと夢主の頭を一撫でした。
「そうだなぁ、その時は俺がお前を連れて新しい土地で暮らすか……蝦夷に作る新しい町、きっと見事だぞ!向こうには異人も多い、見たことも無い建物が沢山並んでいるそうだ」
「土方さん……」
土方の手がすっと伸び、夢主の体を抱き込んだ。
見ていた沖田から思わず「あっ」と短い声が漏れる。
「本当に優しく抱いてやりたかったんだ、夢主……」
「あっ……あの……ひじっ……」
耳まで染まった顔を隠そうと必死に俯いていると、耳元で体の芯に届く愉しげな小さな笑い声が聞こえた。
「ククッ……だが俺の役目じゃなくなっちまったな」
「土方さん?」
土方はそっと腕を緩め夢主に自分の顔をしっかりと見せ、涼やかな微笑で夢主の顔を更に赤くさせた。
「斎藤に優しくしてもらうんだな、あの野郎も女の扱いは上手いぞ、床上手って言うんだぜ」
「えっ……」
全てに於いて手練れであり、何事も器用にこなす斎藤をよく知っているが、不意にそんな事を告げられた夢主は熱で倒れるほどに上気した。
「へ、変なこと言わないでくださいっ!!もう、心配して会いに来たのにっ!!」
「ははははっ!その意気だ!お前は元気に笑っているほうがいい!もう泣くなよ、次に泣くのは斎藤が帰ってきた時でいい。分かったな!」
例え俺が死んで報せが届こうが、泣く必要は無い……
そう心の中で囁いて、土方は夢主を励ました。
「達者でな……」
「土方さん……土方さんこそ、ご武運を……ご無事をお祈りします。待っていますから……」
「あぁ、またな。総司、頼んだぞ!」
「はい!」
……さよならだ……夢主、総司……
「あっ……」
土方の心の声に反応するように吹いた突然の海風が、三人の髪を大きく乱した。